13年度国民医療費は40兆円、高齢者医療費の25%占める「循環器系疾患」への対策充実を―厚労省



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 2013年度の国民医療費が、前年度に比べて8493億円・2.2%増加し40兆610億円になった―。このような状況が、厚生労働省が7日に公表した「国民医療費の概況」から明らかになりました。

国民医療費がついに40兆円の大台を超えた
国民医療費がついに40兆円の大台を超えた

 先にお伝えした「2014年度の概算医療費」(国民医療費のおよそ98%)でも医療費が40兆円兆円に極めて接近しており、「14年度の国民医療費は40兆円に乗ることが確実」とお伝えしましたが(関連記事はこちら)、それよりも早いペースで医療費が増加しているようです。

 安倍内閣は「経済と財政の再生」という両立の難しい課題に取り組んでおり、今回の「医療費40兆円」というデータが今後の施策にどのような影響を与えるのか注目されます。

「高齢化」と「医療技術の高度化」が医療費増加の主な要因

 国民医療費は「1年度内に保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用」を推計したもので、保険診療の対象とならない評価療養、選定療養、生殖補助医療、正常な妊娠・分娩に要する費用、健康診断・予防接種等の費用は含まれません。

 13年度の国民医療費は、初めて40兆円の大台に乗り、40兆610億円となりました。前年度に比べて8943億円・2.2%の伸びとなっています。

 1人当たりの国民医療費は31万4700円で、前年度に比べて7200円・2.3%増加しました。

 また、GDP(国内総生産)に対する国民医療費の比率は8.29%で、前年度に比べて0.3ポイント増加、NI(国民所得)に対する比率は11.06%で、こちらは0.8ポイント減少しました。

 国民医療費の伸び率は、07年度以降3%程度で推移していましたが、12年度は1.6%、13年度は2.2%と比較的低い水準に抑えられています。保険者だけでなく、医療機関も「平均在院日数短縮」や「重複・頻回受診の抑制」などを進めており、こうした努力が複合的に組み合わさった結果と考えられます。

国民医療費は増加を続けているが、平成24年度(2012年度)以降、伸び率が鈍化していることが分かる
国民医療費は増加を続けているが、平成24年度(2012年度)以降、伸び率が鈍化していることが分かる

 ところで医療費が増加する要因として、「人口の高齢化」「医療技術の高度化」などが考えられます。後者の「医療技術の高度化」については、医薬品や医療機器の公定価格を決定する中央社会保険医療協議会で「費用対効果評価」の試行導入に向けた議論が進んでいます(関連記事はこちら)。医療費の増加は、こうした議論を進める要素にもなり、16年度の次期診療報酬改定に向けた議論に注目していく必要があります。

 なお、医療費を誰がどのように負担しているかを見てみると、国が4分の1、地方が8分の1、事業主が2割、被保険者(国民)が3割弱、患者が1割強という状況です。

医療費は4分の1を国が負担し、地方が8分の1、事業主が2割、被保険者(国民)が3割弱、患者が1割強を負担している
医療費は4分の1を国が負担し、地方が8分の1、事業主が2割、被保険者(国民)が3割弱、患者が1割強を負担している

75歳以上の後期高齢者の医療費が膨らむ

 制度区分別に国民医療費のシェア見てみると、▽被用者保険(健保組合や協会けんぽ)が22.2%(前年度から0.1ポイント減)▽国民健康保険が24.0%(同0.3ポイント減)▽後期高齢者医療給付分(75歳以上)が32.7%(同0.5ポイント増)▽患者等負担が12.5%(同0.1ポイント減)―などとなっています。

制度別に見ると、後期高齢者の医療費が増加している
制度別に見ると、後期高齢者の医療費が増加している

 後期高齢者医療給付分のシェアが増加を続けていることがわかり、今後、高齢化がさらなる進展を続ける中で、このシェアがさらに拡大していくと考えられます。医療費の適正化に向けては「後期高齢者医療」が最大の本丸とされている所以です。

調剤医療費のシェアが拡大、次期改定でもターゲットに

 診療種類別に国民医療費のシェアを見てみると、▽医科が71.8%(同0.4ポイント減)▽歯科が6.8%(同0.1ポイント減)▽調剤が17.8%(同0.7ポイント増)▽訪問看護が0.3%(同0.1ポイント増)―などとなりました。

診療種類別に見ると調剤医療費が増加している
診療種類別に見ると調剤医療費が増加している

 調剤医療費が増加を続けていることが分かります。この点について、診療報酬改定を論議する中医協では「チェーン展開する大手薬局について、調剤報酬の適正化」を求める意見が診療側からも出ています。国家財政が厳しく、マイナス改定が続くと見込まれる中で、今後も「医療費のシェア争い」が激しくなると予想されます。

 なお、医科の内訳は、入院が37.4%(同0.2ポイント減)、入院外が34.4%(同0.2ポイント減)となっています。

65歳以上の医療費は、65歳未満の4倍

 年齢階級別に人口1人当たり国民医療費を見てみると、65歳未満では17万7700円(同600円・0.3%増)であるのに対して、65歳以上では72万4500円(同7300円・1.0%増)となりました。高齢者では若人に比べて医療費が4倍と高いことが分かります。

 診療種類別に見ると、次のような状況です。

▽医科では、65歳未満は12万2100円(同300円・0.2%減)だが、65歳以上は53万6100円(同1000円・0.2%増)で、高齢者が若人の4.4倍

▽歯科では、65歳未満は1万7900円(前年度から変化なし)だが、65歳以上は3万2300円(同500円・1.6%増)で、高齢者が若人の1.8倍

▽調剤では、65歳未満は3万2000円(同1100円・3.6%増)だが、65歳以上は12万7200円(同6200円・5.1%増)で、高齢者が若人の4.0倍

1人当たり医療費に着目すると、65歳以上では、65歳未満の4倍となっている
1人当たり医療費に着目すると、65歳以上では、65歳未満の4倍となっている

 高齢になると歯牙を喪失する人も多く、医科と歯科で高齢者と若人の医療費に特に大きな格差があることが分かりました。

 高齢化の伸展によって、高齢者が数・比率ともに増加します。さらに高齢者では1人当たり医療費が高いため、後期高齢者医療費が増加を続けているのです。

 ちなみに、高齢者の医療費が高い原因は、主に「受診回数」(外来では受診日数、入院では入院期間)が多い点にあると考えられており、厚労省は「在院期間の短縮」や「重複受診・重複投薬、頻回受診・投薬の是正」などにも力を入れています。

65歳以上では循環器系疾患が、医療費の4分の1占める

 傷病分類別に国民医療費のシェアを見てみると、依然として「循環器系」が20.5%(前年度から増減なし)と最も多く、次いで▽新生物13.5%(前年度から増減なし)▽筋骨格系及び結合組織7.8%(同0.2ポイント増)▽呼吸器系7.4%(同0.2ポイント減)▽損傷、中毒及びその他の外因の影響7.1%(同0.1ポイント増)―などとなりました。

 傷病による医療費のシェアは年齢によって若干異なり、次のようになっています。

▽65歳未満では新生物のシェアが最も高く(13.1%)、次いで「循環器系」11.7%、「呼吸器系」10.0%、「精神及び行動の障害」9.2%、「腎尿路生殖器系」7.2%と続く

▽65歳以上では循環器系のシェアが最も高く(26.5%)、次いで「新生物」13.8%、「筋骨格系及び結合組織」8.6%、「損傷、中毒及びその他の外因の影響」7.3%、「内分泌、栄養及び代謝」7.2%と続く

65歳以上と65歳未満では、傷病構造が異なっており、65歳以上では医療費の4分の1を「循環器系疾患」が占めている
65歳以上と65歳未満では、傷病構造が異なっており、65歳以上では医療費の4分の1を「循環器系疾患」が占めている

 こうしたデータを見ると、高齢者医療費の4分の1を占める「循環器系」疾患をターゲットにし、食生活をはじめとする生活習慣の改善による「高血圧」などの防止や、健診による早期の対策などに力を入れることが急務であると分かります。

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