2020年代初頭までに、特養ホームなどを全国で12万人分追加整備―厚労省・国交省



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 アベノミクスの新たな三本の矢の一つである「介護離職ゼロ」に向けて、在宅・施設サービスの前倒しや介護人材の確保、さらに家族を介護する人がより柔軟な働き方を選択できるようにする。このため地域医療介護総合確保基金の積み増しや、新たな補助金を2015年度の補正予算などで措置するので、積極的に活用してほしい―。22日に開かれた全国介護保険・高齢者保健福祉担当者会議で、厚生労働省老健局の三浦公嗣局長はこのように訴えました。

 特に、2020年代初頭をメドに特別養護老人ホームなどを追加整備し、12万人の介護職員の受け入れ体制を確保することを目指していることを強調しています。

12月22日に開かれた全国介護保険・高齢者保健福祉課長会議の冒頭、介護離職ゼロに向けた政策の全体像を説明した、厚生労働省老健局の三浦公嗣局長
12月22日に開かれた全国介護保険・高齢者保健福祉課長会議の冒頭、介護離職ゼロに向けた政策の全体像を説明した、厚生労働省老健局の三浦公嗣局長

特養ホームへの待機待ちなどを解消し、介護離職ゼロを目指す

 安倍晋三首相は、わが国の経済と財政を立て直すため、いわゆるアベノミクスの新たな三本の矢として、(1)希望を生み出す強い経済(名目GDPを戦後最大の600兆円とする)(2)夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8を叶える)(3)安心につながる社会保障―を打ち出しました。

 このうち第三の矢である「安心につながる社会保障」については、介護により離職せざるを得ない人をゼロにする(介護離職ゼロ)ことを目指しており、次のような施策を緊急に行うこととしています。

▽在宅・施設サービスなどの整備の充実・加速化(介護基盤の整備)

▽介護サービスを支える介護人材の確保(介護人材確保)

▽介護サービスを活用するための家族の柔軟な働き方の確保

▽働く家族などに対する相談・支援の充実

 まず「介護基盤の整備」については、在宅・施設サービスなどの整備を前倒し、上乗せすることになりました。

 具体的には、▽特別養護老人ホーム▽介護老人保健施設▽認知症高齢者グループホーム▽特定施設(ケアハウス)▽小規模多機能型居宅介護▽看護小規模多機能型居宅介護▽定期巡回・随時対応型訪問介護看護―を、従来計画よりも10万人分上乗せして整備し、かつサービス付き高齢者向け住宅の整備を、従来計画よりも2万人分上乗せします(都合12万人分増)。整備は2020年代初頭までを目指しています。

 2015年度末に約124万人分の介護サービス基盤が整備されることになっています。従来計画では、2020年代初頭までに約38万人分以上が整備され、今回の第三の矢によりさらに約12万人分以上、結果として約174万人分以上の介護サービス基盤が整備される見込みです。

 政府は、家族の介護を理由とした離職・転職者数を年間で約10万人と推計しており(総務省の就業構造調査)、うち6割(つまり約6万人)は「仕事を続けたかったが、やむを得ず離職した」人です。また、そのうちの約1万5000人は「介護サービスが利用できなかったため、やむを得ず離職」しています。さらに年間1万人の特養ホーム入所希望があると推計され、ここに特養ホームへ入所するまでの、いわゆる待機期間(4年、特養ホームの平均在所期間)を考慮して、2万5000人×4年=10万人分の介護サービス基盤を整備。さらにサ高住を2万人分上乗せ整備することで、介護離職ゼロを実現したい考えです。

 このような基盤整備に向けて厚労省では、地域医療介護総合確保基金(介護分)を積み増し(サ高住整備については国土交通省が予算確保)して、財政支援を行います。

特養整備のため借地権設定支援、対象を看多機などにも拡大

 また、基金からは次のような補助も行われ、より多角的な介護サービス基盤整備が図られると期待できます。

▽特養ホームの用地確保のための定期借地権設定に際して、土地所有者に支払われた一時金の支援対象について、現在の「特養ホーム」「老健施設」などに加えて、「看護小規模多機能型居宅介護」「都市型経費老人ホーム」「養護老人ホーム」「介護職員などのための院内保育施設」などにも拡大し、さらに新たに「特養ホームに定期巡回・随時対応型訪問介護看護などを合築・併設するケース」も対象に追加する

▽地域密着型特養ホームに、老健施設や認知症高齢者グループホーム、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護などの合築・併設を行う場合には、配分基礎単価に0.05を乗じた額を加算する

▽空き家を活用して、「認知症高齢者グループホーム」「小規模多機能型居宅介護」「看護小規模多機能型居宅介護」「認知症対応型デイサービスセンター」を整備する場合には、1施設当たり850万円の補助を行う

 このほか、市小村の新たな総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の実施拠点を整備する場合の補助(新設は2800万円、改修は850万円が上限)、総合事業の開設準備に必要な事業の補助(300万円が上限)も行われます。

 また都市部での特養ホーム整備が急務であることを受け、一定の要件を満たす社会福祉法人については「特養ホームの建物について、国・地方自治体以外の者からの貸与」を認めることになります。詳細は今後、検討されます。

介護職への復帰に向け20万円を貸し付け、2年間の従事で返済免除

 介護人材確保については、まず「介護福祉士修学資金等貸付事業」が挙げられます。離職した介護人材が再就職準備を行う際に資金を貸し付けたり、あるいは介護福祉士養成施設の学生に対し学費を貸し付けることで、優秀な介護人材の確保を図ります(2015年度補正予算で261億円を確保)。

 また、地域医療介護総合確保基金を積み増しし、▽潜在介護人材の呼び戻し(離職した介護職の復帰促進)▽新規参入促進(若者、中高年齢者の介護職への転職促進)▽離職防止・定着支援―などを幅広く行うことにしています(444億円)。

 たとえば、再就職準備金は20万円を上限として、「子どもの預け先を探す際の活動費」や「介護に係る講習会や書籍の購入費」などを貸し付けるもので、2年間、介護職員として継続従事すれば返済が「全額免除」されます。

 介護福祉士養成施設入学者に対しては、学費5万円、入学準備金20万円、就職準備金、国家試験受験対策費4万円、生活費4万2000円を上限として貸し付けが行われ、こちらは5年間、介護職員として継続従事することで返済が「全額免除」されます。

新たに、高額な介護ロボットの導入費用を全額補助する仕組みも

 介護人材確保の一環として、介護ロボットの活用による介護従事者の負担軽減が挙げられます。この点について厚労省は、現行の支援事業を拡充するほか、新たな支援も行うこととしています。

 まず現行の「介護ロボット導入支援事業」(1機器当たり10万円、ただし20万円未満のものは価格の2分1、が上限)について、地域医療介護総合確保基金を積み増しており、厚労省は「積極的な実施」を求めています。

 また新規に次の3つの支援を行い、介護ロボットの活用をさらに推進する考えです。

▽介護従事者の負担軽減に資する介護ロボット導入促進事業(20万円超の介護ロボットを介護保険施設や事業所に導入する際、1施設・事業所につき300万円を上限として、全額を補助する)

▽介護ロボットなどを活用した見守り支援機器導入促進事業(要介護度が比較的低く、外出頻度の高い高齢者などについて、見守りをする必要がある場合に、市町村からその家庭に見守り支援機器を貸し出す。市町村における機器購入費用について、1機器10万円を上限に全額を補助する)

▽介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業(全国10か所程度で、「業務負担の軽減が期待できる移乗支援」「見守り支援」の介護ロボットを対象に、これを活用した介護技術の開発を行う)

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