地域医療構想策定後はもちろん、策定前から地域医療の課題抽出をすべき―地域医療構想策定GL検討会



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 地域医療構想の策定後に、それを実現する上での課題を抽出することはもちろん必要であるが、診療データを活用し、構想策定前・策定中にも地域の課題を抽出することがきわめて重要である―。4日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」で、厚生労働省医政局の神田裕二局長はこのように強調しました。

2月4日に開催された、「第13回 地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」
2月4日に開催された、「第13回 地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」

NDBやDPCなどのデータを活用し、地域の現状把握を

 2025年における地域の医療ニーズと必要病床数を明らかにする地域医療構想の策定が進められています。2015年度中に全体の3分の1程度の都道府県で策定が完了し、それ以外でも16年度中には策定される見込みです。

 構想を策定し終えた後に、地域では「地域医療構想調整会議」を設置し、構想実現に向けた検討を開始することになります。調整会議での議論は、次のように進めることが考えられます。

(1)「地域の医療提供体制の現状」と「将来目指すべき姿」について認識を共有する

(2)地域医療構想を実現する上での課題を抽出する

(3)具体的な「病床の機能分化」「連携の在り方」を議論する

(4)地域医療介護総合確保基金を活用した具体的な事業を議論する

 この進め方は地域医療構想策定ガイドラインに既に示されていますが、都道府県から「より具体的な内容を示してほしい」との要請があることを受け、厚労省が4日の検討会に(1)-(4)に関する、より詳細な考え方を示しました。

 まず(1)では、▽将来の推計人口▽医療圏の現在の病床数・診療所数・位置▽医療従事者数の配置状況▽地域で不足する医療機能の把握▽病院間の診療実績の比較▽疾患ごとの医療機関へのアクセス時間▽在宅医療・介護サービスの設置状況―などを把握することで、「現状の把握」が可能となります。

 NDB(ナショナルデータベース)やDPCのデータなどを用いることで、現状を比較的容易に把握することができます。

 なお、この点に関連して中川俊男構成員(日本医師会副会長)や櫻木章二構成員(日本精神科病院協会理事】ら医療関係者は、「昨年6月に地域医療構想策定ガイドラインに基づいた必要病床数が公表されたが、都道府県では『病床削減目標』と考えている。その考えは誤っていることを厚労省が都道府県にしっかりと伝えてほしい」と強く指摘しています。

「地域の課題抽出」が地域医療構想の実現に向けた出発点

 こうした現状把握の次に、(2)の課題抽出を行います。厚労省は次のような課題を抽出することを例示しています。

▽診療科や主要な疾患に対する医療提供体制が確保できているか

 →例えば、県内の医療圏ごとに疾患別の患者流出入の状況を把握すれば、「当該疾患の自己完結度」が分かる

医療圏別に、疾患別の患者流出入の状況を見ることで、当該疾患の「自己完結度」を把握できる
医療圏別に、疾患別の患者流出入の状況を見ることで、当該疾患の「自己完結度」を把握できる

▽地域で、近接する複数の医療機関が同様に機能を担っていないか

▽救急搬送時間や、疾患ごと病院へのアクセス時間が長くなっていないか(県境については他県へのアクセスも考慮)

DPCデータを用いることで、救急患者の搬送に係る時間を地域ごとに把握できる
DPCデータを用いることで、救急患者の搬送に係る時間を地域ごとに把握できる
県境においては、他県へのアクセスの状況も把握するべきである
県境においては、他県へのアクセスの状況も把握するべきである

▽医療従事者の確保が十分に行えているか

▽地方自体の取り組み体制や人材育成は十分に行えているか

 厚労省は、課題を抽出し、対応策を議論するにあたって「数字だけでなく、地域の課題を十分に議論し、地域にとって最も適した計画を策定することが望ましい」と指摘しています。

 この点について神田医政局長は「課題抽出こそが地域医療構想実現の出発点である。地域医療構想策定後はもちろん、策定の前、策定する最中にも地域の課題抽出を行うことが重要である」と強調しました。

 また相澤孝夫構成院(日本病院会副会長)は、「地域では地域医療構想に関心のない医療関係者も多く、住民に至っては誰も知らないのが実際である。こうした状況のまま地域医療構想を策定し進めるのは非常に危険である。合意形成がきわめて重要だ」と指摘しています。

 なお、こうした課題抽出は行政の担当者が行い、重要な部分を調整会議に提出するという形が現実的でしょう。行政と調整会議の役割分担も、円滑に会議を進める上で重要な視点と言えます。

医療計画と地域医療構想の整合性にも留意を

 課題への対応案を考慮するとともに、(3)の「機能分化、連携」の具体的な在り方を議論することになります。

 その際には、各医療機関の「地域での位置づけ」を把握した上で、「役割分担」を明確にすることが重要ですが、厚労省は医療機関だけでなく「保険者や関係者を巻き込む」「患者・住民への啓発に取り組む」ことの重要性を強調しています。

 さらに機能分化・連携を進めるためには、(4)の「地域医療介護総合確保基金」の活用も考慮しなければいけません。基金は、「病床の機能分化・連携」のほか、▽居宅における医療提供▽医療従事者の確保・養成―にも活用できる点には注意が必要です。

 

 なお都道府県では、2018年度からの第7次医療計画の策定を近く検討することになります。地域医療構想は「医療計画の一部」であるため、厚労省は「医療計画」と「地域医療構想」の整合性にも留意するよう求めています。

病棟の構成が変化する中で、機能の変遷をどこまで分析できるか

 4日の検討会には、2015年度の病床機能報告(2回目の報告)の結果速報も提示されました。

 現在の機能を見ると、2014年度報告に比べて▽高度急性期がやや減少▽回復期がやや増加―しています。地域ごとに「急性期機能がどの程度、回復期に移行したのか」などが気になりますが、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「病棟構成が変化しており、分析が難しい」と述べており、どこまで明らかにできるのかは不明です。

2015年(平成27年)の病床機能報告の結果速報、前回(2014年)と比べて高度急性期が少し減り、回復期が少し増加している
2015年(平成27年)の病床機能報告の結果速報、前回(2014年)と比べて高度急性期が少し減り、回復期が少し増加している

 また「6年後の機能」と「2025年度の機能」(いずれも速報)も報告されており、やはり▽高度急性期がやや減少▽回復期がやや増加―という状況は同じです。

6年後の機能の状況を見ても、やはり高度急性期がやや減少し、回復期が少し増加している
6年後の機能の状況を見ても、やはり高度急性期がやや減少し、回復期が少し増加している
2025年の機能の状況を見ても、やはり高度急性期がやや減少し、回復期が少し増加している
2025年の機能の状況を見ても、やはり高度急性期がやや減少し、回復期が少し増加している

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