療養病棟に入院する医療区分3の患者、退院患者の8割弱が「死亡」退院―入院医療分科会(2)



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 療養病棟に入院する患者について、3か月間で医療区分がどう変化するのかを調べると、「不変」が多いが、医療区分2や3では退棟患者に占める「死亡退院」が多く、医療区分3では、療養1・2のいずれでも7割を超えている―。

 7月3日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)では、こういったデータ報告も行われました。

7月3日に開催された、「2019年度 第4回 入院医療等の調査・評価分科会」
7月3日に開催された、「2019年度 第4回 入院医療等の調査・評価分科会」
 

20対1看護を満たさない経過措置の療養病棟、4割弱が「今後も経過措置を維持」

 2018年度の前回診療報酬改定では、療養病棟入院基本料について次のような見直しが行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。

(1)看護配置を20対1に揃え(基本部分)、「医療区分2・3患者割合」を実績評価部分とする報酬体系に整理(25対1、30対1は経過措置としてのみ存続可能)
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(2)医療区分3のうち「医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態」について、「他に医療区分2・3に1つ以上該当する」場合のみ医療区分3とする(他に該当しない場合には医療区分2)

(3)【褥瘡評価実施加算】を、患者の褥瘡の状態に応じた【褥瘡対策加算1】【褥瘡対策加算2】に組み替える
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(4)【在宅復帰機能強化加算】について、要件を厳格化するとともに、点数を引き上げる
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 7月3日の入院医療分科会では、こうした見直しの効果・影響について調査結果の報告を厚生労働省から受けるとともに、その解釈について意見交換を行いました。

 
 まず(1)の入院基本料組み換えにより、▼旧【療養1】(20対1看護、医療区分2・3患者割合80%以上)病棟のほとんどは、新【療養1】(20対1看護、医療区分2・3患者割合80%以上)にスライドし、一部、機能強化を行い【地域包括ケア入院医療管理料】(病室単位)に移行▼旧【療養2】(25対1看護、医療区分2・3患者割合50%以上)病棟の6割弱は新【療養2】(20対1看護、医療区分2・3患者割合50%以上)に移行し、一部は新【療養1】や【地域包括ケア入院医療管理料】などに機能強化▼旧【経過措置】の4割強は【経過措置】にスライド、3割は新【療養1】に移行し、一部【介護医療院】へ転換―などという状況が分かりました。

今後の方向性を決めあぐねている療養病棟も相当程度あり(経過措置の4割弱)、2020年度の診療報酬改定、2021年度の介護報酬改定に注目していると考えられます。

医療区分3の患者、3か月後には7割超が死亡退院

(2)の医療区分見直しにより、従前「医師及び看護師により、常時監視・管理を実施している状態」で医療区分3であった入院患者(全体の11.3%)が、「他の医療区分2・3に該当し医療区分3を維持した患者」(同8.2%)と「他に該当せず医療区分2となった患者」(同2.1%)に分かれたことが確認されました。今後、見直しの妥当性などを詳しく検証していくことになります。

さらに、厚労省からは次のようなデータも提示されました。

▽調査時点までの入院期間(「入院から退棟までの期間」ではない)を見ると、700日超の超長期入院患者が最も多い(療養1:30.6%、療養2:23.6%、経過措置:25.8%)

▽入院理由として「治療のため」が最も多い(療養1:58.0%、療養2:61.7%、経過措置:67.6%)

▽医療区分2・3患者割合は療養1では90.4%、療養2では68.1%

▽入院患者の3か月後の状況をみると、医療区分に変更のない患者が多いが、医療区分2や3では退棟患者の中で「死亡退院」の割合が高くなる(医療区分1<2<3の順で死亡退院が多くなり、療養1の医療区分3では退棟患者の79.2%、療養2の医療区分3では同じく77.9%が死亡退院)
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▽医療区分3として多いのは、▼中心静脈栄養(療養1:53.7%、療養2:58.3%)▼常時、毎分3リットル以上の酸素療法(療養1:25.5%、療養2:24.0%)▼常時管理・監視常時(療養1:22.9%、療養2:8.5%)▼24時間持続点滴(療養1:13.9%、療養2:20.8%)―など
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 こうしたデータに基づいて、2020年度の次期診療報酬改定で「医療区分2・3の各項目について、見直しの必要性はあるのか」などを今後、検討していくことになりますが、田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)は「医療区分3の中で中心静脈栄養が最多である背景には、胃瘻には抵抗があるが、中心静脈栄養であれば抵抗がない」という患者が一定程度いるのではないかと指摘しました。中心静脈栄養を施せば医療区分3となることから、療養病棟側の「医療区分2・3患者の割合を上げたい」という経営的視点と合致し、医療区分2・3患者割合を高めるために中心静脈栄養を施しているケースもあるのではないか、という考えに基づく指摘と言えるでしょう。

 この指摘に対し、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は「データに基づかない憶測での発言は控えるべき」と極めて強い調子で反論しました。ただし、「なぜ中心静脈栄養を施したのか」などの解析は難しいと考えられ、どこまで深堀した議論が可能なのか、今後の状況を見守る必要がありそうです。

 
 なお、中心静脈栄養を「3か月前と3か月後とで実施している」患者が約75%もいる点について、神野正博委員(全日本病院協会副会長)は「仮に3か月継続して中心静脈栄養を施しているのであれば、感染症の心配がある。マスコミなどの報道でネガティブな印象を持たれているが、こうした場合、経管栄養や経腸栄養を検討すべきではないか」と指摘しています。

4.4%の療養病棟で、褥瘡の状態が3か月連続して悪化

 一方(3)に関連し「褥瘡」の状況については、▼入院時と退棟時を比較すると、多くは「変化なし」であるが、「悪化している」ケースも、「軽快している」ケースもある▼3か月連続して褥瘡の状態が悪化した(低い点数である【褥瘡対策加算2】の対象となる)療養病棟が4.4%ある―ことなどが報告されています。
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さらに(4)の【在宅復帰機能強化加算】に関連して、次のような状況が報告されました。

▽「退院患者に占める在宅退院患者(再入院・死亡退院を除き、自院の他病棟からの転棟患者は、当該病棟に1か月以上入院していた患者に限る)の割合」は、加算取得病院では要件「50%以上」をクリアしているところが多く、加算非取得病院でも広く分布している(50%以上も少なくない)
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▽「1日平均入院患者数に対する自院・他院の一般病棟等から当該病棟に入院し、在宅に退院した1年間の患者数の割合」は、加算取得病院では要件「15%以上」をクリアしているところが多く、加算非取得病院では15%以上クリアは少数派である
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【在宅復帰機能強化加算】を取得するには「前者50%以上」かつ「後者15%以上」(後者について2018年度改定で厳格化)が必要となり、今後、要件設定の妥当性検証などが行われることになるでしょう。ただし、要件厳格化は「点数の大幅引き上げ」(10点→50点)とセットで行われている点に留意が必要でしょう。

 

 

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