がん対策推進基本計画の中間評価、6月10日の協議会で報告書とりまとめへ―がん対策推進協議会



Pocket

 がん対策推進基本計画の中間評価に向けた検討が大詰めを迎えています。20日に開かれた「がん対策推進協議会」には、これまでの委員から出された意見を踏まえた中間評価報告書案などが厚生労働省から示されましたが、委員からは「受動喫煙対策が十分に進んでおらず、分煙ではなく全面禁煙などを求める思い切った提言を行うべき」などの指摘も行われました。

 厚生労働省は、委員から最終的な意見を募り、6月10日開催の次回会合で中間評価報告書をとりまとめる考えです。

5月20日に開催された、「第50回 がん対策推進協議会」
5月20日に開催された、「第50回 がん対策推進協議会」

受動喫煙防止に向け「全面禁煙」を強調すべき

 国のがん対策は、概ね5年間を計画期間とする「がん対策推進基本計画」に沿って展開されています。現在は2012-16年を対象とした第2期基本計画に基づいた施策が動いており、第3期となる次期基本計画は17年6月に策定される予定です。

 第3期基本計画は厚生労働省の「がん対策推進協議会」で策定されますが、協議会では、まず現行の第2期基本計画の中間評価を行い、その結果を第3期基本計画に反映させることにしています。

 中間評価では、(1)全体目標についての進捗状況(2)重点的に取り組むべき課題(3)分野別施策(4)がん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項―の4本柱に沿って、目標に対する進捗状況や取り組み状況、さらに推進が必要な事項などが整理されます。

 (1)の全体目標については、「15年までの10年間で、75歳未満のがんの年齢調整死亡率を20%減少させる」という目標が達成できない見込ですが、「基本計画に基づく総合的ながん対策がスタートした07年を起点に、17年までの10年間を評価対象とすべき」との門田守人会長(がん研究会有明病院院長)らの指摘もあり、次のような2段構えとすることが厚労省から提案されています。(関連記事がん死亡率20%減の目標達成は困難、2段構えで評価する方向探る―がん対策推進協議会

▽中間評価では、既に基本計画で設定されている「05年から15年までの10年間の死亡率変化」という指標で達成状況を押さえ、次期基本計画の対策を今後検討していく

▽基本計画に沿った総合的ながん対策が始まった07年から17年までの10年間の死亡率変化という新たな指標によって、がん対策の効果を検証する

 全体目標が達成できない主な原因は、「喫煙率の低減」と「健診受診率の向上」が進んでいないところにあります。このため、中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は、(2)の重点事項の一つである「受動喫煙防止」に関して「空間分煙では緩い。今後は『全面禁煙を進めていくべき』と強く打ち出すべき」と提案しました。

 堀田知光委員(国立がん研究センター理事長)もこの提案に賛同し、「法規制や価格引き上げなどにも言及すべきかもしれない」との見解を述べています。

小児がん治療では、「地域連携」も推進すべき

 全体目標の「死亡率低減」は、がん治療のアウトカムに着目したものと言えます。この点、西山正彦委員(群馬大学医学系研究科医科学専攻病態腫瘍制御学講座病態腫瘍薬理学分野教授)は「部位別の5年生存率などを詳しく分析し、一部の病院だけで低下している場合でも、その理由などを探る必要があるのではないか」との考えを述べました。

 また、基本計画では「小児がん対策」も重要事項の一つに位置付けており、現在、北海道大学病院や京都大学医学部附属病院など15施設が「小児がん拠点病院」に指定され、症例の集約化などが進められています。

 しかし、小児がん患者の初回治療がどれだけ集約化されているのかを見ると、「小児がん新規患者のうち、小児がんを年間50例以上見ている施設で初回治療を受けた割合」は12年には22.9%にとどまっています。

 堀部敬三委員(国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター長)や池田恵一委員(静岡県立こども病院血液腫瘍科親の会「ほほえみの会」代表)は、この点を踏まえて「拠点病院での症例集約はもちろん推進しなければならないが、現状では、拠点病院と地域の医療機関との連携も同時に推進していくべきではないか」と指摘しました。

今後は、ライフステージに着目したがん対策が必要

 協議会では、中間評価と並行して「今後のがん対策の方向性」も検討しています。そこでは、▽将来にわたって持続可能ながん対策の実現▽すべてのがん患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会の構築▽ライフステージに応じたがん対策―の必要性が打ち出される予定です。

 このうち「ライフステージに応じたがん対策」とは、小児、AYA世代、壮年期、高齢者などで重視すべき事項が異なるという考え方に立ったものです。例えば、壮年期では「就労と治療との両立」が非常に重要ですし、高齢者では「入院による認知症の発症や重症化」「加齢による個体差の拡大」などに配慮した治療方法の選択が必要となります。

 この点、AYA世代とは「思春期」(Adolescent)と「若年成人」(Young Adult)を包括した世代のことですが、両者には異なる課題があるため、「各年代に応じた対策を検討していく必要がある」と指摘されています。

 なお、米国ではAYA世代を「15-39歳」と考えていますが、堀部委員からの「数字が一人歩きすることが懸念されるので、『思春期および若年成人』という記述にとどめるべき」との意見を受け、報告書から年齢の記述は削除されることになっています。

【関連記事】

がん対策の最大目標「死亡率の20%減少」、達成困難な状況に危機感―がん対策推進協議会
国内外のトップランナーが語る「がんに負けない社会」の作り方

Pocket