地域で求められる医療を提供する医療機関を応援―厚労省医療課の林補佐がGHCの2016年度改定セミナーで講演



Pocket

 2016年度の診療報酬改定に備えるため、GHCが19日、都内で改定セミナーを開催しました。厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長補佐をお迎えし、改定内容の詳細や留意点について細かく説明いただくとともに、GHC社長の渡辺幸子とマネジャーの湯浅大介から、今後、病床再編時代を生き抜く為に戦略的な病床戦略をどう策定し、どう実行すべきかをお話しています。

 ここでは林課長補佐の講演内容について紹介しましょう。

厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長補佐
厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長補佐

重症患者が多く入院するので密度の高い看護が必要、そのために高い点数を設定

 厚労省保険局医療課の林課長補佐は、宮嵜雅則医療課長の総指揮の下、今回改定の実質的なかじ取りをされました。

 まず、林補佐は最近の改定の内容について、「2010年度改定までは『医療崩壊の建て直し』が主眼とされたが、2012年度改定以降は『更なる高齢社会をどう乗り切るか』がテーマになっており、2018年度の時期診療報酬・介護報酬の同時改定でもこのテーマが引き継がれるのではないか」と見通します。

 この最大のテーマに沿って、2016年度改定では、「地域包括ケアシステムの構築」「病院病床の機能分化・強化、連携」「かかりつけ機能の推進」などを目指して設計されていますが、その際に最も重視したのが、「地域で求められる医療を、例え手間がかかっても患者のために提供している医療機関を応援していく」という点です。この点は、17日の全国自治体病院協議会定例記者会見で邉見公雄会長も指摘しており、いわば「頑張っている医療機関を評価する」改定であったと言えます。

 個別改定項目の中で注目されるのは、やはり「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の見直しでしょう。林補佐は「これまで数多くの特定入院料を設定し、メニューは相当程度整ってきていると考えている。今後は、各病棟に求められている機能・患者像に合った患者が入院しているかどうかを評価し、そこから機能分化を進める方向に向かう」との考えを述べています。林補佐は、「箱(病棟や病床)を設け、そこに施設基準の沿った人員を配置すれば収益が上がる」というものではなく、「地域でその病棟・病室に求められる機能のニーズがあるのか、またその機能に合った患者を適切に入棟・入室させているかが報酬算定の条件になる」と説明しています。

 これはすべての入院基本料・特定入院料に共通する考え方で、例えば7対1では看護必要度の該当患者(重症患者)割合が15%以上から25%以上に引き上げられましたが、林補佐は、「重症患者、手間のかかる患者が入院しているかどうかが先にあって、そうした患者が入院しているから密度の高い看護が必要となり、そのために高い点数を設定するという順序である。入院料に優劣はない。7対1が良いのではなく、重症患者が多いのであれば7対1を届け出る必要があり、そうでない(重症患者がそれほど多くない)なら別の入院基本料を届け出るべきである。2016年度改定では『患者の状態に合った適切な入院料』を意識しており、病院で提供する医療の内容に見合った機能分化をしているかどうかが重要である」と強く訴えています(関連記事はこちら)。

A、B、C各項目を組み合わせて、病棟の機能を評価する指標に

 また看護必要度については、今回、新たにC項目が設けられました。林補佐は「もともと看護職員の手間がどれだけかかるのかを評価するために看護必要度を設計したが、病棟の機能分化の指標に用いるには、看護職員の手間だけでは表現しきれない部分が出てきた」と今回の項目見直しの背景を説明。

 2016年度改定で、▽看護職員の専門性を評価するA項目▽患者のADLを評価するB項目▽医学的な重症度を評価するC項目―を揃えており、これら(A、B、C項目)を組み合わせて「どの病棟にはどういった状態の患者が入るべきか」という指標を設けることが可能になったといいます。例えば総合入院体制加算では、患者のADLの高低ではなく、高度な医学管理がどれだけ必要かという視点が重要となるため、「A項目とC項目」を組み合わせた指標としている、といった具合です。

一般病棟とその加算、地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟では、重症患者の対象範囲が異なる
一般病棟とその加算、地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟では、重症患者の対象範囲が異なる

 ところで地域包括ケア病棟について、2016年度改定では「500床以上の大病院やICUなどを保有する病院では1病院のみ設置可能とする」との制限が導入されました。この点について林補佐は、「地域での機能分化の在り方について、中医協では『大規模病院でも地域包括ケア病棟を設置して院内の機能分化を進める』方向とすべきか、『病院ごとに機能分化する』方向とするべきで、大きな議論になった。その結果、今回は『院内で機能分化を進めていくよりも、特に高度急性期については病院単位で機能分化してくべき』という結論に到達した」という背景を説明しています。

夜間の看護体制、看護補助者への業務分担を促進する報酬設定に

 また2016年度改定では、看護職員の負担軽減も大きなテーマとなっています。林補佐は「月平均夜勤時間の計算方法を見直す(短時間の夜勤の見の看護職員も一定程度計算に含める)とともに、看護職員の負担が過重にならないように『夜間配置』の評価をセットで設けた」ことを紹介。後者については、▽加算の引き上げ▽夜間の看護体制充実の評価―という2つの軸が組まれています。さらに、「看護職員夜間12対1配置加算は看護職員を夜間に4名配置することで80点を算定できるが、看護職員3名と看護補助者1名の配置にすると、看護職員夜間16対1配置加算の40点+夜間50対1急性期看護補助体制加算の35点+夜間看護体制加算の10点の合計で最大85点となる」ことを説明し、「看護補助者にも業務分担することでより高い報酬となる」仕組みであることも強調しています(関連記事はこちら)。

2016年度改定では、夜間の看護配置を評価する項目がいくつも導入されたが、「夜間の看護職員の負担軽減」に関する項目をいかに満たすかがポイントになる
2016年度改定では、夜間の看護配置を評価する項目がいくつも導入されたが、「夜間の看護職員の負担軽減」に関する項目をいかに満たすかがポイントになる

退院支援加算1、病棟の退院支援担当看護師による積極的な支援を期待

 さらに、2016年度改定の重要ポイントである「退院支援」の評価見直しについては、「地域の中で連携していく」ことがきわめて重要である点を強調。特に新設された退院支援加算1では、次の3本の柱を立てたことを説明しました(関連記事はこちら)。

(1)地域連携室で待つのではなく、病棟の中で専従の担当者が積極的に退院困難な患者を見つけて支援していく(名簿に職員名を記載するだけでなく、病棟に名前や業務を掲示して、患者からも見えるように)

(2)これまでよりも早く退院支援に取り組む(算定要件では入院から3日以内に退院困難患者を抽出)

(3)顔の見える連携体制を構築する(患者の退院が見えてから退院先を探すのではなく、予め、近隣のどの医療機関や介護事業所・施設でどんな医療・介護が提供できるのかを把握し、常に電話で相談できるような体制を予め敷いておく)

 このうち(2)については、算定要件で「3日以内」とされていますが、林補佐は「土日が入ることを考えて3日以内としたが、基本的には入院初日に行ってほしい」と要望しています。

回復期リハ病棟、この4月からFIM点数記録と除外患者の判断を

 回復期リハビリテーション病棟に導入されたアウトカム評価については、「量から質への転換」であることを強調しています。具体的な評価方法は非常に複雑ですが、林補佐は「短い入院で効果の高いリハビリを提供するところをより高く評価する仕組みとしている」ことを指摘。さらに、この4月(2016年4月)から、次の2点について回復期リハビリ病棟で取り組むべきことを紹介しました(関連記事はこちら)。

▽入棟時のFIM点数の記録

▽アウトカム評価から除外する患者の判断

 前者は、リハビリの効果測定が「退棟時と入棟時のFIM点数の差」であることから必要となり、後者は「入棟月分の請求にあたり、レセプトに除外する旨を記載する」必要があるためです。これらを怠ると、病院側に不利が生じる可能性もあるのでご留意ください。

回復期リハ病棟におけるアウトカム評価の考え方(1)(評価対象となる医療機関の考え方)
回復期リハ病棟におけるアウトカム評価の考え方(1)(評価対象となる医療機関の考え方)
回復期リハ病棟におけるアウトカム評価の考え方(2)(実績の判断方法、評価対象から除外される患者)
回復期リハ病棟におけるアウトカム評価の考え方(2)(実績の判断方法、評価対象から除外される患者)
回復期リハ病棟におけるアウトカム評価の考え方(3)(導入スケジュールのイメージ)
回復期リハ病棟におけるアウトカム評価の考え方(3)(導入スケジュールのイメージ)

すべての病棟で、認知症ケア加算1を算定してほしい

 また認知症ケア加算については、「今後、高齢化が進み、認知症の患者が急性期病棟に数多く入院する中では『苦手』では済まされない。かなり高めの点数(1日につき150点)を設定しており、今回改定をきっかけに必要な研修などを受講して認知症ケアチームを設置し、早期にすべての病棟で認知症ケア加算1を算定するようになってほしい」との希望を述べています(関連記事はこちら)。

 またDPCの機能評価係数IIの新係数・指数である「重症度指数・係数」については、「無駄な診療をすればよい」という目的ではないことを改めて説明しています(関連記事はこちら)。

【関連記事】
新専門医制度は延期を!2015年度診療報酬改定の方向は正しい―全自病・邉見会長
2016年度DPC改革、特定内科診療やCCPマトリックスなど新たな仕組みを導入―厚労省
回復期リハのアウトカム評価、最初のリハ料算定制限は2017年4月から―2016年度診療報酬改定で厚労省
看護必要度や病棟群単位届け出、退院支援加算などの詳細が明らかに―2016年度診療報酬改定で厚労省
看護必要度C項目の内科的治療、血管内治療・心筋焼灼術、侵襲的消化器治療など13項目―厚労省
【16年度改定答申・速報1】7対1の重症患者割合は25%で決着、病棟群単位は18年3月まで―中医協総会
【16年度改定答申・速報2】専従の退院支援職員配置など評価する「退院支援加算1」、一般600点、療養1200点―中医協総会
2016年度診療報酬改定、実は「小児医療の見直し」が大きなポイント―中医協総会
2016年度診療報酬改定、要介護高齢者などの目標設定支援などしなければ、疾患別リハ料を減算―中医協総会

Pocket