7対1の在宅復帰率、「在宅強化型の療養」の扱い見直しは妥当―日慢協・武久会長



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 7対1入院基本料の在宅復帰率計算において、「在宅強化型の療養病棟」の扱いを、これまでの「分子」(最も高い評価)から「計算に含めない」(2番目に高い評価)に見直す内容は妥当である―。このような見解を、日本慢性期医療協会の武久洋三会長が発表しました。

 武久会長は、「病院内施設として、SNR(Skilled Nursing Residence)やHCF(Hospital Care Facility)の設置を認めるべき」「老人保健施設の特別養護老人ホームへの転換を認めるべき」との提案も行っています。

12月10日の日本慢性期医療協会・定例記者会見に臨んだ、武久洋三会長
12月10日の日本慢性期医療協会・定例記者会見に臨んだ、武久洋三会長

在宅強化型の療養、転院先としての価値は一定程度維持される

 7対1入院基本料の施設基準として、2014年度の前回診療報酬改定で「在宅復帰率75%以上」という要件が新設されました。ここでいう在宅には「自宅」「高齢者向け集合住宅」などのほか、他院の「回復期リハ病棟」「地域包括ケア病棟」「在宅復帰機能強化加算を算定する療養病棟」(在宅強化型の療養)、さらに「在宅機能強化型の老人保健施設」も含まれます。

 しかし、厚生労働省は「自宅などへの復帰をより高く評価すべき」との考えに立ち、9日開かれた中央社会保険医療協議会の総会に、「自宅」「高齢者向け集合住宅」と「回復期リハ」「在宅強化型の療養」などを別の区分にすることを暗に提案しました(関連記事はこちらこちら)。

 具体的には、次のように計算方法を見直しますが、回復期リハや在宅強化型の療養などを、これまでの「最も高い評価」から「2番目に高い評価」に移行するものです。

【現在の在宅復帰率計算式】

●分子:自宅、高齢者向け集合住宅、「他院の回復期リハ・地域包括ケア病棟・在宅強化型の療養、在宅強化型老健」

●分母:全退院数―死亡退院―転棟

【見直し後の在宅復帰率計算式】

●分子:自宅、高齢者向け集合住宅

●分母:全退院数―「他院の回復期リハ・地域包括ケア病棟・在宅強化型の療養、在宅強化型老健」―死亡退院―転棟

在宅復帰率要件について、計算方法の見直しや基準値(現在75%以上)の引き上げが検討される
在宅復帰率要件について、計算方法の見直しや基準値(現在75%以上)の引き上げが検討される

 この見直し内容について、10日の定例記者会見の中で武久洋三会長は「妥当なものだろう」と評価しました。

 武久会長は、この根拠として「在宅強化型でない療養病棟などは最も低い評価のままである」点を挙げています。

 7対1からの転院・転倒先として「在宅強化型でない療養」を選択すれば、在宅復帰率が下がるため、今後、在宅復帰率の基準値(現在は75%以上)が引き上げられれば、その病院が7対1の在宅復帰率を満たすことは難しくなります。逆に言えば、上記の見直しが行われても、転院先としての「在宅強化型の療養」の価値は一定程度維持されることになるのです。

 「在宅強化型の療養」などが、転院先としての価値が極めて低く(例えば最も低い評価とするなど)なると、7対1病院では「自宅」に帰れる人を選別するクリームスキミングが発生しかねませんが、武久会長は「今回の見直し内容であれば、そこまでの状況にはならない」と見ているようです。

25対1医療療養などの転換先、2類型案を基本的に支持

 10日の日慢協会見では、次のような提案も発表されました。

(1)病院内施設として、SNRやHCF、老健、特養、グループホームなどの設置を幅広く認めるべきである

(2)特養ホームの急速な整備を進めるため、希望する老健について特養ホームへの転換を認めるべきである

 「25対1医療療養」や「介護療養型医療施設」については、設置を認める経過措置が2017年度末で切れるため、20対1医療療養などへの転換が必要です。

 日慢協では、これまでにも「25対1医療療養が20対1医療療養に移行する際、すべての病床を移行することは難しい。移行できなかった部分(空床)を院内施設(SNW改め「SNR」、Skilled Nursing Residence)に転換してはどうか」との提言を行っています。また介護療養については、「2015年度の介護報酬改定で新設された機能強化型(A、B)はHCF(Hospital Care Facility)に、通常の介護療養はSNRに転換すればよい」との考え方も示しています。(1)の提案は、これらを強調するものと言えます。(関連記事はこちら

 一方、厚労省は25対1医療療養などの新たな転換先として、既存の20対1医療療養や転換型老健などのほかに、「新たな選択肢」も認めるべきではないかとの考えに立った検討を進めています(療養病床の在り方等に関する検討会)。11月27日に開催された療養病床検討会では、厚労省や日本医師会・四病院団体協議会から、新たな選択肢として▽医療を内包した施設類型(内包型)▽医療を外から提供する「住まい」と「医療機関」の併設類型(併設型)―の2タイプが提案されました。(関連記事はこちら

厚生労働省の提案した、新たな施設類型。25対1療養や介護療養が、住まいの機能を強化するとともに、適切な介護サービスなどを備え、必要な医療サービスを(1)内包する類型(2)外から提供する類型(住まいと医療機関との併設)―の2つの類型を提唱している
厚生労働省の提案した、新たな施設類型。25対1療養や介護療養が、住まいの機能を強化するとともに、適切な介護サービスなどを備え、必要な医療サービスを(1)内包する類型(2)外から提供する類型(住まいと医療機関との併設)―の2つの類型を提唱している
鈴木委員の提唱した「日医・四病協」案。厚労省案と同じく、医療提供を院内で提供する形(内包型)と、併設する医療機関から提供する形(外付型)の2類型を提案している
鈴木委員の提唱した「日医・四病協」案。厚労省案と同じく、医療提供を院内で提供する形(内包型)と、併設する医療機関から提供する形(外付型)の2類型を提案している

 この点について日慢協の池端幸彦副会長は、厚労省などが提案した「内包型」は日慢協の提唱するHCF、「併設型」は日慢協の提唱するSNRに合致するとして「基本的に賛同する」との考えを改めて強調しました。

11月12日の日本慢性期医療協会・定例記者会見に臨んだ、池端幸彦副会長
11月12日の日本慢性期医療協会・定例記者会見に臨んだ、池端幸彦副会長

 ところで、池端副会長は「日慢協の提案などは過渡的なもの」と位置づけていますが、これは「1人当たり6.4平方メートル、4人部屋という病院病床」が長期間の生活にとって不十分ではないかとの配慮に基づく見解のようです。仮に「寝たきりに近い高齢者では、6.4平方メートルでも十分である」という国民的合意が得られるような場合には、「過渡的なもの」という位置づけも変わってくるでしょう。

 なお、「看取りなどに対応するため、医師の当直はHCFでは外すことはできない」という点を強調しています。

老健から特養への転換認め、特養整備を進めるべき

 一方(2)の提案は、安倍晋三首相が主催する「1億総活躍国民会議」では、要介護高齢者の「終の棲家」となる特養ホームを大幅に増床する方針が示されています(関連記事はこちら)が、それには莫大なコストがかかることが容易に想像できます。そこで武久会長は、「老健施設から特養への転用を認めるべき」との見解を示しました。

 武久会長は、「特養ホームへのニーズが高く、老健施設の中には『特養の待機待ち』施設となってしまっているところもある。コストを掛けずに特養ホームの整備を進めるためには、希望する老健施設が特養ホームへ転換することを認めるべき」と説明しています。

 ところで、現在、特養ホームの設置は地方自治体か社会福祉法人にのみ認められており、老健の主な設置主体である医療法人は特養の設置はできません。この点について武久会長は「医療法人に特養の設置を認めればよい」と大胆な提案を行っています。

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