専門医のあり方、永井医療部会長は「学会などの動きをしばらく見守る」姿勢―社保審・医療部会



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 専門医制度のあり方について、日本医師会と四病院団体協議会から要望が出されているが、プロフェッショナルオートノミーを尊重し、社会保障審議会の医療部会として現時点で特段の意見表明は行わない―。

 9日に開かれた社会保障審議会・医療部会では、一部委員から「これまでどおりの方法で専門医を養成すべき」との意見を部会として表明すべきとの意見が出されましたが、永井良三部会長(自治医科大学学長)は、上記のような判断をしています。

6月9日に開催された、「第46回 社会保障審議会 医療部会」
6月9日に開催された、「第46回 社会保障審議会 医療部会」

日医・四病協から「幅広い関係者を交えた『検討の場』を設置」することなど要望

 公正・中立な第三者機関(日本専門医機構)で、専門医の認定と養成プログラムの認証を統一的に行うことで、より質の高い医療提供を実現することを目指し、来年(2017年)4月から新専門医制度がスタートする予定です。

 しかし、医療現場からは「養成プログラム案では、専門医養成施設が大病院に限定されるなど、地域の医師偏在を助長する恐れがある」との指摘が相次ぎ、来年度の専門医養成をどのような形で進めるのか混沌とした状況が続いています。

 そうした中、日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は7日に、新たな専門医の仕組みについて「地域医療の現場に大きな混乱をもたらす」との懸念を改めて表明師、次のような要望を日本専門医機構と学会(専門医養成プログラムを作成)に宛てて行いました。

▽一度立ち止まり、専門医を目指す医師の意見を聞くとともに、「地域医療」「公衆衛生」「地方自治」「患者・国民」の代表による幅広い視点も大幅に加えた『検討の場』を設けて、その検討結果を尊重すること(その際も、プロフェッショナルオートノミーを尊重すべき)

▽『検討の場』において医師偏在が深刻化しないか集中的に精査し、懸念が残るプログラムについては2017年度からの開始を延期し、現行の学会専門医の仕組みを維持すること

▽プログラムや病院群について、都道府県・医師会・大学・病院団体などの関係者が協議・連携し、都道府県の協議会で了解を得ること

▽日本専門医機構のガバナンスシステム、組織のあり方を抜本的に見直すこと

▽医師の「多様な働き方」に十分配慮し、専門医の取得・更新に当たり過度な負担をかけないこと

▽総合診療専門医、サブスペシャリティの議論はそれぞれ時間をかけて行うこと

 

 またこの要望に対して、塩崎恭久厚生労働大臣は▽要望の趣旨は理解できる▽日本専門医機構や学会が、要望などを受け止め、一層の取り組みを行うことを期待する―旨の談話を同日に発表しています。

医療部会の過度の干渉は、プロフェッショナルオートノミーに反する

 9日の医療部会では、中川俊男委員(日本医師会副会長)から要望内容が報告され、これも踏まえて専門医のあり方に関する議論が行われました。

 釜萢敏委員(日本医師会常任理事)は、各学会が『うちは旧制度』『うちは新制度』という具合に、独自に専門医認定を行えば大きな混乱が生じると指摘し、「医療部会として『従来の手法で専門医養成を行うべき』と宣言してはどうか」と提案。

 加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)や西澤寛俊委員(全日本病院協会会長)も「「立ち止まって考えることが重要である」旨を強調し、釜萢委員案と同じく「延期」を要望しました。

 しかし、尾形裕也委員(東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)は、「要望の宛先である日本専門医機構らが返答をする前に医療部会が意見を表明するというのは順序が違う」と指摘。

 永井部会長も「要望の中でもプロフェッショナルオートノミーの尊重が謳われており、保険者など幅広い委員が参画する医療部会が関与しすぎるのは問題ではないか」との懸念を表明。さらに、「要望の中にある『検討の場』の議論や、各学会の意向を伺う必要があり、それまで医療部会は『見守る』ことに止めたい」との結論を導きました。

 なお、『検討の場』について中川委員は、「日本専門医機構のガバナンスと人事体制を刷新し、その上で機構の中に設置してもらう」旨の考えも述べています。

 

 ところで医療部会の下には、「専門医養成の在り方に関する専門委員会」が設置されており、5月30日には「各学会の意向を確認した上で、医師偏在が進まないように、過去の採用実績に基づいて診療領域別・都道府県別・プログラム別に専攻医(専門医を目指す医師)の定員枠を設定してはどうか」との提案が厚労省からなされています(関連記事はこちら)。しかし、9日の医療部会で永井部会長が「検討の場の議論などを見守る」ことを明確にしたことから、専門委員会の議論も「一度、立ち止まる」ことになる可能性があります。

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