療養病棟の在宅復帰機能強化加算、急性期患者の受け入れ評価など見直しへ―中医協総会



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 療養病棟の「在宅復帰機能強化加算」について、自宅からの入院患者よりも、急性期からの受け入れ患者の在宅復帰率を高く評価してはどうか―。このような提案を、28日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会に厚生労働省が行いました。

 また、障害者施設や特殊疾患病棟に入院している脳卒中患者については、「特に状態の変動が大きな患者」を除いて、療養病棟と同じ包括評価とする提案も行われました。

 中医協委員からは特段の反対意見は出ていませんが、一部注文も付いており、今後の具合的な制度設計が注目されます。

10月28日に開催された、「第309回 中央社会保険医療協議会 総会」
10月28日に開催された、「第309回 中央社会保険医療協議会 総会」

「急性期からの転院患者の在宅復帰」をどう評価すべきか

 療養病棟を中心とした慢性期入院医療については、中医協の下部組織である入院医療等の調査・評価分科会で見直し論議が行われてきました。28日の中医協では、この議論をベースにした次の論点が提示されています。

(1)在宅復帰機能強化加算について、急性期病棟からの受け入れ頻度を評価する

(2)医療区分2・3のうち「酸素療法」「うつ病」「頻回な血糖測定」について、よりきめ細かな状況を考慮する

(3)療養病棟入院基本料2の施設基準にも、医療区分2・3の患者割合を設定する

(4)障害者施設、特殊疾患病棟に入院する脳卒中後遺症患者について、療養病棟と同様の包括評価とする

 それぞれについて見ていきましょう。

 まず(1)の在宅復帰機能強化加算は、療養病棟の入院患者についても在宅復帰を促進していこうとの考え方に基づき、2014年度の前回診療報酬改定で導入されました。この加算を算定している療養病棟は、7対1病棟や地域包括ケア病棟からの「在宅復帰先」となるという画期的な仕組みも導入されています。

 ただしこの加算を算定している療養病棟の状況を厚労省が詳しく調べたところ、「1か月未満の入院患者を在宅復帰率計算から除外しているため、入院が長期化している可能性がある」「在宅復帰が容易な『自宅からの入院患者』が多く受け入れられている」という問題があることが分かりました。

在宅復帰率にカウントされない30日未満の退院は、在宅復帰機能強化加算を届け出ている病院では比較的少ない
在宅復帰率にカウントされない30日未満の退院は、在宅復帰機能強化加算を届け出ている病院では比較的少ない
自宅から入院した患者を除くと、在宅復帰機能強化加算を届け出ている病院でも在宅復帰はそれほど多くない
自宅から入院した患者を除くと、在宅復帰機能強化加算を届け出ている病院でも在宅復帰はそれほど多くない

 このため入院医療分科会では、「加算の要件の1つである病床回転率を工夫して、急性期病棟からの患者受け入れを促してはどうか」との考えが浮上したのです(関連記事はこちら)。

 しかし、厚労省保険局医療課の担当者によれば、「急性期からの患者を多く受け入れ、他の病院などに転院させることで病床回転率を上げる」「在宅復帰しやすい『自宅からの入院患者』を多く受け入れることで在宅復帰率を上げる」ことで加算の要件を満たすことができ、病床回転率の工夫だけでは「急性期病棟からの患者を受け入れ、その患者を在宅復帰させる」ことは難しいことが分かりました。

 そこで厚労省は、▽在宅復帰率の算出から1か月未満を除外するルールを見直す▽より直接的に急性期などから受け入れた患者の在宅復帰の頻度を評価する―という2本立ての見直しを考えています。

 この考え方に特段の反対意見は出ず、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は高く評価しましたが、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「在宅復帰の『事例』を評価したほうが良いのではないか」と注文を付けています。

 今後、2本立ての見直しが具体的にどのような姿になるのか注目する必要があるでしょう。

酸素療法や頻回な血糖測定、よりきめ細かな状況を考慮

 (2)の「酸素療法」(医療区分3)、「うつ病」「頻回な血糖測定」(いずれも医療区分2)に該当する患者について詳細な調査を行ったところ、医師による指示見直しの頻度が低く、看護師による観察・管理の頻度も低い「状態が安定している」と考えられる患者が相当程度いる一方で、急性増悪した患者も一定程度おり、患者の状態が多様であることが分かりました。

酸素療法(医療区分3)の患者の状態を見ると、医師による指示見直しがほとんど必要ない人が29%など、軽症者もいることが分かる
酸素療法(医療区分3)の患者の状態を見ると、医師による指示見直しがほとんど必要ない人が29%など、軽症者もいることが分かる
うつ状態(医療区分2)の患者の状態を見ると、医師による指示見直しがほとんど必要ない人が55%など、軽症者が一定程度いることが分かる
うつ状態(医療区分2)の患者の状態を見ると、医師による指示見直しがほとんど必要ない人が55%など、軽症者が一定程度いることが分かる
頻回の血糖測定(医療区分2)の患者の状態を見ると、医師による指示見直しがほとんど必要ない人が44%など、軽症者が一定程度いることが分かる
頻回の血糖測定(医療区分2)の患者の状態を見ると、医師による指示見直しがほとんど必要ない人が44%など、軽症者が一定程度いることが分かる

 そこで厚労省は、単に「酸素療法を実施している」「頻回な血糖測定を行っている」というだけでなく、「患者のきめ細かな状況」を考慮して、医療区分2または3に該当することとしてはどうかと提案しています。「きめ細かな状況」をどのように設定するのかは、今後の議論に委ねられています。この見直し案にも特段の反論は出ていません。

 

 また(3)は、療養病棟入院基本料2(看護配置25対1)でも、医療必要度の高い患者を受け入れてもらうために、施設基準に「医療区分2・3の患者受け入れ割合」(入院基本料1では80%以上に設定されている)を設定するというものです。

 この提案ついて白川委員は「医療必要度の低い患者の中には、療養病棟2以外に行き場のない人がいることは承知している」とした上で、「医療区分2・3の患者割合を導入することも重要である」と賛意を表明しました。

 では、医療区分2・3の患者割合はどの程度に設定すべきでしょうか。ここで考慮すべきは、「新たに設定される施設基準を満たせない療養病棟は、低額な特別入院基本料を算定せざると得ない」という点です。このため、あまりに高い患者割合を設定すれば「行き場のない患者」の追い出しが生じる可能性もあり、厚労省の調整が注目されます。

脳卒中後遺症患者、障害者施設などでも原則包括評価

 2010年度の診療報酬改定では、障害者施設・特殊疾患病棟1の対象から「脳卒中後遺症患者」が除外されましたが、実際には「重度の意識障害者」として入院しているケースが少なくありません。

 障害者施設などに入院している「脳卒中後遺症患者」の状態を厚労省が調べたところ、療養病棟と同程度、あるいはそれ以上に「状態の安定した患者」もいることが分かりました。しかし、障害者施設や特殊疾患病棟に入院する脳卒中患者は、療養病棟よりも高い費用が支払われている実態もあります。

障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「医師による指示の見直しがほとんど必要ない」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している
障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「医師による指示の見直しがほとんど必要ない」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している
障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「看護師の観察・管理は定時のみで対応できる」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している
障害者施設や特殊疾患病棟1にも、「看護師の観察・管理は定時のみで対応できる」脳卒中患者が療養病棟と同じ程度の割合で入院している
障害者施設と療養病棟では、「過去1か月に急性増悪のあった」脳卒中患者の割合は同程度だが、特殊疾患病棟では急性増悪のあった脳卒中患者が多く入院している
障害者施設と療養病棟では、「過去1か月に急性増悪のあった」脳卒中患者の割合は同程度だが、特殊疾患病棟では急性増悪のあった脳卒中患者が多く入院している
脳卒中の入院患者について1日当たりの請求金額を比べると、障害者施設>特殊疾患病棟1>療養病棟1>療養病棟2の順で高い
脳卒中の入院患者について1日当たりの請求金額を比べると、障害者施設>特殊疾患病棟1>療養病棟1>療養病棟2の順で高い

 このため厚労省は、(4)として、次のような2弾構えでこの問題に対処することを提案しました。

▽そもそも「脳卒中後遺症患者」を障害者施設などで診るべきかを検討する

▽16年度改定で「障害者施設などで脳卒中後遺症患者を診ることは原則できない」とすることが難しいとしても、状態が安定した患者については、療養病棟と同等の評価(包括評価)とする

 後者では「特に状態の変動が大きい患者」は包括評価の対象から除外することになっており、この点について万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「十分に議論する必要がある」と指摘。鈴木委員は「本当に療養病棟の入院患者と同様の状態なのかを精緻に評価する必要がある」と注文を付けています。具体的にどういった患者が「特に状態の変動が大きい」と判断されるのか、今後の調整を待つ必要があります。

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