2017年度の社会保障給付費120兆2443億円、うち介護給付がついに10兆円の大台に―2017年度社会保障費用統計



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 2017年度の社会保障給付費は過去最高の120兆2443億円で、前年度に比べて1兆8353億円・1.6%の増加となった。とくに「介護」給付が前年度に比べて4.1%増加し、ついに10兆円の大台に乗った―。

 国立社会保障・人口問題研究所が8月2日に公表した2017年度の「社会保障費用統計」から、こういった状況が明らかになりました(社人研のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら、前々年度の記事はこちら)。次期介護保険制度改革に向けた論議が社会保障審議会・介護保険部会で進んでいる中で、こうした数字が議論にどう影響を与えるのか注目する必要がありそうです。

 また施設整備費などを含めた「社会支出」は、2017年度には1兆9722億円・1.6%増加の124兆1837億円となりました。

介護給付費は前年度比4.1%増の10兆1016億円に、介護保険制度改正への影響は

 社会保障費用統計は、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など社会保障制度に関する1年間の支出(社会保障費)を、▼OECD(経済協力開発機構)基準による「社会支出」▼ILO(国際労働機関)基準による「社会保障給付費」—の2通りで集計したものです。前者の「社会支出」(OECD基準)は、後者の「社会保障給付費」(ILO基準)に比べて、施設整備費など直接個人にわたらない支出も集計範囲に含めています。

 まず、我が国において戦後間もなくから集計されている後者の「社会保障給付費」(ILO基準)について見てみましょう。

 2017年度の社会保障給付費は120兆2443億円で、前年度に比べて1兆8353億円・1.6%の増加となりました。GDP(国内総生産)に対する社会保障給付費の割合は21.97%で、前年度に比べて0.09ポイント低下しました。2012年度→13年度→14年度→15年度まで低下を続け、2016年度には増加を示しましたが、再び低下に転じています。

 国民1人当たりの社会保障給付費は94万9000円で、前年度に比べて1万6200円・1.7%増加しています。また、1世帯当たりで見ると234万7600円で、前年度に比べて4万4300円・1.9%の増加となっています。

 社会保障給付費を「部門」別に見てみると、年金給付が最も多く54兆8349億円(前年度比0.8%増)、次いで医療給付39兆4195億円(同1.6%増)、介護対策給付10兆1016億円(同4.1%増)となりました。社会保障給付費全体に占める割合(シェア)は、▼年金:45.6%(同0.3ポイント減)▼医療:32.8%(同増減なし)▼介護8.4%(同0.2ポイント増)—という状況です。高齢化を背景に介護給付費の伸びが大きく、ついに10兆円の大台に乗りました。
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 また社会保障給付費を「機能」別に見てみると、高齢者給付が最も多く56兆5211億円(前年度比1.5%増)で、給付費全体の47.0%(同増減なし)を占めています。次いで保健医療の37兆7436億円(同1.7%増)が大きく、給付費の31.4%(同増減なし)を占めました。前年度に比べて「家族」給付(同8.3%増)、「障害」給付(3.4%増)が大きく増加しています。

 
 年金制度については、給付費の伸びを「支え手」(現役世代)の減少などに応じて調整するマクロ経済スライドの導入や、支給開始年齢の延伸などにより、一定程度、高齢化を吸収する仕組みが導入され、伸びも鈍化しています。その一方で介護保険制度では、こうした仕組みがなく、高齢者の増加により給付費がそのまま増加していきます。現在、2021年度からの第8期介護保険事業(支援)計画に向けた「介護保険制度改正」論議が社会保障審議会・介護保険部会で進んでおり、「2017年度に給付費が10兆円の大台に乗り、今後も増加していく」という点も踏まえた「給付と負担の見直し」論議などが秋以降に本格的に行われると予想されます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

また、医療については、極めて高額な医薬品等の保険適用が相次いでおり、やはり「給付の在り方」に関する議論がそう遠くない将来、本格的に行われると予想されます(関連記事はこちら)。
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 なお、社会保障財源を見てみると、前年度に比べて3.7%・5兆441億円増加しています。財源の構成(シェア)を見ると、▼社会保険料:50.0%(前年度比0.5ポイント減)▼公費:35.3%(同0.1ポイント減)▼その他収入:14.7%(同1.3ポイント増)—となりました。「その他収入」の中でも、資産収入(公的年金制度の資産運用収入、株式投資など)の増加が目立ちます(前年度比36.7%増)が、「安定財源」とは言えない点に留意が必要です。
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施設整備費なども加味した社会支出、前年度比1.6%増の124兆1837億円に

 次に、OECD基準に基づく「社会支出」を見てみましょう。先進諸国で使用されている指標で、国際比較を行う場合にはこちらが有用です。

 冒頭で述べたとおり、社会支出は社会保障給付費よりも広範囲をカバーしており、国民個々人への直接給付ではない「施設整備費」なども含まれています。2017年度には、前年度に比べて1兆9722億円・1.6%増加の124兆1837億円となりました。

 国民1人当たりで見ると98万100円(前年度に比べて1万7300円・1.8%増)、1世帯当たりで見ると242万2500円(同4万7200円・2.0%増)となっています。

 社会支出を政策分野別に見ると、▼高齢:56兆9399億円・全体に占めるシェア45.9%(前年度比1.5%増・シェアの増減なし)▼保健:41兆8713億円・33.7%(同1.7%増・シェアの増減なし)▼家族:8兆6601億円・7.0%(同7.3%増・シェア0.4ポイント増)▼遺族:6兆5616億円・5.3%(同0.3%減・シェア0.1ポイント減)―などという状況です。
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 またGDPに占める社会支出の割合は22.69%(前年度比0.08ポイント増)、国民所得(NI)に占める割合は30.72%(同0.52ポイント増)となりました。

我が国における社会支出の対GDP比(22.69%)は、英国(2015年度22.66%)とはほぼ同水準ですが、▼フランス(2015年度32.16%)▼ドイツ(同27.04%)▼スウェーデン(同26.74%)—といった欧州の大陸諸国に徐々に近づいてきているように見えます。
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