地域包括ケア病棟の包括範囲、診療側内部で意見まとまらず、厚労省は現行継続を提案―中医協総会



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 地域包括ケア病棟において、手術・麻酔などを出来高評価とせず、現行の包括評価を継続してはどうか―。28日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会で、厚生労働省はこのような論点を提示しました。

 これは診療側内部で「地域包括ケア病棟の包括範囲」に対する考え方がまとまっていないことが背景にあり、今後、どのような調整が行われるのか注意深く見守る必要があります。

10月28日に開催された、「第309回 中央社会保険医療協議会 総会」
10月28日に開催された、「第309回 中央社会保険医療協議会 総会」

手術・麻酔の出来高評価、入院医療分科会では賛否両論

 地域包括ケア病棟(以下、病室を含む)は、2014年度の前回診療報酬改定で創設されたもので▽医学管理▽検査▽画像診断▽投薬▽注射▽リハビリ▽処置▽手術▽麻酔▽放射線治療▽病理診断のほとんどが包括評価されています。

地域包括ケア病棟入院料の包括範囲(赤枠)、他の特定入院料と比べて包括範囲が広いことが分かる
地域包括ケア病棟入院料の包括範囲(赤枠)、他の特定入院料と比べて包括範囲が広いことが分かる

 厚労省が地域包括ケア病棟における医療内容を調べたところ、「手術や麻酔がほとんど行われていない」「リハビリは施設基準の2倍実施しているところもある」ことなどが分かりました(関連記事はこちら)。

 この点について医療現場からは「地域包括ケア病棟では手術料、麻酔料が包括評価されており、救急患者の受け入れなどを躊躇してしまうのではないか」との意見が出ていたため、厚労省は中医協の下部組織である入院医療等の調査・評価分科会(以下、入院医療分科会)に「手術、ブロック注射を除く麻酔を出来高評価としてはどうか」という論点を提示しました(関連記事はこちら)。

 診療側の委員は、この提案を諸手を挙げて歓迎するかと思われましたが、一部の委員から「包括のままでよいのではないか」との意見も出るなど、状況は混迷(関連記事はこちら)。入院医療分科会のとりまとめはでは「手術・麻酔は出来高とすべき」という意見と「包括のままでよい」という意見の両論が併記されています(関連記事はこちら)。

日医は「病院の規模で地域包括ケアの評価を区分」せよと提案

 次期改定に向けた議論の場が中医協に移った26日、この点についての記載が注目されましたが、厚労省は「14年度改定で設定された地域包括ケア病棟の包括範囲など、その評価体系を継続する」という論点を提示しました。つまり、手術・麻酔は出来高にしないということです。

 しかし、中医協でこの論点(提案)が了承されたわけではありません。

 診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「昨今、病棟の機能が注目を集めているが、患者にとって分かりにくくなっている。かつてのように病院の機能を重視すべき」と述べ、地域包括ケア病棟の診療報酬を病院の規模(病床規模)に応じて区分すべきと提案しました。鈴木委員はかねてより、大規模な急性期病院が地域包括ケア病棟や回復期リハ病棟を併設する(ケアミックス)ことを非難しており、今回の提案もこの考えに沿ったものと言えます。

 具体的には、次の2区分を提唱しています。

(1)sub acute(軽度急性期)患者を地域包括ケア病棟で受け入れる病院(200床未満の病院)

(2)sub acute患者をまず7対1などの急性期病床で受け入れ、post acute(急性期後)に地域包括ケア病棟で受け入れる病院(200床以上の病院)

 (1)の病院では、急性期治療も行うため、現在の包括評価に加えて、急性期に対応する場合の診療報酬体系(例えばDPC評価)を創設し、ほかの急性期病床を持たず、地域包括ケア病棟入院料のみを届け出た場合に算定できるという構図を描いています。鈴木委員は「急性期治療については、別途評価する必要がある」と述べており、こちらでは手術や麻酔の出来高算定を支持していると考えられます。

 一方、(2)の病院では、地域包括ケア病棟は1病棟に限定すべきと提案しました。さらに鈴木委員は、このケースについて「高額な薬剤は出来高評価とすべき」と述べていますが、手術や麻酔については「議論していきたい」と述べるにとどめ、出来高評価に積極的とは言えません。

日医常任理事の鈴木委員が提唱した、「病院の規模に応じた地域包括ケア病棟の区分」案
日医常任理事の鈴木委員が提唱した、「病院の規模に応じた地域包括ケア病棟の区分」案
200床以上の病院で、地域包括ケアを2病棟(およそ60床以上)持っていると考えられる病院はすべて7対1病院である(8病院)
200床以上の病院で、地域包括ケアを2病棟(およそ60床以上)持っていると考えられる病院はすべて7対1病院である(8病院)

日病の万代委員、日医の提案とは相当異なる考え示す

 しかし、同じ診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「sub acute患者の受け入れについては十分な評価をしてほしい。7対1の病床を減らすのであれば、地域包括ケア病棟の評価を据え置いた上で、外出しで出来高算定も認めるべき」と述べており、こちらは手術・麻酔の出来高評価を求めています。

 このような診療側の意見に対して、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)は「病院はそれぞれ経営戦略を持っている。7対1病棟を地域包括ケア病棟に転換していくことを制限するのは好ましくないのではないか」とコメント。また、日医代表の鈴木委員と日病代表の万代委員の間で意見が異なっている点に触れたところ、次のようなやりとりがありました。

●鈴木委員「大規模な急性期病院が地域包括ケア病棟を設置すると、地域医療連携の推進がかえって阻害されてしまう」

●白川委員「病院団体はどう考えているのか」

●万代委員「いろいろな考え方がある。鈴木委員が紹介した考えは、あくまで『例示』である。今後、さまざまな視点で議論していきたい」

●鈴木委員「地域包括ケア病棟を区分する考えは、日本医師会だけでなく、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)との合同提案である」

 このように診療側委員の間で相当な意見の相違があることが伺え、「地域包括ケア病棟における手術・麻酔を出来高評価とするのか」などについては、現時点で方向性が定まっていません。

 今後、診療側内部でどのような調整が行われるのか、さらに中医協の場で支払側がどのような見解を披露するのか、注意深く見守る必要があります。

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