公立・公的等病院の「再編・統合」、地域医療提供体制の在り方全体をまず議論せよ―地域医療構想ワーキング



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 公立病院・公的病院等の機能改革案を、診療実績データに基づいて再検証する。その際、「再編・統合が必要ではないか」と考えられる公立病院・公的病院等が見いだされた場合、個別医療機関の再編・統合のみを議論するのではなく、まず「地域の医療提供体制の在り方」そのものを地域医療構想調整会議で議論し、合意を得る必要がある―。

6月21日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった議論が行われました。

6月21日に開催された、「第22回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
6月21日に開催された、「第22回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
 

地域で必要な公立・公的等病院の数・ベッド数や民間との連携方針などをまず固めよ

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となり、医療・介護ニーズが今後急速に増加していくとみられます。このため、より効果的・効率的に医療・介護サービスを提供する体制が求められ、その一環として「地域医療構想の実現」に向けた取り組みが進められています。2025年の医療ニーズを踏まえて、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期等―の各ベッド数がどれだけ地域で必要となるかを推計し、この構想にマッチするように病院・病棟・病床の機能分化を進めていくものです。

地域医療構想の実現に向けて、各地域医療構想調整会議(以下、調整会議)では、まず「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」(公立病院・公的病院等でなければ担えない機能への特化)に関する合意を得ることになっており、2018年度末(2019年3月末)時点では、ベッド数ベースで、▼公立病院は95%(2018年12月末から47ポイント向上)▼公的病院等は98%(同38ポイント向上)―と、ほぼすべての公立病院・公的病院等で「機能改革」に関する合意ができたように見えます。

ただし、機能別の病床数割合の推移を見てみると、次のように2017年度から2025年度にかけて大きな変化は見られず、また「合意ありきで議論が進み、形だけの機能改革論議や現状追認にとどまっているケースがある」との指摘が相次いでいます。

【公立病院】
▽高度急性期:2017年度・20.3% → 2025年度・20.9%(0.6ポイント増)
▽急性期:2017年度・65.8% → 2025年度・62.5%(3.3ポイント減)
▽回復期:2017年度・8.2% → 2025年度・11.6%(3.4ポイント増)
▽慢性期等:2017年度・5.7% → 2025年度・5.0%(0.7ポイント減)

【公的病院等】
▽高度急性期:2017年度・35.8% → 2025年度・34.5%(1.3ポイント減)
▽急性期:2017年度・50.2% → 2025年度・49.7%(0.5ポイント減)
▽回復期:2017年度・6.2% → 2025年度・8.1%(1.9ポイント増)
▽慢性期等:2017年度・7.8% → 2025年度・7.7%(0.1ポイント減)
地域医療構想ワーキング(1)2 190516
 
 このためワーキングでは「合意内容の検証が必要」と判断。次のような枠組みで検証を行い、必要があれば「機能改革に関する再検討を求める」方向を固めています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

(1)地域の医療提供体制の詳細な分析を行う
(2)(1)の分析結果を踏まえ、各調整会議で「地域の公立病院・公的病院等の機能改革等」を再検証・検討する

このうち(1)では、構想区域ごとに、各医療機関における▼がん手術の実績▼がん化学療法の実績▼心血管疾患の診療実績▼脳卒中の診療実績▼救急医療の実績▼小児医療の実績▼周産期医療の実績―などを洗い出します(厚労省で分析中、2019年夏頃に結果が示される見込み)。

さらに(2)では、(1)のデータをもとに、個々の構想区域で、例えば▼手術等の診療実績が高い公立・公的等病院と民間病院とが各1施設程度存在する▼手術等の診療実績が一定程度ある公立・公的当病院と民間病院が数多く存在する(大都市部など)▼複数の公立・公的等病院が手術等の多くを担っている▼多くの病院に手術症例等が拡散している―などに分類し、そのうえで、個々の公立・公的病院等の機能を次のように見極めていきます。
 
(α)例えば「胃がんの手術について、A公立病院が地域の大多数の症例に対応している」ことが明らかになれば、「胃がん手術」について、A公立病院は「他の民間病院では担えない機能」を担っていると判断できる(言わば【現在の機能を維持する公立・公的病院等】)。

(β)例えば「乳がん手術について、B公的病院とC民間病院とで症例を分け合っている」ような場合には、C民間病院のキャパシティなども考慮した上で、「乳がん手術の機能を、B公立病院からC民間病院へ移管することができないか」といった点を検討する(言わば【他の医療機関による役割の代替可能性がある(一部の機能転換を検討すべき)公立・公的病院等】)。

(γ)多くの項目について、X公立病院とY公立病院とで「症例が分散している」ことが明らかになった場合には、地理的要素なども考慮したうえで、「病院同士の再編・統合」を検討する(言わば【再編・統合等の必要性について特に議論が必要な公立・公的病院等】)。

  
 6月21日のワーキングでは、こうした再検証・再検討をどのようなプロセスで議論していくべきかを議論しました。厚労省の提案を、ワーキングとして了承した格好です。

 厚労省は、まず(β)の【他の医療機関による役割の代替可能性がある(一部の機能転換を検討すべき)公立・公的病院等】については、従前どおり「2020年3月まで」に、個別医療機関の機能転換について議論し、合意を得る必要があるとの考えを示しました。

 例えば、地域に民間のA病院と、公立・公的等のB病院・C病院の3病院がある地域で、「経皮的冠動脈形成術」の実績がB病院で著しく少ない、ような場合には、調整会議で「B病院の経皮的冠動脈形成術機能をA病院またはC病院に移管できないか」を検討し、2020年3月までに合意を得ることが求められます。B病院の循環器内科医や設備などをA・C病院に移すべきなのか、なども含めて議論することが必要となります。
地域医療構想ワーキング1 190621
 
 この点、今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は、例示について「経皮的冠動脈形成術(PTCA)経皮的冠動脈インターベンション(PCI)とを混同した議論にならないように留意する必要がある」「PTCAについて、夜間・休日も実施しているのか、平日のみを実施しているのか、なども見ていく必要がある」ことを指摘。こうした点は現場でなければ十分に把握できず、調整会議でしっかりと見ていく必要があるでしょう。

 
 一方、(γ)の【再編・統合等の必要性について特に議論が必要な公立・公的病院等】については、個別医療機関単位の議論にとどまらず、地域の医療提供体制全般を議論することが求められる、との考えが厚労省から示されました。

 例えば、地域に公立・公的等のA病院・B病院・C病院・D病院と民間のE病院の5病院がある地域で、B病院では「救急車の受け入れ・経皮的冠動脈形成術・消化管悪性腫瘍手術・脳動脈瘤クリッピング術」など、さまざまな項目で診療実績が他院に比べて劣っている、ような場合には、「B病院については、他の病院と再編・統合すべきではないか」と議論していくことが求められます。

もっとも、再編・統合論議は一筋縄では進みません。地域の住民には「私の通っていた病院がなくなる。なぜなのか。今後、どうすればよいのか」と、また当該病院に勤務するスタッフにも「新病院の風土なども分からない。適切な診療を行えるのだろうか」との不安が生じることでしょう。首長や議会が「選挙公約で病院存続を打ち出している。再編・統合には応じられない」と反対するケースもありそうです。この点、総務省から「地域の不安を煽らないよう、慎重な情報発信を求める」要請がなされています。

 さらに、「どの病院に吸収させるのか」「1つの病院に吸収させるのか(ある機能はA病院に、別の機能はC病院に吸収させることも考えられる)」「単純に廃止するのか」などさまざまなパターンが考えられ、当事者となる病院に再編・統合論議を全て委ねることは困難でしょう。

 そこで厚労省は、まず▼地域でどの程度、公立・公的等の医療機関が必要と考えられるのか(公立・公的等の医療機関数、および機能別病床数の合計)▼公立・公的等と他の医療機関との連携方針―などを議論することが必要との考えを示しました。まず「地域の医療提供体制方針」を明確にし、その中で「現在、B病院が持っている各機能を、どの病院に担ってもらうことが適切か」と考えていくものです。
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 この点に関連して岡留健一郎構成員(日本病院会副会長)は、「地域医療においては、公立も民間もない。地域全体で、医療提供体制をどう見直していくかを議論する必要がある。再編・統合は病院にも地域住民にもショッキングな話題であり、データを十分に提示し、地域医療構想アドバイザーの力も借り、慎重に議論していく必要がある」とコメントしています。

 また小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は、「公立病院は歴史的に『税金を投入してても、この地域の医療を確保しなければならない』というところから始まっている。確かに税金が投入されているが、その分、決して黒字にならない分野の医療を提供しなければならず、その点は議会のチェックを受けている。給与の高さも指摘されるが法令で定められており、我々には如何ともしがたい部分もある。住民が必要としている医療提供体制は何か、住民に要求される医療は何か、重点化すべき医療は何かを第一に考える必要がある」と指摘し、安直な公立・公的等病院の再編・統合には警鐘を鳴らしています。

 
 
なお、厚労省は、都道府県との協議の上で「再編・統合等に向けて国が重点的に支援する地域」(重点支援区域)を定め、国が「直接の支援」を行う考えを明確にしています。この点について中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「地方にとっては、厚労省から職員が派遣されてくるのはとても大きなことだ。地方が委縮したり、不快になったりしないよう、慎重に行動すべき」と指摘しています(関連記事はこちら)。

脳梗塞患者へのtPA投与件数、超急性期脳卒中加算の算定件数と別に把握すべきか

 また6月21日のワーキングでは、2019年度の病床機能報告(2019年7月1日時点の機能等を、2019年10月に都道府県に報告する)について、「脳梗塞に対するtPA投与件数」を把握すべきか否かも議論されました。

 脳梗塞発症直後の患者には、血栓を溶解する「組織プラスミノーゲン活性化因子」(tPA)を投与する治療法が効果的で、現在、こうした治療体制が地域でどの程度整っているのかを判断するために、A205-2【超急性期脳卒中加算】(発症から4.5時間以内のtPA投与を評価する入院基本料等加算)の算定状況を調べています。

 ただし、【超急性期脳卒中加算】の施設基準を満たさないながらも、tPA投与を実施し、脳梗塞患者に迅速・適切な治療を提供している病院があると考えられることから、厚労省は【超急性期脳卒中加算】の算定状況と合わせて、「tPA投与を行ったレセプト件数」も把握(NDBから把握し、医療機関サイドの負担は大きくない)してはどうかと提案したのです。
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 しかし、中川構成員や今村構成員は、まず「tPA投与の実態」を詳しく調べるべきと指摘。今後、「【超急性期脳卒中加算】の取得病院で、加算適応外の患者であっても、医学的な見地からtPA投与を行っている」ケースが多いのか、それとも「【超急性期脳卒中加算】を取得していない病院で、tPA投与を行っている」ケースが多いのか、などを分析し、報告内容を見直すべきか否かを改めて検討することになりました。

 

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