介護医療院への転換手続き簡素化、移行定着支援加算の算定可能期間延長を―日慢協・武久会長



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 介護療養や医療療養などから介護医療院に転換するにあたり、自治体の審査手続きなどが極めて煩雑・膨大であり、長い時間がかかる。この9月(2019年9月)に転換を申請したとしても、来年3月(2020年3月)までの転換認可は難しい。手続きを簡素化・簡略化するとともに、【移行定着支援加算】の算定可能期間を少なくとも2年間(2023年3月末まで)延長すべきである―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長、日本介護医療院協会の鈴木龍太(鶴巻温泉病院理事長)は7月18日の記者会見で、こう言った要望を厚生労働省に行う考えを明らかにしました(関連記事はこちら)。

7月18日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長
7月18日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長
 

医療療養から介護医療院への転換、市町村に丁寧に説明し、理解を求めよ

 介護医療院は、▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ新たな介護保険施設として創設されました。設置根拠が消失する「介護療養病床」(介護療養型医療施設)や「病院全体で4対1看護配置などを満たさない医療療養病床」の有力な転換先になると見られているほか、「医療職・看護職が常駐しており、看取りニーズに十分応えられる」施設としても注目されています。

 しかし、厚労省の発表によれば、【介護医療院】は2018年3月末時点で150施設・1万28床にとどまっており、また▼岩手県▼宮城県▼新潟県▼滋賀県▼和歌山▼宮崎県—では、この時点でゼロ床という状況です(関連記事はこちら)。
介護医療院の開設状況(2019年3月末)
 
 このように転換が思うように進まない背景には、次のような点があると武久日慢協会長・鈴木介護医療院協会会長は指摘します。

▽転換手続きに大きな手間と時間がかかる

▽医療療養から介護医療院への転換について、厚労省は「総量規制」の枠外として転換促進姿勢を明確にしているが、「介護保険料の高騰」を危惧して、これを拒否する市町村がある

 
 両会長は、「介護療養等から介護医療院への転換は、厚労省老健局の一大事業であるが滞っている。当協会としても院への転換を促進したい」とし、転換促進に向けた対応をとるよう厚労省に要望する考えを明らかにしました。同日の日慢協理事会で了承された内容です。

 まずは転換手続きの簡素化・簡略化が必要と両会長は指摘します。手続きに時間がかかる理由には、自治体の担当部門が不慣れであることや、求められる書類が膨大であることなどがあげられます。日慢協の池端幸彦副会長は「転換であるにもかかわらず、あたかも『新設』のように詳細な図面等が求められ、その準備も病院側には大きな負担になっている」と指摘し、早急に簡素化・簡略化を行うべきと強調しています。

 
 このように転換手続きに時間がかかるため、両会長は「この9月(2019年9月)に転換申請を行ったとしても、転換認可が来年3月(2020年3月)までに下りないケースが相当数出てくる」と見通します。この場合、【移行定着支援加算】をフルで(1年間)取得することが不可能になるという問題が生じます。

2018年度の介護報酬改定では、介護療養等から介護医療院への転換を促すため、「介護療養や医療療養などから転換した介護医療院では、最初に転換した日から起算して1年間に限り、【移行定着支援加算】(1日につき93単位)を算定できる」こととされました。ただし、早期の転換を促すために、この加算の算定は「2021年3月末まで」とされています。つまり、【移行定着支援加算】をフル(1年間)取得するためには、2020年3月31日までに転換が完了している必要があるのです(関連記事はこちら)。
2018年度介護報酬改定(介護医療院への転換促進)
 
このため両会長は、転換事務に多大な時間がかかる状況に鑑み、「【移行定着支援加算】の算定可能期間を少なくとも2年間延長し、2023年3月末までとすべき」と要望する考えも示しています。この見直しは介護報酬に関係するもので、社会保障審議会・介護給付費分科会での議論が必要となります。

 
 さらに、市町村が介護保険料の高騰を危惧して「医療療養から介護医療院への転換」を拒否している点については、厚労省から市町村に対し「医療・介護を合わせて考えれば、医療療養から介護医療院への転換は給付費の適正化につながる」ことを懇切丁寧に説明し、理解してもらうとともに、実際に「小規模な町村で介護保険料が高騰する」事態を避けるために、介護保険者の都道府県化を検討するよう求めています。

前者の「市町村の理解」について、厚労省はすでに全国で自治体関係者を対象とした会議・勉強会を開催しており、徐々に介護医療院創設の趣旨などへの理解が進むと期待されます。一方、後者は介護保険制度そのものを見直すもので、社会保障審議会・介護保険部会での議論が必要となります。

地域の多様なニーズに応えるため、いわゆる単独老健の「多機能型」を認めよ

 
 さらに武久日慢協会長は、人口の少ない地域で、病院に併設していない介護老人保健施設(いわゆる単独老健)の運営が厳しくなっている事態を憂慮。こうした介護老健施設については「一部分を例えば『機能強化型』(在宅復帰を促進)、一部分を『その他型』(従来型、長期入所を可能とする)とするなどの【多機能型老健】とする」ことを求めています。

 いわゆる単独老健は、地域の要介護者・要支援者のさまざまなニーズに応える必要があり、例えば「施設全体を超強化型として在宅復帰を促進する」などの対応が難しいのが実際です。武久日慢協会長は「地域の多様なニーズに、既存施設の利活用によって効率的に対応するため、【多機能型老健】を認めてほしい」と厚労省に訴える考えを強調しています。

 
 

 

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