18年度同時改定「介護施設での医療提供」などテーマに―給付費分科会



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 社会保障審議会の介護給付費分科会が25日に開かれ、2018年度に予定している診療報酬と介護報酬との同時改定に向けて今後、▽中重度者・認知症高齢者にふさわしいサービス▽要介護高齢者に対するリハビリテーションの在り方▽地域包括ケアシステムの構築▽介護保険施設などにおける医療提供の在り方▽介護職員の処遇改善―などに関する調査・検討を行っていく方針を確認しました。

3月25日に開催された、「第120回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
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介護サービスの質、評価手法の確立に向けた研究継続

 15年度介護報酬改定に向けた論議の中で分科会は、「今後の検討課題」として▽通所リハビリテーションや通所介護、認知症対応型通所介護などの共通の機能と共に、それぞれのサービスに特徴的な機能を明確にした一体的・総合的な機能分類や評価体系▽介護サービスの質を高めるための質の評価手法の確立▽効果的・効率的なサービス提供体制の構築―などを挙げていました。

1月9日に介護給付費分科会がまとめた2015年度診療報酬改定に関する「審議報告」では、今後の課題もまとめられている
1月9日に介護給付費分科会がまとめた2015年度診療報酬改定に関する「審議報告」では、今後の課題もまとめられている

 厚生労働省はこれを整理し、検討が必要な分野と具体的な検討課題をまとめています。

 まず、すべてのサービスに共通する「横断的」事項としては、▽介護サービスの質の評価▽ケアマネジメントの質的改善▽中重度高齢者・認知症高齢者への対応―という分野について検討を行います。

 このうち「質の評価」に関しては、既に研究が始まっており、14年度に実施された「介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業」では、▽転倒▽発熱▽誤嚥▽脱水▽褥瘡▽移動能力の低下▽認知機能の低下―という「自律支援の障害となる7項目」を選定し、リスク予測のために必要なデータを収集できるかどうかを研究しています。

介護サービスの質を評価するための取っ掛かりとして「自立支援の障害となりうる、転倒などのハザード」を特定する
介護サービスの質を評価するための取っ掛かりとして「自立支援の障害となりうる、転倒などのハザード」を特定する

 ところで、介護サービスは多面的な観点で高齢者の自立を支援するもので、サービスの効果は社会的・文化的価値観や個人の主観に依存する要素が少なくありません。そのため、定量的な評価を比較的しやすい上記の7項目を「取っ掛かりとして選定しているにすぎない」ことを厚労省老健局の迫井正深老人保健課長は強調しています。同時改定に向けて、より多面的な評価指標やデータ収集手法などを研究していくことになります。

介護サービスの質は多面的に評価しなければならないが、まず「定量的な評価」が比較的可能な心身機能に着目して評価手法の検討を開始している
介護サービスの質は多面的に評価しなければならないが、まず「定量的な評価」が比較的可能な心身機能に着目して評価手法の検討を開始している
自立支援の障害となる、▽転倒▽発熱▽誤嚥▽脱水▽褥瘡▽移動能力の低下▽認知機能の低下―の7項目を選定
自立支援の障害となる、▽転倒▽発熱▽誤嚥▽脱水▽褥瘡▽移動能力の低下▽認知機能の低下―の7項目を選定
2015(平成27)年度以降も、介護サービスの質の評価に関する検討・研究を継続
2015(平成27)年度以降も、介護サービスの質の評価に関する検討・研究を継続

 なお、この点について鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「例えば自立歩行を早期に可能とするためにリハビリテーションを積極的に行えば、転倒のリスクが高まる。これを『質が低い』と評価するのは、サービスの質の向上にかえって反する」と指摘。迫井課長も「重要な視点であり、評価の妥当性も十分に検討する必要がある」との考えを述べました。

リハビリの実態や、介護施設での医療提供など検討へ

 居宅系サービスで検討が必要な内容としては、▽機能訓練・リハビリテーションなどの機能分類・評価体系の在り方▽地域の実情を踏まえた訪問系・通所系サービスにおける一体的・総合的な提供や評価の在り方―が挙げられています。

 また施設系サービスでは、「介護保険施設などにおける医療提供の在り方」について検討が必要とされました。

 居宅系サービスと施設系サービスでは関連する事項も多いため、具体的な検討課題は次のように一体的に整理されています。

(1)機能訓練・リハビリテーションの実態を適切に把握し、要介護者の生活機能の維持改善に資するよう、必要な見直しを検討する

(2)地域密着型サービスについて、利用者の医療ニーズへの対応を強化することで「在宅生活の支援」が充実しているか、必要な見直しを検討する

(3)中山間地域における各種加算などの評価の在り方を検討するため、中山間地域以外の実態を把握し、自治体独自の取り組みなどを通じた介護報酬以外の支援(例えば基準該当サービスや、独自の上乗せ給付など)の在り方についても検討する

(4)地域包括ケアシステムの構築に向けた、より効果的・効率的なサービス提供の在り方を検討する

(5)介護事業所、介護保険施設などの利用者への医療提供の在り方について、同時改定を念頭に、医療保険との関係にも留意しながら、適切に実態を把握し必要な見直しを検討する

15年度改定の検証項目、4月以降に固める

 このうち(1)のリハビリテーションについては、武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)から「医療保険から介護保険へ移行した際、サービスの落差がある」との指摘がありました。これ対して迫井課長は「医療側、介護側の双方から落差をなくし、円滑な移行を可能とするよう努力していく必要がある」とコメントしています。

病院などのリハスタッフの6割が「要介護高齢者にも医療保険の維持期リハが必要」と考えており、その理由としては「介護保険のリハでは機能維持・改善が難しい」がもっとも多い
病院などのリハスタッフの6割が「要介護高齢者にも医療保険の維持期リハが必要」と考えており、その理由としては「介護保険のリハでは機能維持・改善が難しい」がもっとも多い

 また(3)の中山間地域におけるサービスに関連し、14年度に実施された「中山間地域等における訪問系・通所系サービスのあり方に関する調査研究事業」では、▽中山間地域では訪問サービスの提供に時間がかかり、移動距離も長い▽事業の撤退や縮小をしたいと考えている事業所はほとんどない―という実態が明らかになっています。

 しかし、鈴木委員や武久委員は「中山間地域の事業所は使命感で事業を継続している。経営がいよいよ厳しくなれば撤退せざるを得ず、介護サービスが提供できなくなってしまう」と訴え、介護報酬上の手当てを行うよう強く求めています。また、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「加算を付ける余裕があるのだろうか。社会福祉法人が社会貢献事業の一環として中山間地域でのサービスを提供すべきではないか」との考えを述べました。

 厚労省は、こうした意見を踏まえて4月以降、分科会の下部組織である「介護報酬改定検証・研究委員会」を開き、15年度改定の効果・影響調査項目を絞り、調査スケジュールを固める考えです。

 なお、介護事業所や介護保険施設などの経営実態や、介護職員の処遇改善状況については、「介護事業経営調査委員会」で別途、調査設計などが行われます。

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