今後の慢性期医療提供体制、医政・保険・老健の3局が合同で検討―療養病棟在り方検討会



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 介護療養病床は本当に廃止されるのか、看護配置4対1を満たさない療養病床をどうするのか―。慢性期医療の在り方について、厚生労働省を総合的な検討を始めました。

 厚労省は10日、「療養病床の在り方等に関する検討会」の初会合を開催。医政局、保険局、老健局の3局合同で開かれ、年末に向けて「慢性期医療の在り方」「慢性期の医療提供体制などの在り方」の選択肢を議論していきます。厚労省医政局地域医療計画課の北波孝課長は「このような機能を果たすためには、どの程度の人員配置が必要かなどまで示せればよい」と会合終了後にコメントしました。

 検討会の選択肢は、年明けから社会保障審議会において、医療提供体制を議論する「医療部会」や、介護保険制度の見直しを検討する「介護保険部会」に示され、そこでさらに議論を深め、必要な法律改正案(17年度の通常国会に提出する方向)などを策定していきます。

7月10日に開催された、「第1回 療養病床の在り方等に関する検討会」
7月10日に開催された、「第1回 療養病床の在り方等に関する検討会」

介護療養、看護配置など、療養病床には課題山積

 療養病床は医療法に規定される病床区分ですが、医療保険の適用を受ける「医療療養病床」と、介護保険の適用を受ける「介護療養病床」(介護療養型医療施設)に分けられます。

 後者の介護療養病床については、「そもそもが病院であり、長期療養にふさわしくないのではないか」との指摘があり、介護老人保健施設への転換などを進めるとともに、2017年度(平成29年度)末で廃止することになっています。

 しかし、15年度の介護報酬改定をめぐる論議の中では「医療必要度の高い要介護者も少なくない。介護療養病床が果たしている機能は今後も必要である」との意見が数多く出され、新たに「療養機能強化型の介護療養病床」(機能に応じてAとBに分けられる)が新設されました。

 このため「介護療養病床は今後どうなるのか」という疑問の声が医療・介護現場から強くなってきています。

 また、医療法では「療養病床の看護配置は4対1」となっていますが、診療報酬の基準に換算すると「20対1」となります。このため、病院全体で20対1を維持できない療養病床は、経過措置で2017年度(平成29年度)末までしか認められません。このため、多くの「25対1の療養病棟はどうなるのか」という疑問も強くなっています。

一般病床、療養病床(医療・介護)、老健施設、特養ホームそれぞれの人員配置基準。医療療養病床については看護配置に経過措置が設けられている。
一般病床、療養病床(医療・介護)、老健施設、特養ホームそれぞれの人員配置基準。医療療養病床については看護配置に経過措置が設けられている。

 さらに、2025年度における地域の医療提供体制像を描く地域医療構想の中では、慢性期医療需要を考えるに当たって「地域差の縮小」が非常に重要な視点となっています。さらに、地域差の縮小とは、すなわち「療養病棟などから在宅医療・介護へのシフト」を意味しており、在宅医療・介護の充実がポイントとなります。

 このように療養病床にはさまざまな課題があります。厚労省医政局の二川一男局長は「施設類型の見直しも含めた政策の選択肢を提示してほしい」と検討会委員に要望しており、総合的かつ抜本的な対策が検討される見込みです。

 また、北波課長は「療養病床には、現在、そこでの療養がふさわしくない人も入院している可能性がある。そういった方に適切な選択肢はないのかといった点を検討会で議論してほしい」と期待を寄せました。

 具体的な検討テーマについて厚労省保険局医療介護連携政策課の渡辺由美子課長は、次のようなたたき台を提示しています。

(1)慢性期医療の在り方

(例)▽病気と共存しながらQOLの維持・向上を目指す医療▽病気を治すだけでなく、本人や家族の意向も踏まえ、患者の生活全体を視野に入れた「治し、支える」医療▽尊厳をもって人生の最終段階を迎えることを支える医療

(2)慢性期医療の提供体制などの在り方

▼医療提供側に求められる機能の在り方

▼医療提供形態の在り方(療養病床のように「医療スタッフを内包して提供する形」と、在宅医療のように「住まいを拠点として医療を外から提供する形」に大別されるが、それぞれの提供形態の在り方や、選択肢を考える上での条件など(患者像など)をどのように考えるか

▼療養病床における医療などの在り方(療養病床で主として対応することが求められる患者像、その患者像を踏まえた療養病床における医療の在り方)

(例)▽病気と共存しながらQOLの維持・向上が図られるよう、在宅復帰や在宅生活の継続を支援する▽継続的な医学管理を行い、人生の最終段階においても穏やかな看取りを支える

(具体的な論点)▽人員体制の在り方▽施設や設備の在り方▽制度上の位置付けの在り方(医療法、介護保険法、報酬制度など)▽基盤整備計画上の位置付け(医療計画、介護保険事業計画)や施設などの整備に対する財政支援の在り方

▼療養病床以外の医療・介護サービス提供体制の在り方

介護療養からの転換、「老健以外の選択肢を」田中座長代理

 この日は初会合ということもあり、委員間の自由討議となりました。

 鈴木邦彦構成員(日本医師会常任理事)は「医療ニーズの高い要介護者を受け入れるため、介護療養病床は重要である。廃止を撤回し、存続させるべき」「慢性期医療需要の地域差は、地域特性に応じたものと考えられ、それは尊重していくべき」と述べ、現行政策の見直しを求めています。

 また嶋森好子構成員(慶應義塾大学元教授)は「介護療養と医療療養では、行われている医療に大きな差はないと私は見ている。両者の機能をしっかり分けていくことが必要であろう。また米国のナーシングホームのような施設類型の創設も視野に入れてはどうか」と提案しました。

特養ホーム、老健施設、介護療養病床、医療療養病床それぞれにおける医療行為の比較。嶋森委員は、このグラフについて「医療療養と介護療養には大きな差がない」と判断した
特養ホーム、老健施設、介護療養病床、医療療養病床それぞれにおける医療行為の比較。嶋森委員は、このグラフについて「医療療養と介護療養には大きな差がない」と判断した

 一方、池端幸彦構成員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長)は「一般病棟と療養病床の区分は不要なのではないか。両者の患者像は連続するものである」と提案しています。

 また、田中滋座長代理(慶應義塾大学名誉教授)や武藤正樹構成員員(国際医療福祉大学大学院教授)は「療養病床以外の医療・介護サービス提供体制」が重要であるとし、在宅医療や老人福祉施設・老人保健施設などにおける課題も検討テーマとすべきと主張。特に田中座長代理は「介護報酬の議論でも、老健施設や特養ホームでは、医療提供が困難な場面があると再三指摘される」とし、重要テーマであると強調しました。

 さらに、在宅医療の関係について池端委員や鈴木委員は「地域医療構想ガイドラインでは医療区分1の7割を在宅で対応するとしているが、現実的に不可能ではないか」と指摘。鈴木委員は「在宅医療だけでなく、診療所・中小病院を含めた施設を活用した日本型のシステムを構築する必要がある」と述べています。

慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する
慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する

 また田中座長代理は「介護療養病床から老健施設への転換を進めている。しかし、今から振り返ると、老健施設は在宅復帰を目指す施設だが、介護療養に入院する患者の多くは死亡退院しており、患者像が大きく異なっている。老健施設以外の複数の転換先を考える必要がある」とも指摘しています。

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