地域包括診療料などの対象、「認知症+α」の患者にも拡大―中医協総会



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 地域包括診療料と地域包括診療加算の対象を、「高血圧症、糖尿病、高脂血症以外の疾患を有する認知症患者」にも広げてはどうか―。こういった方向が、18日に開かれ中央社会保険医療協議会の総会でまとまりました。

 また、3歳以降の小児に対する主治医機能を評価する診療報酬項目を新たに創設する方向も固まっています。

診療側委員からは地域包括診療料などの要件緩和を求める声も

 地域包括診療料と地域包括診療加算は、▽高血圧症▽糖尿病▽高脂血症▽認知症―のうちいずれか2つ以上の疾患を有する患者に対して、服薬管理や健康相談、介護保険に係る相談、在宅医療の提供や24時間対応などを行うことを包括的に評価する点数で、2014年度の前回診療報酬改定で新設されました。厚生労働省は、これらを「主治医機能」を評価する点数と説明しています。

主治医機能を診療報酬で評価するために、2014年度改定で「地域包括診療料」「地域包括診療加算」を新設
主治医機能を診療報酬で評価するために、2014年度改定で「地域包括診療料」「地域包括診療加算」を新設

 厚労省の調査によれば、前回改定から1年3か月が経過した今年(2015年)7月時点で、地域包括診療料は93施設、地域包括診療加算は4713施設が算定するにとどまっており、1年前(14年7月)に比べて届け出施設は減少しています。減少の背景には、「15年3月までは、慢性疾患の指導に関する研修を修了したものとみなす」という経過措置が切れたことがありそうです。

地域包括診療料の届出施設は2015年7月時点で93、1年前(14年7月)の122施設に比べて29施設減少している
地域包括診療料の届出施設は2015年7月時点で93、1年前(14年7月)の122施設に比べて29施設減少している
地域包括診療加算の届出施設は2015年7月時点で4713、1年前(14年7月)の6536施設に比べて1823施設減少している
地域包括診療加算の届出施設は2015年7月時点で4713、1年前(14年7月)の6536施設に比べて1823施設減少している

 ところで「認知症」の外来患者数(推計)は増加傾向にあり、今後も高齢化が進展する中では、さらなる増加が見込まれまれており、政府は認知症政策推進総合戦略(新オレンジプラン)を今年1月にまとめました。そこでは「主治医機能の重要性」が強調されています。

認知症を早期診断し、早期対応するための体制を充実。2018年には認知症初期集中支援チームを全市町村に設置する。
認知症を早期診断し、早期対応するための体制を充実。2018年には認知症初期集中支援チームを全市町村に設置する。

 主治医機能を評価する地域包括診療料などを算定している患者の疾患を見ると、「高血圧症と高脂血症」が最も多く、次いで「高血圧症と糖尿病と高脂血症」となっており、「認知症」患者は比較的少数派です。

地域包括診療料などを算定している患者の疾患構成を見ると、「高血圧+高脂血症」「認知症以外」が多く、認知症の患者は少数派である
地域包括診療料などを算定している患者の疾患構成を見ると、「高血圧+高脂血症」「認知症以外」が多く、認知症の患者は少数派である

 また、厚労省の調査によれば、認知症患者は高血圧症、糖尿病、高脂血症以外にも、▽消化器疾患(便秘症や消化性潰瘍など)▽運動器疾患(骨粗しょう症など)▽循環器疾患(虚血性心疾患など)を有しており、より総合的な治療・管理が必要なことも分かっています。

認知症患者の併存症は、高血圧・糖尿病・高脂血症以外にも、「消化器疾患」「運動器疾患」「循環器疾患」などさまざまである
認知症患者の併存症は、高血圧・糖尿病・高脂血症以外にも、「消化器疾患」「運動器疾患」「循環器疾患」などさまざまである

 こうした状況を踏まえて厚労省保険局医療課の宮嵜雅則医療課長は、地域包括診療料・地域包括診療加算の対象患者に、「高血圧症、糖尿病、講師化粧以外の疾患を有する認知症患者」も加えてはどうかと提案しました。これにより多くの認知症患者に対して総合的な治療・管理が提供されることになり、結果として「重複受診」や「多剤・長期投与」の適正化も期待できそうです。

 厚労省の提案に対して診療・支払双方の委員から特段の反対意見は出されていません。ただし診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「地域包括診療料などは、主治医機能を評価する画期的な点数だが、要件が厳しすぎる。届け出施設数が減少していることを重く見て、要件の緩和を検討すべき」との注文を付けています。また同じ診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、より具体的に「地域包括診療料を届け出る病院には二次救急医療機関などであることが求められるが、厳しすぎる。急患に対応できる体制の整備で十分ではないか」と要望しました。

3歳以降の小児に対する総合的な治療・管理を評価

 2016年度の次期改定では、小児に対する主治医機能の評価も充実される見込みです。

 小児の主治医機能を評価する診療報酬項目として「B001-2 小児科外来診療料」があります。これは、小児科を標榜し、本点数を算定することを地方厚生局に届け出た医療機関で算定できる点数で、3歳未満の全患者について、一部の高額な薬剤や点数(時間外加算や往診料など)を除き包括評価を行うものです。

小児科を標榜する医療機関で、地方厚生局に届け出を行っている医療機関は、3歳未満の全患者について小児科外来診療料を算定する
小児科を標榜する医療機関で、地方厚生局に届け出を行っている医療機関は、3歳未満の全患者について小児科外来診療料を算定する

 しかし、小児の外来医療については「受療率が高い」「重複受診が多い」「時間外や休日、深夜の受診が多い」という問題点が依然として目立っており、より充実した「主治医機能」が求められている状況です。

小児科では、時間外や休日、深夜の受診が比較的多い
小児科では、時間外や休日、深夜の受診が比較的多い

 そこで厚労省保険局医療課の宮嵜課長は、小児医療の特徴を踏まえて、次のような提案を行いました。

●継続的に受診する患者の同意の下、「慢性疾患の継続的な管理」「急性疾患の診療」「時間外の対応」「必要に応じた専門医療機関への紹介」「予防接種の状況や健康診査の結果などを踏まえた健康管理」を総合的に行い、継続的かつ全人的な診療を行う主治医機能を評価する

 宮嵜課長は「小児医療は3歳で切れるわけではなく、その後も継続した管理が必要である。小児科外来診療料の評価方法を基調としつつ、3歳以降の一定の年齢(例えば6歳)まで引き続き評価してはどうか」との考えも示しており、「3歳以降の小児に対する新たな包括評価項目の創設」や「小児科外来診療料の拡大」などを行うことが予想されます。この提案に対する異論は出されていません。

 時間外の対応については、前述のように「小児科では時間外や休日、深夜の受診が多い」という特徴を踏まえると同時に、親が「急病時の対応」や「待たされない診療」などを強く求めている点にも配慮したものと言えます。

子どもの親は、かかりつけ医や主治医に対して「急病時の治療」や「待たされない診療」を求めている
子どもの親は、かかりつけ医や主治医に対して「急病時の治療」や「待たされない診療」を求めている

 小児医療については、これまでに「小児がん拠点病院の評価(関連記事はこちらこちら)」、「小児版の機能強化型訪問看護ステーションの評価(関連記事はこちら)」、「小児入院医療管理料の算定患者が退院した月に在宅医療の導入に係る項目の算定を認める(関連記事はこちら)」、「小児慢性特定疾患などの患者について、小児入院医療管理料の対象年齢の上限を引き上げる(関連記事はこちら)」などの方向が打ち出されており、相当の充実が見込まれます。診療報酬改定の基本方針を議論する社会保障審議会・医療部会では「診療報酬でも少子化対策を意識するべきではないか」との指摘が出ていますが(関連記事はこちら)、厚労省は既にそれに対する答えを提示していると見ることもできそうです。

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