医師派遣機能、地域医療支援病院の「すべて」には求めるべきではない―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会(1)



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 地域医療支援病院への「医師派遣機能」付与について、「すべての病院」には持たせるべきではない。地域医療支援病院の指定要件について、地域の実情に応じて「プラスアルファの要件」を定めることは妥当である―。

 6月6日に開催された「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました。

 4月25日の前回会合では「地域医療支援病院のすべてに『医師派遣機能』を持たせてはどうか」との厚生労働省提案に反対意見は出ていませんでしたが(関連記事はこちら)、今回の反論多数を受け、「地域の判断で、医師派遣機能をプラスアルファ要件として設定する」ことなどが今後、模索されます。

6月6日に開催された、「第17回 特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」
6月6日に開催された、「第17回 特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」
 

地域の実情に応じて「プラスアルファ」の要件設定を可能としてはどうか

 検討会では、地域医療支援病院と特定機能病院の承認要件の見直しに向けた議論を行っており、今夏(2019年夏)に意見を取りまとめる予定です。6月6日の会合でも、前回に引き続き、▼地域医療支援病院の見直し▼特定機能病院の第三者評価―の2点を議題としており、ここでは前者の「地域医療支援病院」に焦点を合わせます(特定機能病院については別稿でお伝えします)。

 地域医療支援病院は、1997年の第3次医療法改正において「かかりつけ医を支援する病院」として創設されました。現在、(1)紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)(2)医療機器の共同利用(3)救急医療の提供(4)地域の医療従事者への研修の実施―という4つの役割・機能が求められ、それぞれが「承認要件」に落とし込まれています(すべての要件を満たさなければ地域医療支援病院として承認されない)。

 しかし医療現場からは「地域医療を支援する機能を同じように果たしていても、地理的な事情などにより要件をクリアできず、地域医療支援病院となれないことから、診療報酬上の評価も低く、不公平がある」といった課題などが指摘されています。厚労省では、こうした指摘なども踏まえて、次の2つの見直し案(指定要件の厳格化)を提示しています。

(A)地域の実情に応じて、プラスアルファの要件を設定できることとしてはどうか
(B)すべての地域医療支援病院に、「医師派遣機能」を新たに求めてはどうか

 まず前者の「プラスアルファ」案に対しては、方向性そのものに反対する意見は出ていませんが、要件設定方法に関してはまた意見が割れています。

 吉川久美子構成員(日本看護協会常任理事、欠席のため代理人出席)や本多伸行構成員(健康保険組合連合会理事)は、「プラスアルファの内容を国が例示すべき」と提案。地域で承認要件に大きなバラつきが出ることに懸念を示しています。

これに対し中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「地域の状況・事情はさまざまであり、国がそれらをすべて把握することなどできるわけがない」とし、プラスアルファの要件は「地域に委ねることが適当」と反論しました。

地域の実情に応じた要件は、あくまで「プラスアルファ」となる見込みです。そうであれば、プラスアルファに多様性が出たとしても、「機能の低い病院が地域医療支援病院になる」という事態は生じないでしょう。現時点でも、極めて多様な機能を持つ地域医療支援病院もあれば、要件クリアぎりぎりの地域医療支援病院もあります。これを地域の実情に応じて「要件を厳しくしていく」ものに過ぎないからです。

地域医療支援病院には、診療報酬上のメリット(A204【地域医療支援病院入院診療加算】:入院初日に1000点、など)が設けられており、本多構成員らは「機能の低い病院が加算を取得する」不公平を懸念していると思われますが、この点は大きな問題にはならないと見込まれます。

医師派遣機能をすべての地域医療支援病院に求めれば、「効果が薄くなる」との指摘も

後者の「医師派遣機能」は、医療提供体制に関する最重要課題の1つとなっている「医師偏在」について、すべての地域医療支援病院が取り組んではどうかという提案です。

医師偏在対策に関する改正医療法では、▼「医師少数区域等に一定期間勤務(6か月以上)することで地域医療への知見を持った医師」を厚生労働大臣が認定する(認定医師)▼一定の病院では「認定医師であることを管理者・院長の要件」とする―という仕組みが設けられました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。

対象となる病院は「医師派遣・環境整備機能を有する地域医療支援病院」とされ、具体的な対象を検討会で議論することになっています。

この点について、厚労省は、「73.7%の地域医療支援病院では、医師派遣や巡回診療など、なんらかの医師少数地域支援を行っている」との調査研究結果を踏まえ、地域医療支援病院の新要件として▼医師少数区域等における巡回診療▼医師少数区域等の医療機関への医師派遣(代診医派遣を含む)▼総合診療部門をもち、プライマリケア研修・指導機能―のいずれかを求める、こととしてはどうかと提案したのです(関連記事はこちら)。
特定機能病院・地域医療支援病院検討会1 190606
 
この提案について4月25日の前回会合では反対意見は皆無でしたが、6月6日の今回会合では、例えば次のような反対意見が相次ぎました。

▽地域医療支援病院でない別の「医師派遣機能を担う病院」がすでにある場合(例えば北海道の名寄市立総合病院)、新たに地域医療支援病院に機能付与することになるのか。効果的な医師派遣を行うには、「医師派遣機能を集約」すべきである。すべての地域医療支援病院に医師派遣機能を求めれば、効果は薄くなり、非効率となる(島崎謙治構成員:政策研究大学院大学教授)

▽地域医療支援病院の地元に「医師少数の地域」がなければ、地域を跨いで医師派遣を行うことになるが、その場合「地域医療を支援する」病院ではなくなる(相澤孝夫構成員:日本病院会会長)

 
 こうした意見を踏まえ、厚労省医政局総務課の北波孝課長は、「地域の実情に応じたプラスアルファ要件(上記(A))の中で、医師派遣機能を盛り込む」ことも含めた再提案を行う考えを示しました。なお、上述の「認定医師」(医師少数区域等での勤務経験を持つ医師)を管理者・院長要件とする「病院」は、当初より「医師派遣機能を持つ地域医療支援病院」とされており、医師偏在対策が決して「後退」したわけではない点に留意が必要です(関連記事はこちらこちら)。
特定機能病院・地域医療支援病院検討会2 190606
 
 さらに6月6日の検討会では、中川構成員から「地域医療支援病院は、その役割を終えた。在り方などを抜本的に見直してはどうか」との指摘も出ています。島崎構成員も「4機能を個別に(診療報酬等で)判断・評価すべき」と、相澤構成員も「要件クリアのみに終始し、地域の医療連携ネットワークなどを意識していない地域医療支援病院も実際にある。地域医療支援病院の在り方を原点に返って考えるべき」と述べています。

 ただし北波総務課長は「今夏に向けてはファインチューニング(言わば改善)を検討してほしい」と要請しています。上述したように地域医療支援病院の指定は、診療報酬とも直結していることから、抜本的な見直しには一定の時間が必要になると考えられ、「将来の課題」に位置付けられることになりそうです。

 

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