回復期リハビリ病棟から退棟後の医療提供、どのように評価し推進すべきか―入院医療分科会(3)



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 回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟を退棟した患者について、リハビリ等の医療が必要なケースがあり、実際に提供されている。回復期リハビリ病棟での疾患別リハビリにより患者の機能は退棟までに相当程度改善しており、退棟後も機能を維持・改善するためにどのような医療提供が必要で、これをどう評価していくべきか―。

 7月25日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、こういった議論も行われました。

7月25日に開催された、「2019年度 第5回 入院医療等の調査・評価分科会」
7月25日に開催された、「2019年度 第5回 入院医療等の調査・評価分科会」

回復期リハビリ病棟の実績評価要件、多くの病院で大幅にクリア

 7月25日の入院医療分科会では、▼DPC/PDPS等作業グループにおける議論の状況報告▼2018年度診療報酬改定の影響に関する調査・課題等の整理(地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟など)―が議題とされ、ここでは回復期リハビリテーション病棟に焦点を合わせます( DPC、地域包括ケア病棟に関する議論については既にお伝え済み、関連記事はこちらこちら))。

 
 回復期リハビリ病棟入院料については、2018年度の前回診療報酬改定で次のような見直しが行われました(関連記事はこちら)。

▽主に「リハビリテーション実績指数」(リハビリの効果に着目したアウトカム指標)に着目して、報酬を細分化する(従前の入院料1-3を、リハビリテーション実績指数の要件を課した新入院料1・3・5に、要件を課さない新入院料2・4・6に細分化する)

▽入院料の報酬改革の一環として、▼重症者(日常生活機能評価10点以上)割合▼重症者における退院時の日常生活機能評価(改善度合いを見る)▼自宅等退院割合▼リハビリテーション実績指数―を実績評価部分とし、入院料1-4(リハビリテーション実績指数要件を加えれば入院料5も)において実績評価を要件とする

▽入院料1について、「管理栄養士」配置を努力義務とし、「リハビリ計画書への栄養項目記載」を義務とする
2018年度診療報酬改定(回復期リハ1) 180305

2018年度診療報酬改定(回復期リハ2) 180305
入院医療分科会(3)1 190725
 
  
こうした見直しに病院側がどれほど対応できているかを見ると、次のような状況です。

▽重症者割合は、入院料1・2(3割以上が必要)では基準値の30%以上を、入院料3・4(2割以上が必要)では基準値の20%以上を概ねクリアできている

▽重症者における退院時の日常生活機能評価については、入院料1・2(3割以上の患者で4点以上の改善が必要)および入院料3・4(3割以上の患者で3点以上の改善が必要)ともに基準値を大きくクリアできている
入院医療分科会(3)3 190725
 
▽リハビリテーション実績指数については、▼入院料1(37以上が必要)▼入院料3(30以上が必要)▼入院料5(30以上が必要)―のいずれでも基準値をクリアするとともに、要件化されていない▼入院料2(2018年度は32.5)▼入院料4(同31.1)▼入院料6(同20.1)―で相当程度高い実績をもち、さらに2017年度から18年度にかけていずれも向上している
入院医療分科会(2)3 190607
 
▽管理栄養士配置については、努力義務が課されている入院料1では82%、努力義務すらない入院料でも相当程度配置されている(30.0%から50.0%)
入院医療分科会(3)2 190725
 
▽リハビリ計画書への栄養項目の記載については、義務化されている入院料1では100%なされるとともに、義務化されていない入院料でも相当程度実施されている(50.0-69.2%)(ただしN数が少ない点に留意)
入院医療分科会(3)6 190725

 こうした状況を踏まえて、2020年度の次期改定で「要件の厳格化や緩和は必要か」を議論していきます。この点、松本義幸委員(健康保険組合連合会参与)は「例えば管理栄養士の配置は相当程度進んでいるようだ。入院料1では『努力義務』を『義務』へ、他の入院料でも『努力義務』を課すことを検討すべき」と提案しています。

診療報酬では、もっぱら「試験的に点数や施設基準、算定要件を設定し、その後の届け出状況や算定状況を見ながら厳格化が必要か、緩和が必要かなどを議論していく」ため、松本委員の指摘には頷ける部分もあります。ただし、今般の管理栄養士については、地域によって確保の難易度大きく異なり(都市部では採用が比較的容易だが、地方では極めて困難)、日本全国の配置状況のみを見て「厳格化」を判断するのは時期尚早とも言えます。より詳細なデータを見た検討が必要です。

回復期リハビリ病棟等を退棟した後、介護サービス受給までの「繋ぎ」を強化すべきでは

また7月25日の入院医療分科会では、厚労省から「退棟後の治療」に関するデータや論点が示されています。

回復期リハビリ病棟では、急性期後の脳卒中・大腿骨頸部骨折などの患者を受け入れ、集中的なリハビリを提供し、在宅復帰を促すことが求められています。この点、現場には「退棟後のフォローが重要である」との思いがあるようです。回復期リハビリ病棟を退院したあと、適切なフォローをしなければ、一定期間経過後に入棟時と同様の状況で再入棟するケースもあり、一部の回復期リハビリ病棟では「手弁当」で退院後フォローを実施していました。

このテーマは2018年度の前回診療報酬に改定に向けた入院医療分科会論議でも浮上しており、「回復期リハビリ病棟を退棟した日から起算して3か月以内の患者(在棟中に回復期リハビリ病棟入院料を算定した患者のみ、医療機関に入院中の患者・介護老人保健施設に入所中の患者を除く)」などについて、疾患別リハビリ料の算定上限(▼運動器リハ:150日▼脳血管疾患等リハ:180日▼廃用症候群リハ:120日▼心大血管疾患リハ:150日▼呼吸器リハ:90日)―の対象外とするなどの見直しが行われています(関連記事はこちらこちら)。

この点、退棟後にもリハビリが必要な患者は、地域包括ケア病棟では3割、回復期リハビリ病棟では6割にのぼり、実際に「退棟後1週間以内にリハビリを実施している」患者の割合は、地域包括ケア病棟・回復期リハビリ病棟ともに約5割に達しています。
入院医療分科会(3)4 190725
 
また退棟後に実施される医療・介護サービスとしては、外来診療を除けば(通常、退棟後には、ほとんどの患者で外来診療が予定される)、▼通所リハビリ▼通所介護▼福祉用具貸与―などの公的介護保険サービスが多くなっています。
入院医療分科会(3)5 190725

 
こうしたデータを踏まえて神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、「回復期リハビリ病棟と、在宅介護サービスとの繋ぎを強化する必要があるのではないか。病棟のリハビリ専門職が患者宅を訪問して、一定のリハビリ提供や指導を行うことなどを強化すべきではないか」と提案しています。

 
 回復期リハビリ病棟を退棟した患者について、「入棟時から退棟時にかけてのFIM得点の変化」を見ると、▼脳血管疾患等の患者では1-10点が最多▼多発骨折の患者では11-20点が最多―などの状況が分かっており、いずれの状態の患者でも「回復期リハビリ病棟における濃密なリハビリで、FIM得点が改善、つまり機能回復が実現できている」ことが再確認できます。

 こうした効果が退棟後も維持されなければ、回復期リハビリ病棟におけるリハビリ専門職員および患者の努力は十分に報われません。2018年度改定の効果(回復期リハビリ病棟退棟後患者へのリハビリがどの程度行われ、どの程度のADL維持・改善につながっており、回復期リハビリ病棟への再入棟防止をどれだけ抑止しているかなど)も可能な限り踏まえ、「退棟後のリハビリを含む医療提供」をより積極的に評価する方向で検討が行われることに期待が集まりそうです。

   
 

 

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