特定機能病院に、「監査委員会」設置や「医療安全担当の副院長」配置を義務付け―厚労省



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 特定機能病院において、より高度な医療安全管理体制を確保するために、過半数を外部委員とする「監査委員会」の設置、医療安全管理責任者である「医療安全担当副院長」の配置、医療安全管理部門に専従の医師・薬剤師の配置などを義務付ける―。このような考え方を、塩崎恭久厚生労働大臣が本部長を務める「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」がまとめました。

特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった
特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった

 今後、社会保障審議会の医療部会などで、医療法改正案や特定機能病院の承認要件見直し案を詰めることになります。また、これとは別に「大学附属病院などのガバナンス改革」を検討する場(検討会など)も設置される見込みです。

11月5日に開催された、「第4回 大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」
11月5日に開催された、「第4回 大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」

医療安全管理に関する内部統制と外部監査を強化

 東京女子医科大学病院と群馬大学附属病院の2つの特定機能病院で重大な医療事故が発生し、かつ病院の管理者にその事実が報告されていませんでした。厚生労働省は事態を重くみて、両病院について特定機能病院の承認を取り消すとともに、すべての特定機能病院に対し集中的な立入検査を6月から9月にかけて行いました。

 その結果、「開設者・管理者が医療安全に積極的に取り組んでいない病院」や「内部監査を実施していない病院」があることなどが明らかになりました。

 タスクフォース(TF)では、調査結果を踏まえた上で、「高度な医療を提供する特定機能病院では、高度な医療安全管理体制が整えられているべき」と考え、次のような対応をとるべきとの結論を5日にまとめました。

(1)医療法に、特定機能病院には「より一層行動な医療安全管理体制の確保が求められる」ことを規定する

(2)特定機能病院の内部統制を強化する

(3)特定機能病院の外部監査を強化する

(4)地方厚生局による特定機能病院への立ち入り検査を強化する

 これらの対応には、法律改正が必要な事項から、厚労省の通知見直しで済む事項まで多岐にわたる内容が含まれており、厚労省医政局総務課の中村博治課長は「対応事項の整理を行い、できるところから始める」と説明しています。

 当面、「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」を再開し、後述の対応内容を「承認要件」とするのかなどを詰めるほか、「大学附属病院などのガバナンス改革」を検討する場(検討会など)の設置などが行われる見込みです。

医療安全管理委員会、専従の医師・薬剤師・看護師を配置

 (2)の特定機能病院の内部統制強化に向けた対応内容を少し詳しく見てみましょう。

 まず、特定機能病院でも医療安全に関する最終責任は管理者(病院長)にあります。しかし病院長の業務は多岐にわたることから、別途「医療安全管理責任者」を設置する必要があります。TFは、この医療安全管理責任者の設置を「法令上明確に位置づける(つまり義務化する)」とともに、「医療安全担当の副院長が務める」よう求めています。具体的な職種(医師でなければならないのかなど)は今後の検討に委ねられます。

 また医療安全管理部門には、原則として「専従の医師・薬剤師・看護師」の配置が義務化されます。現在は、医師・歯科医師・薬剤師・看護師のいずれか1名を「専任」とすることで足りていましたので、相当高いハードルが設置されることになります。

 ただし「専従」が具体的に何を意味するのか(例えば臨床に携わることが一切認められないのかなど)は、今後、検討されることになります。

現場の体制を医療安全管理部門が厳しくチェック

 医療現場からは、医療安全管理部門に対して▽事故防止体制の確保▽事故報告体制▽診療記録の管理強化―について徹底した報告を行うことが求められます。例えば、すべての死亡事例について医療安全管理部門に報告を挙る必要があります。

 逆に、管理部門は報告が不十分な診療科などがある場合には指導を行わなければなりません。さらに、事故が発生する前、つまり平時から、医療安全に資する診療が行われているか(手術時の血栓予防策がどの程度実施されているかなど)をモニタリングしたり、診療記録などを定期的にチェックするなども取り組みも求められます。

 なお、医療現場のスタッフが安全体制に問題があると感じた場合などに「内部通報」できる窓口を医療安全管理部門に設置することも必要です。

 こうした取り組みが、特定機能病院の中で統一され、組織的な医療安全管理体制が敷かれることこそが、今回の対応の狙いと言えるでしょう。

過半数が外部者で構成される「監査委員会」を設置

 どれほど内部統制をしっかりしても、やはり「身内ゆえの甘え」が生じる可能性もあります。そこで(3)の外部監査を強化することも重要となります。これにより国民から信頼を獲得することもできます。

 TFでは、すべての特定機能病院に「監査委員会」を設置することを打ち出しました。

 監査委員会には、医師だけでなく、医療安全や法学などについて一定の見識を持つ第三者や一般の立場の人も参画することになり、また「委員長」と「委員の過半数」は外部者であることが必要となります。

 監査委員会では、管理者(病院長)や医療安全管理責任者・医療安全管理部門、さらに医療安全管理委員会を監査し、その病院の医療安全管理体制に不備がある場合には改善を求めるとともに、不備がある旨を公表します。

 また、特定機能病院同士が相互にチェック(ピアレビュー)することで医療資安全管理体制が充実することも期待できるので、こうした仕組みも構築される見込みです。

改革スケジュールは未定、「できるだけ早く」と中村総務課長

 こうした対応が、どのようなスケジュールで実行に移されるのかが気になりますが、中村総務課長は「できるだけ早く」と述べるにとどめています。前述の内容の詳細を詰めるだけでも一定の時間がかかりますし、その後、法案作成-国会審議にも時間が必要です。さらに法令の整備が進んだとしても、医療現場にその対応を即座に求めることは難しいでしょうから一定の経過措置を置く必要も出てくるでしょう。

 この点についてTFの楠岡英雄顧問(社会保障審議会医療分科会長、国立病院機構大阪医療センター院長)は、メディ・ウォッチに対し「医療安全体制の確保は急務であり、5年、10年もかけて整備するものではない。しかし、半年や1年で体制の整備を求めるのは酷であろう」とコメント。2-3年かけて体制整備を求めることが現実的なスケジュールと考えらそうです。

塩崎厚労省「大学病院のガバナンス改革」に意欲

 TFに出席した本部長の塩崎恭久厚労相は、「特定機能病院は最高の医療提供を行う場であり、同時に医療安全管理にも高い水準が求められる。医療事故が起きた後の対応も重要だが、普段から事故を未然に抑止することこそが本来の姿であると思う」と指摘し、今回の対応の根底にある考え方を強調しました。

大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォースに出席した塩崎恭久厚生労働大臣
大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォースに出席した塩崎恭久厚生労働大臣

 また塩崎厚労相は、「病院において医療安全管理の最終責任は病院長にある。病院長には、基本理念(高度な医療安全管理体制の構築)を遵守して、強いリーダーシップを継続して発揮していただく必要がある。しかし、多くの大学病院では病院長を選挙で選んでおり、これでは医療安全を最優先にした、継続したリーダーシップには必ずしもつながらないのではないかと感じている」と述べ、今後、前述した「大学病院などのガバナンス改革に向けた検討の場」での議論に期待を寄せています。

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