医師や看護師等の確保、前年度より向上するも、依然として大きな地域格差―2016年度立入検査結果



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 2016年度に医師配置の標準を満たしている病院は96.4%で前年度に比べて0.5ポイント向上、看護師・准看護師については99.4%で前年度から0.1ポイント向上しているが、地域別に見ると大きな格差がある―。

 このような状況が、厚生労働省が7月31日に発表した2016年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」から明らかになりました。

医師配置については年々改善しているが、北海道・東北で確認に大きな苦労

 都道府県都知事や保健所設置市の市長、特別区の区長は毎年度、医療法第25条に基づいて医療機関に対する立入検査を実施し、人員配置や構造設備などが医療法の規定に適合しているかどうかをチェックしています(2015・14年度の記事はこちら、13年度の記事はこちら、12年度の記事はこちら)。

 2016年度には、全8459病院(当時)のうち7914病院に対して立入検査が行われ、実施率は93.6%(前年度から1.2ポイント低下)となりました。

 まず医師の配置状況を見てみましょう。医療法では、▽一般病床は16対1(患者16人に対し1人、以下、同様)▽療養病床は48対1―以上などの医師配置の標準が定められています。

 この標準数を満たしているかどうかを見てみると、2016年度は7626施設・96.4%の病院でクリアしていることが分かりました。前年度に比べて0.5ポイント向上しています。2009年度以降の適合率を見ると、▼2009年度:90.0% →(1.8ポイント向上)→ ▼2010年度:91.8% →(0.7ポイント向上)→ ▼2011年度:92.5% →(1.1ポイント向上)→ ▼2012年度:93.6% →(0.9ポイント向上)→ ▼2013年度:94.5% →(1.0ポイント向上)→ ▼2014年度:95.5% →(0.4ポイント向上)→ ▼2015年度:95.9% →(0.5ポイント向上)→ ▼2016年度:96.4%—となっており、年々改善していることが再確認できます。

 地域別に見ると、近畿(98.5%、前年度に比べ0.2ポイント向上)や関東(97.8%、同0.1ポイント向上)、東海(97.6%、同0.4ポイント低下)では高いものの、北海道・東北では91.4%(同1.5ポイント向上)、北陸・甲信越では95.6%(同1.8ポイント向上)、四国では95.7%(同0.4ポイント向上)と若干低く、地域間の格差があることが分かります。

ところで「医師の働き方改革」に関する議論がまとまり、2024年4月から医師にも罰則付きの時間外労働上限が設定されます。「これまでの医療提供体制・量を維持するためには、医師の増員が不可欠」との指摘も強くあります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

医療法標準以上の医師配置を行えていない病院の割合は、全国では3.6%ですが、ブロック別に見ると▼北海道・東北:8.6%▼関東:2.2%▼北陸・甲信越:4.4%▼東海:2.4%▼近畿:1.5%▼中国:4.1%▼四国:4.3%▼九州:2.9%―となっており、北海道・東北で「医師確保が難しい」状況が伺えます。

「医師の働き方改革」では、病院の再編・統合が重要テーマの1つなっています。大規模化により、地域の医療資源を集中することで、医師1人当たりの負担が軽減できるためです。医師確保が困難な北海道・東北ブロックや北陸・甲信越ブロックなどでは、今後、病院の再編・統合が加速する可能性がありそうです。

 
 また病床規模別に見てみると、一般病院では▼500床以上:99.4%(前年度に比べて0.5ポイント向上)▼400-499床:98.3%(同0.4ポイント向上)▼300-399床:97.6%(同0.2ポイント低下)▼200-299床:97.2%(同0.3ポイント低下)▼150-199床:96.4%(同0.4ポイント向上)▼100-149床:96.6%(同1.4ポイント向上)▼50-99床:95.8%(同1.1ポイント向上)▼20-49床:92.4%(同0.7ポイント向上)―となっています。大規模病院と小規模病院で医師確保に尽力した状況が伺え、中規模の病院で医師確保の苦労が大きな状況が伺えます。医師の働き方改革などで、どのような影響が出るのか、今後の動向にさらに注目する必要があるでしょう。
2016年度立入検査結果1 190731 
 
 なお、一般病院のうち9病院では、医療法標準の50%に満たない医師しか配置できていません(一般病院の0.1%)。「標準数の半分未満の医師しか配置できていない」一般病院は、前年度に比べて2施設、前々年度に比べて3施設増加している点が気になります。

関東ブロックのみで看護師等の適合率が前年度からダウン

 次に、看護師・准看護師(以下、看護師等)の配置状況を見てみましょう。医療法では、▽一般病院の一般病床は3対1▽同じく療養病床は4対1(2017年度まで6対1を認める経過措置あり)▽特定機能病院は2対1―以上といった標準配置数が定められています(病棟)。

 この適合状況を見ると、2016年度は99.4%の病院で医療法標準を満たしています(前年度から0.1ポイント向上)。2009年度以降の適合率を見ると、▼2009年度:99.2% →(0.2ポイント向上)→ ▼2010年度:99.4% →(増減なし)→ ▼2011年度:99.4% →(0.4ポイント低下)→ ▼2012年度:99.0% →(0.2ポイント低下)→ ▼2013年度:98.8% →(0.5ポイント向上)→ ▼2014年度:99.3% →(増減なし)→ ▼2015年度:99.3% →(0.1ポイント向上)→ ▼2016年度:99.4%—となっています。増減を繰り返しており、多くの病院で「看護師等確保に苦労している」状況が伺えます。

 地域別に前年度からの適合率の推移を見ると、関東ブロック(0.2ポイント低下)のみで低下しており、その背景などをより詳しく分析する必要がありそうです。

 また、適合率の高い地域は、▼北陸・甲信越:99.7%(前年度に比べて0.7ポイント向上)▼東海:99.7%(同0.4ポイント向上)▼九州:99.7%(同増減なし)—、逆に低い地域は▼関東:98.9%(同0.2ポイント低下)▼四国:98.9%(同0.3ポイント向上)―となっており、「関東ブロックにおける、看護師等の適合率の低さ、前年度からの悪化(低下)状況」が際立っています。

 病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:100.0%(前年度から増減なし)▼400-499床:99.7%(同0.1ポイント向上)▼300-399床:99.6%(同0.2ポイント低下)▼200-299床:99.9%(同増減なし)▼150-199床:99.8%(同0.2ポイント低下)▼100-149床:99.6%(同0.1ポイント向上)▼50-99床:99.1%(同0.6ポイント向上)▼20-49床:98.1%(同0.3ポイント低下)―となっています。中小規模の病院で看護師等確保に苦戦している状況を再確認できます。
2016年度立入検査結果2 190731
 
 なお、看護師等を標準の50%未満しか配置できていない病院は、2015年度には解消しましたが、2016年度には3病院発生しています(一般病院)。看護師等の配置不足は、個々の看護師等の負担増に直結する(50%未満であれば、単純計算で100%病院の2倍以上の負担となっている計算である)ため、地域全体による支援(個々の病院の努力には限界もある)を充実していくことが重要でしょう。

薬剤師配置は年々改善しているが、中国や九州では確保に困難も

 薬剤師については、医療法上、▽一般病院の一般病床は70対1▽同じく療養病床は150対1▽特定機能病院は30対1―などといった標準配置数が定められています(病棟)。

 この適合状況を見てみると、2016年度は96.6%の病院で医療法標準を満たしていることが分かりました。前年度と比べて、0.3ポイント改善しています。薬剤師配置も医師と同じく年々改善していることが分かります。

 地域別に見ると、▼中国(前年度から1.4ポイント低下)▼関東(同0.2ポイント低下)―の2ブロックで適合率が前年度よりも悪化(低下)しています。また、適合率が高いのは▼近畿:98.8%(前年度から0.1ポイント向上)▼東海:97.7%(同0.1ポイント向上)▼関東:97.6%(同0.2ポイント低下)—、逆に低いのは▼中国:94.2%(同1.4ポイント低下)▼九州:94.3%(同0.4ポイント向上)▼北海道・東北:95.8%(同1.2ポイント向上)—という状況です。

 
 病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:99.7%(前年度に比べて0.5ポイント向上)▼400-499床:99.3%(同0.4ポイント向上)▼300-399床:99.0%(同0.4ポイント向上)▼200-299床:98.0%(同0.5ポイント低下)▼150-199床:97.1%(同0.1ポイント低下)▼100-149床:97.5%(同0.8ポイント向上)▼50-99床:96.5%(同0.3ポイント低下)▼20-49床:93.8%(同0.4ポイント向上)―となりました。小規模病院で薬剤師確保が困難な状況が再確認できます。
2016年度立入検査結果3 190731
 
  
 なお、病院全体で法令遵守の度合いが芳しくない項目は、低い順に(1)職員の健康管理(適合率92.7%、前年度から0.1ポイント向上)(2)医療法許可の変更(同95.6%、同0.1ポイント向上)(3)医薬品安全管理責任者による手順書に基づく業務の定期的な確認の実施(同96.2%、同1.6ポイント向上)(4)医薬品の管理(同96.4%、同0.1ポイント向上)(4、同率)医師数(同96.4%、同0.5ポイント向上)―などといった項目です。順位に大きな変動はありませんが、適合率は前年度に比べて全般に「向上」傾向にあり、医療機関の努力が伺えます。

  
 

 

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