がん拠点病院の指定要件、2018年1月目途に「医療安全」項目の追加など根本的見直し―がん診療提供体制検討会



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 がん診療連携拠点病院の指定要件について、第3期がん対策推進基本計画の策定後となる2018年1月を目途に根本的に見直すこととし、特定機能病院の新承認要件のような「医療安全に関する項目」を盛り込む―。

 このような方針が7日に開かれた、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」で固まりました(関連記事はこちら)。

 また、現行のがん診療連携拠点病院の指定指針のうち、診療実績などについて、運用上の見直しを行う方向も概ね固まりました。

7月7日に開催された、「第7回 がん診療提供体制のあり方に関する検討会」
7月7日に開催された、「第7回 がん診療提供体制のあり方に関する検討会」

特定機能病院に盛り込まれたような「医療安全」確保を求める

 特定機能病院については、高度な医療を提供する医療機関にふさわしいガバナンス体制を確保するため、今般、▽医療安全管理責任者の配置▽医療安全管理部門(専従の医師、薬剤師、看護師を配置)の設置▽高難度新規医療技術・未承認医薬品を用いた医療提供の適否などを決定する部門の設置▽監査委員会(3名以上で、委員長と委員の過半数は「病院と利害関係のない者」から選任)の設置▽ピアレビューの実施―などを内容とする承認要件の見直しが行われました(関連記事はこちらこちら)。

特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった
特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった

 また、一般の病院においても「高難度新規医療技術・未承認医薬品を用いた医療提供の適否などを決定する部門の設置」に関する努力義務が規定されています(関連記事はこちら)。

 厚労省は、がん診療連携拠点病院においても「医療安全に関する」項目を指定要件に加える必要があるのではないかと考え、7日の検討会に提案したものです。

 ただし、すぐさま新規指定要件の検討に入るわけではありません。来年(2017年)6月に閣議決定される「新たながん対策推進基本計画」(第3期)の内容を踏まえ(関連記事はこちらこちら)、幅広い視点で「指定要件の根本的な見直し」を検討していく考えも同時に示しています。

 こうした「指定要件の根本的な見直し」方針には検討会の構成員からも支持が得られました。北島政樹座長(国際医療福祉大学副理事長・名誉学長)は「医療安全の確保は、特定機能病院もがん診療連携拠点病院も同じである」と強調しています。

 もっとも具体的な要件をどう考えるかについては固まっていません。鶴田憲一構成員(静岡県理事・医療衛生担当)や神野正博構成員(全日本病院協会副会長)は、がん診療連携拠点病院には比較的規模の小さなところもありマンパワーに限界がある点を指摘し、「医療安全管理部門(専従の医師、薬剤師、看護師を配置)の設置」要件などは柔軟に検討する必要があるとの考えを述べています。

 また中釜斉構成員(国立がん研究センター理事長)は、「結果として『質の高い医療』が提供されることが重要である」と指摘。形だけの医療安全確保要件を厳しくすることで、かえって病院職員の負担が増え、モチベーションが下がることを危惧しています。

 一方、北島座長は「ピアレビュー(相互に職員が立ち入り、必要に応じて医療安全管理の改善に向けた技術的助言を行う)の重要性」を指摘し、「できることから始めてみてはどうか」との提案も行っています。

 上記のとおり、具体的な指定要件見直し論議は、第3期計画決定(つまり2017年6月)後となる見込みです。厚労省健康局がん・疾病対策課の丹藤昌治がん対策推進官は、「指定要件は、新たな基本計画の内容を踏まえる必要がある。2019年4月に多くの拠点病院の指定更新が行われるので、それに間に合わせるために2018年1月を目途に新指定要件を設定したい」との見解を明らかにしており、2017年6月から2018年1月にかけて集中的に検討が行われる見込みです。

指定指針の運用、現状のダブルスタンダードをどう考えるか

 こうした「指定要件の根本的な見直し」に向けて、山口建構成員(静岡県立静岡がんセンター総長)は、▽緩和ケアの実施件数▽相談支援センターの活動件数▽病病連携・病診連携の実施―などを新要件に盛り込むとともに、「運用のダブルスタンダードをどう考えるべきか」との問題提起を行いました。

 2014年1月に見直された「がん資料連携拠点病院等の整備に関する指針」(指定指針)には、新たに「診療実績」(年間の院内がん登録500件以上・悪性腫瘍手術400件以上・がん化学療法延べ1000人以上・放射線治療延べ200人以上)、「カバー率」(当該2次医療圏のがん患者の2割程度をカバー)という要件が盛り込まれました(関連記事はこちらこちら)。

「がん診療連携拠点病院」には、新たに診療実績(手術や化学療法などの件数)に関する要件が盛り込まれている
「がん診療連携拠点病院」には、新たに診療実績(手術や化学療法などの件数)に関する要件が盛り込まれている

 指定要件ですから、この「診療実績」あるいは「カバー率」を満たさなければ、新規指定や指定更新は行われないのが原則です。しかし、「カバー率は満たすが、診療実績は大幅に満たさない」病院について、実際は次のように新規指定と指定更新などで異なる運用がされているといいます。

▽空白医療圏で、新規指定を行う場合:まず「地域がん診療病院」(拠点病院よりも緩やかな要件)になってもらう

▽単一の病院のみ指定されている医療圏で、更新を行う場合:更新を認める(拒否すれば拠点病院の空白地帯が大幅に増加するため、救済している)

▽複数の病院が指定されている医療圏で、更新を行う場合:更新を認める(他に拠点病院があれば「地域がん診療病院」として指定できないため)

 山口構成員は、こうしたダブルスタンダートの運用を継続してよいものか、今後検討してほしいと要望しています。

「がん診療連携拠点病院」と「がん診療病院」との人的要件、後者ではやや緩和されている
「がん診療連携拠点病院」と「がん診療病院」との人的要件、後者ではやや緩和されている

診療実績とカバー率、「概ね=9割」との運用ルールを指定指針の中で明示すべきか

 今見たように、拠点病院の指定を受けるためには、「診療実績」あるいは「カバー率」のいずれかを満たすことが必要ですが、厚労省の「がん資料連携拠点病院等の整備に関する指針」(指定指針)では「診療実績またはカバー率を『概ね』満たすこと」と曖昧な規定をしています。地域医療の状況はさまざまであるため、数字のみで機械的に指定の可否を判断することは好ましくないという考えに基づくものです。

 しかし、この曖昧な規定が却って拠点病院の推薦を行う都道府県に混乱をもたらしていることから、「概ねは9割以上とする」との運用が行われています。

 7日の検討会では、この「概ねは9割以上とする」との運用を指定指針の中で明確にしてはどうかと厚労省が提案しました。この提案に明確な反対意見は出ませんでしたが、今村聡構成員(日本医師会副会長)から「地域の特性に配慮した弾力的な運用が難しくなるのではないか」、中釜構成員から「9割を明確化した場合、地域がん診療病院などとの住み分けが不明確になるのではないか」といった指摘も出されています。厚労省は、構成員や座長と調整を行った上で、指針に「概ねは9割以上とする」旨を記載するかどうかを判断したい考えです。

 一方、厚労省は指定指針について次の2点の見直しを行うことも提案しており、こちらは了承されました。

(1)既に拠点病院(A病院)が存在する2次医療圏で、別の病院(B病院)が新規に推薦された場合、▽B病院が診療実績を含めた指定要件をすべて満たしている▽B病院の診療実績がA病院よりも優れている場合、なぜ先にB病院を推薦しなかったのかを明確に説明する▽複数の拠点病院を指定することによる相乗効果を明らかにする―ことなどを指定の要件とする

(2)拠点病院が、「本院」(入院機能)と「付属外来センター」(外来機能)に分化した場合などには、「文書で迅速に厚生労働大臣に届け出る」こととし、分化後に指定を継続するか否かは、個別ケースごとに「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」で判断することとする

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