非常用電源設備を確保・点検している病院は4-7割止まり、災害拠点病院のBCP策定は近く100%達成―厚労省



Pocket

 病院における非常用電源設備の確保は5-8割であるが、定期点検等を適切に実施している割合は4-7割程度にとどまる。また災害拠点病院においては、今年(2019年)中にすべてでBCP(業務継続計画)策定が完了する見込みである―。

 こういった状況が、厚生労働省が7月31日に公表した「病院の非常用電源の確保及び点検状況調査の結果」(厚労省のサイトはこちら)と「病院の業務継続計画(BCP)策定状況調査の結果」(厚労省のサイトはこちら)から明らかになりました。

非常用電源、病院の5-8割で確保済み、ただし点検実施は4-7割にとどまる

 昨年(2018年)には「北海道胆振地震」や「西日本豪雨」などが、また今年(2019年)には九州地方で豪雨が相次ぐなど、大規模な自然災害が発生する中で、「病院等の体制整備」が極めて重要であると再確認されています。

 災害時には、入院患者の安全確保はもちろん、傷病患者の受け入れが通常よりも増大するとともに、地域によっては「一時的な避難場所」の機能も求められます。

 とくに、2018年6月に発生した大阪府北部地震の際には、「非常用電源に係る法定点検を実施していない病院がある」ことが判明。直後の2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、北海道全域が停電する事態が生じ、病院における「電源」「水」確保の重要性が改めて認識されました。
 
 あわせて「電源」「水」に限らず、非常時に医療提供機能をどのように確保するか(職員の出勤等も難しくなる)という計画(業務継続計画、事業継続計画、BCP)を平時に策定し、周知・訓練しておくことも極めて重要性が高いことが昨今頻発する自然災害の中で再認識されています。

 そうした中で厚労省は、病院における(1)非常用電源の確保・点検状況(2)業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)策定状況―について調べ、その結果を公表しました。

 まず(1)の「非常用電源の確保・点検状況」を見ると、昨年(2018年)8月1日時点の非常用電源の点検を実施している病院の割合は、次のような状況です。

▽電気事業法に基づく非常用電源確保:回答7267病院中6754病院(92.9%、全8392病院に対する割合は80.5%)
▽電気事業法に基づく非常用電源の点検:非常用電源保有6754病院中6191病院(91.7%、全8392病院に対する割合は73.8%)

▽消防法に基づく非常用電源確保:回答6779病院中6446病院(95.1%、全8392病院に対する割合は76.8%)
▽消防法に基づく非常用電源の点検:非常用電源保有6446病院中6069病院(94.2%(点検実施だが未報告を加えると96.5%)、全8392病院に対する割合は72.3%(同74.1%)

▽建築基準法に基づく非常用電源確保:回答6788病院中4120病院(60.7%、全8392病院に対する割合は49.1%)
▽建築基準法に基づく非常用電源の点検:非常用電源保有4120病院中3695病院(89.7%(点検実施だが未報告を加えると92.7%)、全8392病院に対する割合は44.0%(同45.5%))
2018年非常用電源確保点検状況 190731
 
 電気事業法では、設置している発電設備について保安規定の定めに基づいた▼日常巡視▼日常点検▼定期点検▼精密点検―を行うことを、消防法では建物の種類・延べ床面積に応じて6か月ごと、あるいは1年ごとに発電設備の▼機器点検▼総合点検―を行うことを、建築基準法では、概ね6か月から1年に一度、発電設備の▼外観点検▼性能点検―を行うことを義務付けています。

 今回の調査では、病院全体の過半数から4分の1で、こうした点検を怠っている可能性のあることが分かりました。自然災害はいつ生じるか誰も予測できません。早急な非常用電源の確保と点検実施が求められます。

災害拠点病院、2019年中にBCP策定割合は100%を達成できる見込み

 また(2)の「BCP策定状況」を見ると、昨年(2018年)12月1日時点では▼病院全体:25.0%▼災害拠点病院:71.2%▼救命救急センター:66.7%▼周産期母子医療センター:30.9%―という状況です。今年5月の厚労省「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」に報告された速報値と変わっていません(関連記事はこちら)。

 災害拠点病院については、今年(2019年)4月1日から義務付け(2018年度から指定要件化(義務付け)され、ただし2019年3月31日までに策定することを前提に指定継続が可能とされている)されており、昨年12月1日にはBCPが策定されておらずとも「指定要件を満たしていない」とは判断できません。
救急災害医療提供体制検討会(1)2 190523
 
ただし、検討会委員からは「災害拠点病院では思ったよりもBCP策定状況が低く驚きでる」との指摘も出ており、厚労省はBCP未策定等病院(245病院、未回答を含む)を対象に「完全義務付けとなった2019年4月1日以降の状況」を再調査(関連記事はこちら)。それによると、241病院が今年(2019年)4月1日時点でBCP策定済みであり、ほか▼2019年6月にBCP策定が完了:1病院▼2019年7月にBCP策定が完了:1病院▼2019年8月2日にBCP策定が完了予定:1病院▼2019年中に災害拠点病院の指定を返上する予定:1病院―となっており、「災害拠点病院におけるBCP策定割合」は今年(2019年)中に100%となる見込みです。
2018年BCP策定状況 190731

   
 

 

MW_GHC_logo

 

【関連記事】

救急救命士の業務場所・範囲の拡大に向けた検討進む、病院救急車の活用も重要論点―救急・災害医療提供体制検討会(2)
災害拠点病院の医療機能維持に必要な燃料・水確保のため、指定要件見直し―救急・災害医療提供体制検討会(1)
救急救命士の業務場所、法改正によって「医療機関」にも拡大してはどうか―救急・災害医療提供体制検討会
電源・水の確保が不十分な災害拠点病院、緊急点検し体制整備を―救急・災害医療提供体制検討会
災害医療の充実に向け、DMAT事務局体制の強化・EMISの改善を―救急・災害医療提供体制検討会

災害拠点病院、業務継続計画を立て、被災時を想定した訓練の実施を—厚労省

 
医療計画中間見直しに向け、2019年中に指標追加などの見直し方向を固める―医療計画見直し検討会
2020年度の「第7次医療計画中間見直し」に向け、5疾病5事業等の進捗状況を確認―医療計画見直し検討会

 
2019年度予算案を閣議決定、医師働き方改革・地域医療構想・電子カルテ標準化などの経費を計上

2018年度からの医療計画、5疾病・5事業などの政策循環を強化し、介護保険計画との整合性確保を—厚労省
在宅医療などの必要量、一般病床における資源投入量の少ない患者をどう考えるか―医療計画見直し検討会(2)
地域医療構想調整会議、春にはデータ用いた地域分析、夏には不足する機能補填の具体論を―医療計画見直し検討会(1)
地域医療構想調整会議を3か月に1回程度開催し、具体的な機能分化の議論を—医療計画見直し検討会(2)
2018年度からの在宅医療、「療養病床の医療区分1患者」の7割など見込んで整備—医療計画見直し検討会(1)
医療連携の推進、介護施策との整合性確保などを柱とする第7次医療計画の方向性固まる―医療計画見直し検討会
第7次医療計画の作成指針の議論が大詰め、厚労省が叩き台示す―医療計画見直し検討会
5疾病・5事業、2018年度からの第7次医療計画で「指標」も含めて見直し―厚労省・医療計画検討会(2)
医療資源投入量の少ない患者、基準病床数の「平均在院日数短縮」で勘案―厚労省・医療計画検討会(1)
都道府県の脳卒中・急性心筋梗塞対策、予防や回復期・慢性期のリハビリなども重視―厚労省・医療計画検討会
救急搬送患者の受け入れ実績が芳しくない3次・2次救急には何らかの対応も―厚労省・医療計画検討会
2018年度からの医療計画、CT・MRIの配置状況や安全確保状況なども考慮―厚労省・医療計画検討会(2)
次期医療計画での基準病床数の算定式、平均在院日数の動向は地域別に考えるべきか―厚労省・医療計画検討会(1)
5疾病・5事業は第7次医療計画でも維持、肺炎は脳卒中対策などの中で勘案―厚労省・医療計画検討会(2)
2次医療圏、5疾病・5事業それぞれの特性も踏まえた設定を―厚労省・医療計画検討会(1)
疾病ごと・事業ごとの医療圏設定推進など、2018年度からの第7次医療計画に向けて検討―厚労省・医療計画検討会

 
災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率、2018年9月には90.7%に向上も、地域別のバラつきあり―厚労省
災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率、2017年には89.4%―厚労省
災害拠点病院、業務継続計画を立て、被災時を想定した訓練の実施を—厚労省
災害拠点病院・救命救急センターの耐震化率は82.2%―14年「病院の耐震改修状況調査」結果

Pocket