「院内保育」体制を整え、医療従事者や地域住民が働きやすい環境の整備を―厚労省



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 2017年時点で院内保育を実施する病院は4割強にとどまっている。医療従事者が働きやすい環境を整備するため、個々の病院の事情を考慮したうえで、各種の助成制度も活用して「院内保育所の整備」を病院に促してほしい―。

 厚生労働省は7月1日に通知「院内保育等の推進について」を都道府県に宛てて発出し、こうした要請を行いました。

院内保育実施は4割強、夜間保育は2割強、病児保育は1割弱にとどまる

 厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」が3月末(2019年3月末)に報告書をとりまとめ、次のような方針を明確にしました(関連記事はこちら)。

▽2024年4月から「医師の時間外労働上限」を適用し、原則として年間960時間以下とする(すべての医療機関で960時間以下を目指す)(いわゆるA水準)

▽ただし、「3次救急病院」や「年間に救急車1000台以上を受け入れる2次救急病院」など地域医療確保に欠かせない機能を持つ医療機関で、労働時間短縮等に限界がある場合には、期限付きで医師の時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるB水準)

▽また研修医など短期間で集中的に症例経験を積む必要がある場合には、時間外労働を年間1860時間以下までとする(いわゆるC水準)

▽2024年4月までの5年間、全医療機関で「労務管理の徹底」(いわゆる36協定の適切な締結など)、「労働時間の短縮」(タスク・シフティングなど)を進める

 あわせて「多様な働き方の推進」「働きやすい環境の整備」も重要です。例えば、「子育て」のために一時離職しなければならない方も少なくなく、「短時間勤務を認める」「保育施設を充実する」ことなどで人材を確保することが求められます。

 翻って「院内保育を実施している病院」の状況を見ると、徐々に増加してはいるものの、2017年10月1日時点で43.8%にとどまっています(厚労省、2017年医療施設調査)。また、このうち夜間保育を実施しているのは52.8%(病院全体の23.1%)、病児保育を実施しているのは21.2%(病院全体の9.3%)にとどまります。
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 都道府県別に見ると、院内保育を実施している病院の割合が高いのは▼滋賀県:68.4%▼岐阜:61.4%▼千葉県:58.3%―など、逆に低いのは▼青森県:18.1%▼石川県:19.1%▼宮崎県:20.7%―という状況。
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 開設者別に見ると、院内保育を実施している病院の割合が高いのは▼公的(地方独立行政法人):76.5%▼医育機関:74.4%▼国(その他):72.2%―など、逆に低いのは▼個人:11.9%▼企業:34.2%▼医療法人:40.0%―などで、民間病院で整備が遅れています。
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 さらに病床規模別に見ると、院内保育を実施している病院の割合が高いのは▼600-699床:93.6%▼900床以上:92.5%▼700-799床:90.9%―など、逆に低いのは▼20-49床:13.2%▼50-99床:23.2%▼100-149床:41.4%―などで、やはり大規模病院で整備が進んでいます。
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 こうした状況を受けて厚労省は、医療提供体制確保の責任主体である都道府県(医療計画の作成や、指導等の権限を持つ)に対し「各医療機関の事情等を考慮しつつ、当該医療機関に院内保育所の設置や機能の充実の必要性についての検討を促す」よう要請しています。

 この点、院内保育所の整備には相応のコスト(施設・設備の整備費、保育士確保等の人件費など)がかかるため、▼「子ども・子育て支援新制度」における事業所内保育事業(市町村による認可事業として事業所内保育を実施する場合、運営費に対して給付費を支給)・病児保育事業等(市町村が実施する地域子ども・子育て支援事業として病児保育を行う場合、整備費・運営費を補助)▼病院内保育所に対する都道府県による補助制度(地域医療介護総合確保基金でメニュー化、病児保育を行う場合や小学校低学年の児童保育を行う場合に加算)▼企業主導型保育事業等による助成制度(内閣府子ども・子育て本部が実施する、企業主導型保育施設に対する整備費、運営費の助成)―などの支援制度があることも病院側に周知する必要があります。その際、医療法人が自ら附帯業務として、あるいは保育事業者に委託して院内保育等を実施する場合なども、上記の助成が活用可能なケースがあります。
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 なお、保育所の利用者負担については、今年(2019年)10月1日から幼児教育・保育の無償化が実施されており(3-5歳までの幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する子供たちの利用料を無償とするなど)、都道府県および院内保育を実施する病院サイドから利用者にPRすることも重要です。

 
 さらに厚労省は、院内保育所で、自院の医療従事者の子供のみならず、「地域の児童」の受け入れを行うことで、▼地域貢献▼事業の運営基盤強化―につながることから、「病院と市町村が連携し、より効果的・効率的な院内保育実施に向けて検討する」ことも提案しています。

 院内保育において、どの職種の子供を受け入れているのかを見ると、2017年10月1日時点では、▼自院の医師・歯科医師の子供:71.3%▼自院の看護師・准看護師:96.6%▼自院のその他職員:83.9%▼併設施設の職員:37.0%▼その他:12.3%―という状況です。厚労省は、「職種ごとの特殊性(とくに医師特有の転勤時期など)にも配慮し、院内保育等を必要とする職員ができる限り使用可能となるよう、病院サイドに工夫を促す」ことも要請しています。

 

 

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