第3期がん対策推進基本計画の策定に向け、集中的に議論を重ね早ければ年内に骨子案策定―がん対策推進協議会



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 第3期の「がん対策推進基本計画」策定に向けて、がん対策推進協議会と下部組織で集中的に議論を進めて、早ければ年内(2016年内)に骨子案をまとめる。さらにこれをベースに今年度内(2016年度内)に新基本計画の諮問・答申を行い、来年(2017年)6月に新基本計画を閣議決定する―。

 10日に開かれたがん対策推進協議会では、こうしたスケジュールを固めました。

3月10日に開催された、「第56回 がん対策推進協議会」
3月10日に開催された、「第56回 がん対策推進協議会」

3検討会が8月に提言、協議会で総括的に議論し年内に骨子案策定の予定

 わが国のがん対策は、5年を1期とするがん対策推進基本計画に沿って進められています。現在、第2期の基本計画(2012-16年度)が動いており、17年度からの第3期計画策定を進める必要があります。

 第3期基本計画は、「白地に絵を描く」わけではなく、第2期計画の継続をベースに、さらに力を入れる部分や新たな対策が必要な部分を追加していく形になると思われます。

 このため厚生労働省は、協議会の下にある次の3つの検討会も活用して、詳細な議論を集中的に行う考えです。

(1)がん検診のあり方に関する検討会

(2)がん診療提供体制のあり方に関する検討会

(3)緩和ケア推進検討会

 検討会では、それぞれ「がん検診」「がんの医療提供体制」「緩和ケア」について、2017年度以降の推進方策などを議論しますが、あわせて「がん対策加速化プラン」(2015年12月策定)で提示された宿題事項も議論していきます。

 加速化プランは、「がんによる死亡率の減少目標が達成できない」状況を受け、安倍晋三首相が塩崎恭久厚生労働大臣に作成を指示したものです。例えば検診については「職域のがん検診の推進と充実」、医療提供体制については「小児・AYA世代(思春期Adolescentと若年成人Young Adult)、希少がんの対策」、緩和ケアについては「緩和ケアチームの資質向上や人材育成」などといった宿題事項が出されています(関連記事はこちら)(厚労省のサイトはこちら)。

がん対策加速化プランの概要
がん対策加速化プランの概要

 一方、親組織である協議会では、これら以外の事項を順次議論していくとともに、適宜、3つの検討会に「こうした点についても議論してほしい」との指摘を行っていきます。

 3つの検討会では、この春から夏にかけて集中的に議論を重ね、8月を目途に協議会に提言を行います。協議会はこの提言も踏まえて、早ければ年内(2016年内)にも第3期基本計画の骨子案を固めます。その後、年度内(2016年度内)に第3期基本計画について厚生労働大臣に答申を行い、来年(2017年)6月に第3期基本計画が閣議決定される見込みです。

 なお、がん対策は医療計画に定める「5疾病5事業」の1つでもあり、検討会の提言や協議会の議論内容は、第7期医療計画の基本指針策定論議(厚労省医政局が所管する「医療計画の見直し等に関する検討会」(新検討会、仮称))にも適宜報告されます。

門田会長は、15年6月の「今後のがん対策の方向性」を重視する考え

 ところで、協議会では第2期基本計画の中間評価を行う際、あわせて「今後のがん対策の方向性」についても意見をまとめました。これまでに基本計画の中に盛り込まれていない、あるいは協議会で必ずしも十分に議論できていない重要事項を整理したもので、次の3本の柱で構成されています。

(1)将来にわたって持続可能ながん対策の実現

(2)すべてのがん患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会の構築

(3)ライフステージに応じたがん対策

 10日の協議会で門田守人会長(がん研究会理事・名誉院長)は、「協議会が昨年6月にまとめた『今後のがん対策の方向性について』は、当時の協議会からの『第3期基本計画で検討してほしい』とのメッセージである」と述べ、今後の議論で重視すべきとの考えを強調しています(関連記事はこちら)。

 特に(1)の持続可能ながん対策は、医療経済的な視点から「がんの予防、早期発見、治療などを推進するにあたって、有効性・安全性の観点はもとより、費用対効果の観点から政策の検証を実施していく必要もある」との考えを打ち出している点が注目されます。

堀田会長代理は「高齢者のがん対策のあり方」を議論する必要性を強調

 第3期基本計画の策定に向けては、堀田知光会長代理(国立がん研究センター理事長)から「高齢者のがん対策について検討すべき」との強い要望も出されています。現在、年齢に関係なく手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線療法が行われていますが、高齢者に対して身体的・経済的負担の重い治療を漫然と継続していくことに警鐘を鳴らすものと言えるでしょう。

 堀田委員は、「現在の標準的治療を高齢者にも適用・拡大すべきか」「高齢者に対するがん対策の目標をどのように設定するのか」といった具体的な論点も掲げました。例えば、高齢者に対しては根治を目指さず、副反応を伴う抗がん剤治療は控えめにし、いわば「がんと仲良く付き合っていく」ことで、よりQOLが高まるという考え方も成り立ちます。今後の議論が注目されます。

 また、これに関連し山口健委員(静岡がんセンター総長)は、「高齢者の定義を明確にすべき」との見解を述べています。ちなみに、第2期基本計画では「75歳未満のがんの年齢調整死亡率を20%減少させる」との目標を立て、また「がん検診受診率の向上」では40-69歳を対象としており、治療と検診で「高齢者」の定義が変わる(例えば治療では75歳以上を高齢者、検診では70歳以上を高齢者とするなど)可能性もありそうです。

 なお、厚労省健康局がん・疾病対策課の佐々木健課長は、「75歳以上の高齢者に対するがん治療方針について、厚生労働科学研究などでも対応していく」考えを説明しています。

胃がん検診などの指針見直し、委員からは実施体制の整備求める声も

 10日の協議会では、厚労省から「がん登録」「がん検診指針の見直し」「がん対策加速化プラン」「がん患者などの治療と仕事の両立を支援するためのガイドライン」「2016年度のがん対策予算」なども報告されました。

 このうち「がん検診指針」については、▽胃がん検診では、問診に加えてX線検査・内視鏡検査のいずれかで検査を行う▽乳がん検診では、問診およびマンモグラフィで検査を行う(視診、触診は推奨しない)―といった見直しが行われました(今年4月から適用)。これについて中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は、「例えば胃がん検診では内視鏡検査を求める人が多くなり、結果としてさばききれず、胃がん患者が増えてしまう可能性もある。検診の実施体制をしっかり整えてほしい」と要望しています(関連記事はこちら)。

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