16年度の診療報酬改定、医療介護総合確保基金との役割分担などが重要ポイント―医療介護連携政策課の渡辺課長



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 2016年度の次期診療報酬改定に向けて、基本方針を今年の11月下旬から12月初旬に固める―。このようなスケジュールが、9日に開かれた社会保障審議会の医療保険部会に示されました。厚生労働省保険局医療介護連携政策課の渡辺由美子課長は、16年度改定では「地域医療介護総合確保基金との役割分担」や「社会保障・税一体改革における位置づけ」などが重要ポイントになると説明しました。

 すでに中央社会保険医療協議会では改定内容の議論が進んでいますが、基本方針の検討も間もなく本格化します。

7月9日に開催された、「第87回 社会保障審議会 医療保険部会」
7月9日に開催された、「第87回 社会保障審議会 医療保険部会」

11月下旬から12月初旬に改定基本方針を固める

 2006年度の中医協改革を受け、現在、診療報酬改定論議は次のような構造となっています。これは、かつて中医協に権力が集中しすぎ、診療報酬改定を巡って汚職事件が発生したことの反省を踏まえたものです。

(1)基本方針を社会保障審議会の医療部会・医療保険部会で策定する

(2)改定率を予算編成過程で内閣が決定する

(3)基本方針と改定率に沿って中医協で改定内容を検討する

2006年度(平成18年度)の診療報酬改定以降、(1)社会保障審議会で基本方針(2)内閣で改定率(3)中医協で改定内容―という分担構造になっている
2006年度(平成18年度)の診療報酬改定以降、(1)社会保障審議会で基本方針(2)内閣で改定率(3)中医協で改定内容―という分担構造になっている

 厚生労働省保険局医療介護連携政策課の渡辺由美子課長は、この日、16年度の次期改定においても同じ構造で改定論議を進めることを確認し、次のようなスケジュール感を明らかにしました。

▽今年夏以降に、医療保険部会と医療部会で基本方針の議論を開始し、11月下旬から12月初旬に基本方針を策定する

▽12月下旬に、内閣が予算編成過程で改定率を決定する

▽年明け1月中旬に、基本方針と改定率が中医協に示され、厚生労働大臣から改定案の調査・審議を行うよう諮問を行う

▽1月以降、具体的な診療報酬設定の調査・審議を行い、併せて公聴会・パブリックコメントを実施する

▽2月中旬に、中医協から厚労相に対して改定案を答申する

▽3月上旬に新たな診療報酬点数表や施設基準を告示し、併せて関連通知を発出する

▽4月1日に新点数表や施設基準を施行する

 もちろん、このスケジュールにおいて「厚労相からの諮問」などは形式的なものに過ぎず、実質的な改定論議は前倒しで進められます。

厚生労働省が示した、2016年度(平成28年度)診療報酬改定に向けた大まかなスケジュール
厚生労働省が示した、2016年度(平成28年度)診療報酬改定に向けた大まかなスケジュール
前回の2014年度(平成26年度)診療報酬改定における実際のスケジュール
前回の2014年度(平成26年度)診療報酬改定における実際のスケジュール

診療報酬と基金の特性生かし、医療体制を再構築

 渡辺課長は、16年度の次期改定においては「診療報酬と並ぶ財政支援ツールである『医療介護総合確保基金』との役割分担をどう考えていくか」が1つのポイントになると説明しました。

 医療介護総合確保基金(基金)は、14年6月から順次施行されている「医療介護総合確保推進法」に規定されたもので、かつて「新たな財政支援」制度と呼ばれたものです。財政規模は14年度904億円(医療分のみ)、15年度1628億円(医療分904億円、介護分724億円で、医療分は次の3事業に充てられます。

▽病床の機能分化・連携に関する事業

▽居宅などにおける医療の提供に関する事業

▽医療従事者の確保・養成に関する事業

地域医療介護総合確保基金の概要
地域医療介護総合確保基金の概要

 医療介護総合確保推進法は「医療提供体制の再構築」を柱の一つに掲げ、具体的な方策として病床機能報告制度の創設や、都道府県における地域医療構想の策定、基金の創設などを打ち出しました。

2014年6月から順次施行されている「医療介護総合確保推進法」の概要、地域医療介護総合確保基金もこの一環として創設された
2014年6月から順次施行されている「医療介護総合確保推進法」の概要、地域医療介護総合確保基金もこの一環として創設された

 一方、病院・病床の機能分化や連携を推進していくためには、医療機関の行動を極めて大きく左右する診療報酬を活用することも不可欠です。現に、14年度・12年度改定では7対1一般病棟入院基本料の施設基準が厳格化され、7対1病床が減少を始めています。

 診療報酬と基金のそれぞれの特性を生かして医療提供体制の再構築を進めていくことが求められており、16年度改定では両者の役割分担などが大きな論点となる見込みです。

基本方針は「4つの視点」と「重点課題」で構成

 前回の14年度改定から、診療報酬改定は「税と社会保障の一体改革」の重要パーツに位置付けられています。もちろん、医療介護総合確保推進法も一体改革の一環として策定・施行されたものです。

 その観点から考えると、16年度改定の次に控える「18年度の診療報酬・介護報酬の同時改定」や、18年度からの「第7次医療計画」「第7期介護保険事業計画」などに繋がる内容とすることが求められます。

2018年度には、診療報酬・介護報酬の同時改定や、第7次医療計画・第7期介護保険事業計画などが行われ、16年度の次期診療報酬改定もこれに向けた流の中で実施される
2018年度には、診療報酬・介護報酬の同時改定や、第7次医療計画・第7期介護保険事業計画などが行われ、16年度の次期診療報酬改定もこれに向けた流の中で実施される

 06年度以降、診療報酬改定の基本方針は、次の「4つの視点」を軸に、その時々における「重点課題」への対応策を盛り込む形で作成されました。16年度改定でも「4つの視点」が軸となる見込みで、更なる重点課題として▽地域医療構想との整合性をどう考えるか▽18年度の同時改定へどのような布石を行うのか―などが浮上しそうです。

▽充実が求められる分野(がん医療や認知症対策、救急・小児・周産期医療など)を適切に評価していく視点

▽患者などから見て分かりやすく納得でき、安心・安全で質の高い医療を実現する視点(医療安全や相談指導の支援など)

▽医療従事者の負担を軽減する視点

▽効率化の余地がある分野を適正化する視点(後発医薬品の使用促進や平均在院日数の短縮など)

 医療保険部会では、夏以降に本格的な基本方針論議が始まりますが、9日の会合では、菊池令子委員(日本看護協会副会長)から▽退院支援の充実(病院全体での支援体制構築や早期からの介入)▽認知症対応▽訪問看護の推進▽医療従事者の負担軽減―を基本方針に盛り込むべきとの意見が出されています。

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