500床以上の大病院に入院患者集中、在院日数短縮も高稼働率―日医総研WP



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 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は24日、2014年度診療報酬改定によって、大病院に入院患者が集中し、小規模病院では入院患者が増えなくなっているなどとする分析結果を発表しました。

 これは日医総研がワーキングペーパー「2014 年度診療報酬改定後の医療費の動向」の中で発表したもので、このほかに▽大病院では入院外の収入割合が高まっている▽高齢化が人口減に打ち消され、医療費の自然増がなくなってきている▽診療所では内科・小児科・皮膚科、外科で入院外医療費の伸びが鈍化している―などと指摘しています。

大病院の稼働率は80%弱を維持

 14年度診療報酬改定では、▽7対1一般病棟における施設基準の厳格化▽地域包括ケア病棟・病室の創設▽診療所・中小病院の主治医機能を評価する地域包括診療料・加算の創設―など大きな見直しが行われました。

 日医総研ではこれらによる影響を把握するため、14年4-9月の医療費について分析しました。分析のベースとなったデータは、厚生労働省が公表しているMEDIAS(最近の医療費の動向)や概算医療費が用いられました。

 まず病院について見ると、14年4-9月の医療費は前年同月比1.4%増の10兆6000億円となりました。病床規模別に医療費の伸びを見ると、▽20-49床は0.6%増▽50-99床は0.7%増▽100-199床は1.7%増▽200-299床は1.2%増▽300-399床は1.6%増▽400-499床は1.9%増▽500床以上は1.1%増―です。

病院の医療費の伸び率を病床規模別に見ると、規模の大きな病院で増加している傾向が伺える
病院の医療費の伸び率を病床規模別に見ると、規模の大きな病院で増加している傾向が伺える

 これを1施設当たりで見ると、▽病院全体は1.6%増▽20-49床は1.5%増▽50-99床は1.4%増▽100-199床は1.4%増▽200-299床は1.3%増▽300-399床は1.5%増▽400-499床は1.0%増▽500床以上は2.6%増―と、500床以上の大病院での増収が目立ちます。

1施設当たりの病院医療費の伸び率を病床規模別に見ると、500床以上の病院が突出して大きく、ここで収益が増加していることが伺える
1施設当たりの病院医療費の伸び率を病床規模別に見ると、500床以上の病院が突出して大きく、ここで収益が増加していることが伺える

 また、入院と入院外に分けて医療費の伸びを見ると、入院では、▽病院全体は1.5%増▽20-49床は1.8%増▽50-99床は1.9%増▽100-199床は1.8%増▽200-299床は1.4%増▽300-399床は1.3%増▽400-499床は0.5%増▽500床以上は1.9%増―という状況です。

1施設当たりの入院医療費の伸び率を見ると、500床以上の病院では1.9%
1施設当たりの入院医療費の伸び率を見ると、500床以上の病院では1.9%

 日医総研では、入院医療費を3要素(1日当たり医療費、1件当たり日数、件数)に分けた分析も行っており、1日当たり医療費については「過去(10年度改定など)に急性期入院医療に重点的な診療報酬配分がなされたことから、大病院と中小病院の差は縮小していない」「500床以上の大病院では、08年度の4万2300円から14年度は5万3200円と1万円以上増加している」と指摘しています。

1日当たり医療費を病床規模別に見ると、急性期医療に手厚い配慮を行った2010年度改定から大規模と中小病院の格差が広まってきている
1日当たり医療費を病床規模別に見ると、急性期医療に手厚い配慮を行った2010年度改定から大規模と中小病院の格差が広まってきている
1日当たり入院医療費を経年的に見ると、500床以上では2008年から2014年にかけて1万円以上増加している。
1日当たり入院医療費を経年的に見ると、500床以上では2008年から2014年にかけて1万円以上増加している。

 一方、入院患者数に該当する「1施設当たり件数」を見ると、300-399床と500床以上のみ増加していることが分かりました。さらに、病床稼働率を見ると、1件当たり日数が減少する中で、すべての規模で低下傾向にあるものの、500床以上の大病院では80%弱と依然、高水準を保っています。

病床規模別に、1施設当たりの入院医療費伸び率を見ると300-399床、500床以上のみプラスとなっており、ここに患者が集中してきている可能性がある
病床規模別に、1施設当たりの入院医療費伸び率を見ると300-399床、500床以上のみプラスとなっており、ここに患者が集中してきている可能性がある
病床稼働率は、いずれの規模の病院でも低下してきているが、500床以上の病院では80%弱と比較的高い水準を保っている。
病床稼働率は、いずれの規模の病院でも低下してきているが、500床以上の病院では80%弱と比較的高い水準を保っている。

 日医総研は、こうした状況を総合して「大病院に患者が集中し、在院期間の短縮が進んでいるが、病床稼働率は高い」「その一方で、中小規模の病院では入院患者が増えなくなっている」とまとめています。今後も、診療報酬上、在院日数の短縮を進める施策がとられると予想され、病院の再編・統合が進むことも考えられそうです。

500床以上では入院外医療費も増加

 次に、病院の入院外医療費を前年度と比較すると、▽病院全体は1.9%増▽20-49床は1.2%増▽50-99床は0.6%増▽100-199床は0.4%増▽200-299床は0.8%増▽300-399床は1.9%増▽400-499床は2.3%増▽500床以上は4.2%増―となりました。

1施設当たりの入院外医療費の伸びを病床規模別に見ると、500床以上では4.2%と突出して高い
1施設当たりの入院外医療費の伸びを病床規模別に見ると、500床以上では4.2%と突出して高い

 ここで入院外医療費が、病院の医療費に占める割合を見ると、500床以上で年々、高まっていることが分かります。

病院医療費に占める入院外医療費の割合は、500床以上の大病院で増加傾向にある
病院医療費に占める入院外医療費の割合は、500床以上の大病院で増加傾向にある

 今後、入院外医療費の詳細な分析を行い、大病院の外来では「件数(患者数)が増加しているのか」「単価の高い症例を診ているのか」などの検討を行っていく必要がありそうです。

人口減により「医療の高度化」による医療費増が目立つ

 また、医療費全体に着目すると14年度上半期は、前年同期に比べて1.4%増加しています。この数字は、未曾有のマイナス改定となった06年度を除き、最近では最も低い水準で、診療報酬改定の影響を除外するとさらに顕著です。

未曾有のマイナス改定であった2006年度改定を除くと、2014年度は医療費の伸びが小さいことが分かる
未曾有のマイナス改定であった2006年度改定を除くと、2014年度は医療費の伸びが小さいことが分かる
診療報酬改定の影響を除くと、2014年度の医療費の伸び率が小さいことがはっきりする
診療報酬改定の影響を除くと、2014年度の医療費の伸び率が小さいことがはっきりする

 医療費増の要因としては、▽診療報酬プラス改定▽高齢化▽医療の高度化(新薬や新医療機器など)―などが考えられ、14年度は▽改定で0.1%増▽高齢化などで0.4%増▽高度化で0.8%増―と厚生労働省は説明しています(端数処理のため合計値が異なります)。

 かつては、高齢化の影響が最も大きかったのですが、人口減により高齢化による医療費増は打ち消され、「高度化」の影響が大きくなっています。現在、中央社会保険医療協議では新薬や新医療技術を保険収載する際の費用対効果の評価方法の検討を進めていて、この検討内容にも変化が出てくるかもしれません。

内科、小児科、皮膚科、外科の診療所は収益伸びず

 最後に医科診療所について見てみると、14年度の医療費は前年に比べて0.5%増加し、1施設当たりでは0.4%の増加となっています。

 また、有床診では医療費そのものは減少していますが、これは施設の減少によるもので、1施設当たりで見ると、14年度は3.5%と高い増加率を示しています。有床診療所入院基本料の引き上げなどが影響している可能性があります。

有床診療所の医療費は減少傾向にあるが、施設数の減少も大きな要因となっている
有床診療所の医療費は減少傾向にあるが、施設数の減少も大きな要因となっている
2014年度改定で有床診療所入院基本料が引き上げられたことなどを受け、1施設当たりの有床診医療費は大幅増
2014年度改定で有床診療所入院基本料が引き上げられたことなどを受け、1施設当たりの有床診医療費は大幅増

 なお、診療科別に1施設当たりの入院外医療費の伸びを見ると、内科、小児科、皮膚科、外科で小さいことが分かります。

診療科別に、診療所の入院外医療費の伸び率を見ると、内科ではマイナス、小児科、皮膚科、外科で小さい
診療科別に、診療所の入院外医療費の伸び率を見ると、内科ではマイナス、小児科、皮膚科、外科で小さい
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