済生会福岡総合の岡留院長、急性期一本で行くためには医療・介護連携体制の構築が不可欠―GHCプレミアムセミナー



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 今般の2016年度の診療報酬改定では「急性期病院がどういった方向に向かうべき」かが明確に示された。2018年度の同時改定ではこの点がもっと鮮明になるであろう。急性期一本で行こうと考える病院は、「24時間・365日救急搬送を断らない体制」や「医療・介護連携体制」を構築する必要があり、そのためには病院長の強いリーダーシップが欠かせない―。

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が7月30日に開催したプレミアムセミナーで、福岡県済生会福岡総合病院の岡留健一郎院長は、このように強調しました(関連記事はこちら)。

福岡県済生会福岡総合病院の院長で、日本病院会副会長も務める岡留健一郎氏。病院経営における「リーダーシップ」の重要性を強調している
福岡県済生会福岡総合病院の院長で、日本病院会副会長も務める岡留健一郎氏。病院経営における「リーダーシップ」の重要性を強調している

地域の後方病院から医師が参加し「共同回診」を実施

 2016年度の診療報酬改定では、一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の項目が見直されるとともに、7対1入院基本料の施設基準である重症患者割合が25%に引き上げられるなど、急性期病院を取り巻く環境は厳しさを増しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 また福岡総合病院が位置する福岡市は、九州大学病院と福岡大学病院という2つの大学病院があるほか、九州医療センターや福岡赤十字病院など数多くの基幹病院が存在する、まさに「激戦区」です。

 こうした状況の中では、7対1を維持するために「病棟の一部を機能転換する」ことなどが考えられますが(関連記事はこちらこちら)、岡留院長は「急性期一本」という厳しい道を選択しました。その理由について岡留院長は、次のように説明します。

▽第3次救急施設、地域医療支援病院、災害拠点病院の役割を担っており、これを継続する必要がある

▽地域(福岡・糸島医療圏)で救急車搬入入院患者数が最も多く、地域にニーズにこれからも応える必要がある

▽これまで急性期病院を追求し、成長させるための取り組みを行ってきた

▽地域で「最高の急性期病院」を目指していることに魅力を感じて入職した職員が多い

 このように「住民のニーズ」「職員の思い」に応えるために急性期一本の道を選択されたわけですが、「急性期一本」を貫くためには乗り越えなければならないハードルが幾つもあります。その1つとして、前述した厳しさを増す「7対1の施設基準」があげられます。

 重症患者割合25%をクリアするために、福岡総合病院では「紹介率の向上」「急性期を脱した患者の後方病院への転院」などを徹底していると言います。岡留院長はこの2点について「紹介率の向上とは前方連携であり、急性期後の患者の転院は後方連携である。急性期一本は『連携』によって成り立つ」と強調しました。

 このうち後方連携を強化するために福岡総合病院では(1)5施設からの回診参加(2)51施設からの近隣病院空床情報FAX(3)連携病院による地域連携フォーラム(4)医療と介護の連携のつどい―といった取り組みを行っています。このうち(1)は、神経内科、脳神経外科、救命救急センターの3つの回診に、地域の5施設が自主的に参加するもので、「転院」について福岡総合病院と地域の病院のスタッフが情報共有、検討することで、極めて円滑な転院が実現できていると言います。

 また前方連携について福岡総合病院では「逆紹介」を重視しています。Aクリニックから紹介を受け、福岡総合病院で治療を終えた後、Aクリニックに逆紹介することはもちろん、治療の過程で別の疾患が見つかれば、それを専門とする地域のBクリニックにも逆紹介を行い、地域のクリニックや中小病院から大きな信頼を勝ち取っています。

 さらに福岡総合病院では、「24時間・365日断らない救急」体制も敷いています。患者や救急隊の要望に応えられることはもちろん、重症患者の受け入れや自院の特色・カラーの明確化にもつながります。しかし岡留院長は「以前は救急患者受け入れに積極的でない医師もいた。客観的なデータを示し1人1人医師を説得していった」と振り返られます。

 こうした事例も踏まえて岡留院長は、「病院長のリーダーシップが極めて重要である。人事考課をしっかりと行い、特に科長などミドルクラスを中心に『あなたにはこういった点に課題がある。ここを直せばより良くなる』と話し合ってモチベーションを高めていくことが必要ではないか」と強調しました。

手術室は急性期病院の心臓部、効率的な運用が不可欠

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では福岡総合病院の経営支援を9年前から行っています。経営支援プロジェクトのリーダーであるGHCマネジャーの塚越篤子は「福岡総合病院では、重要な経営指標である平均在院日数や医療資源投入量などが、全国の多くの病院の比べてもトップクラスとなっている。しかし、経営支援を始めた当初は『やんちゃ』な部分もあった。抗生剤の使用銘柄や入院経路などについてデータを示し、医師に行動変容を促していった」と述懐します。

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)マネジャーの塚越篤子。病院の戦略を考える上では客観的なデータに基づく「ベンチマーク」が不可欠であると強調する。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)マネジャーの塚越篤子。病院の戦略を考える上では客観的なデータに基づく「ベンチマーク」が不可欠であると強調する。

 また福岡総合病院で特筆できるのは、「手術室」管理が極めて効率的かつ合理的に行われている点です。塚越は「手術室は急性期病院の心臓部である。▽申告時間と実際の占有時間との乖離▽入室から麻酔開始までの時間▽麻酔開始から執刀開始までの時間▽執刀開始から終刃までの時間▽終刃から麻酔終了までの時間▽麻酔終了から退室までの時間▽手術件数―などのデータを分析し、非効率な部分の効率化を図っていくことが重要」と訴えます。

 さらに、2016年度改定で大幅に見直された看護必要度については「救急や手術症例の多い病院にとっては『追い風』である」と指摘した上で、「7対1病院などではHファイルとして看護必要度の生データ提出が義務付けられた。GHCの調査・分析では、生データの精度が必ずしも高くない(医事データにはあるが看護必要度のチェックがなされていないケース、逆に医事データにないにもかかわらず看護必要度のチェックがなされていないケース)」ことを指摘します。データに不備があれば、中央社会保険医療協議会などで支払側から強い批判が出ることも考えられるため、データの精度向上に向けた早急な取り組みが必要です(関連記事はこちらこちら)。

 塚越は、GHCの▽現状の可視化と看護必要度セミナーの実施▽モデル病棟の決定▽運用フローの検討▽多職種を巻き込んだ仕組みづくり―といった支援によって、短期間でデータ精度が向上する(つまり調査・分析などに耐えられる)ことも紹介しています(関連記事はこちら)。

「地域から何を求められているか」を最重視した病院戦略が必要

 プレミアムセミナーでは、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長の渡辺幸子から、2018年度を見据えて、どのように病院の戦略を立てていくべきかが紹介されました(関連記事はこちらこちら)。

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子。病院の戦略を立てる上では「地域から何を求められるのか」を最重視しなければいけないと強調する。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子。病院の戦略を立てる上では「地域から何を求められるのか」を最重視しなければいけないと強調する。

 渡辺は、今後の病院戦略を考えるにあたり「自院がやりたい医療」ではなく、▽自院の立ち位置▽将来の医療ニーズ▽他施設の動向―を見て、「地域から何を求められていうるか」を最重視しなければならないと訴えます。

 また、その結果、「急性期の維持」を選択した際には、「急性期病院の中には、まだまだ介護との連携を軽視しているところもある。介護側は、医療に敷居の高さを感じている。しかし、介護との連携を進めなければ急性期の維持はできない」と断言しています。自院の「総合評価加算算定率」や「ケアマネジャー(介護支援専門員)との連携状況」などを今一度確認する必要がありそうです。

 さらに、どのような戦略をとったとしても「生産性の向上」と「病院の連携・統合」が避けられない時代に来ているとも渡辺は強調します。

 前者では、「業務プロセスの改善」や「タスクシフト」「需要にマッチした人材配置」などを検討すべきとし、例えば看護記録の作成などにおいて「自己満足になっていないか、本当に患者のためになっているのか、を検討して業務を見直す必要がある」としました。また、人材配置については、「繁忙期に合わせれば必ず余剰人員が出てしまう。業務を正確に分析して、人材を流動的に配置することを検討すべき」と提案しています。

 後者は、連携を進める先にあるもので、各病院が独立したまま総務や医事業務などを共同で行う「緩やかな統合」から「完全な統合」までさまざまな形態があることを示し、実際に統合が行われた事例とその効果などを紹介しました。

 

 グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、9月17日にもプレミアムセミナー第2弾を開催します。相澤病院理事長で院長兼最高経営責任者でもある相澤孝夫氏にご登壇いただき、「機能分化」についてお話していただきます。是非、院長・事務長のお二人でご参加ください。

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。

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