医療保険リハビリを受けるため「要介護等認定を辞退する」高齢者が現れないか危惧―日慢協、武久会長・橋本副会長



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 要介護被保険者等について維持期・生活期のリハビリテーションを医療保険給付から介護保険給付へ完全移行することとなったが、要介護度の低い高齢者が「要介護認定の更新をしない」ことなどにより、医療保険の維持期リハビリを受けるような事態が生じはしないか。また、「自費のリハビリ」について基準等を明確化する必要はないのか―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長と橋本康子副会長は、4月11日に定例記者会見に臨み、このような問いかけを厚生労働省に行っていく考えを示しました。

4月11日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長(向かって左)と橋本康子副会長(向かって右)
4月11日に定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長(向かって左)と橋本康子副会長(向かって右)
 

要介護認定の更新等をしなければ要介護者でなくなり、医療保険の維持期リハ受給が可能

 この3月(2019年3月)で、要介護・要支援者に対する「医療保険の維持期・生活期の疾患別リハビリ料」(▼脳血管疾患等リハビリ料▼廃用症候群リハビリ料▼運動器リハビリ料―)が終了し、介護保険の(介護予防)訪問リハビリ・(介護予防)通所リハビリに完全移行することになります。ただし、医師が「医療保険のリハビリ継続が必要」と判断した場合や「外傷性の肩関節腱板損傷」「高次脳機能障害」などの場合には、従前どおり医療保険のリハビリを受けることができます(関連記事はこちらこちらこちら)。

 医療保険リハビリと介護保険リハビリでは、報酬の体系が異なるために単純な比較はできませんが、武久会長と橋本副会長は「患者の視点からすれば、医療保険の方が手厚いリハビリを受けられる」と指摘します。

 医療保険のリハビリは、維持期(標準的算定日数経過後)には状態の改善が期待できない場合でも「1か月に13単位」まで保険から給付が行われます。1単位は20分なので、1か月に260分(4.3時間)となります。

一方、介護保険では1か月当たりに受給可能な保険サービスの量が要介護度別に決まっています(区分支給限度基準額)
・要支援1:5万30円(消費税対応改定で2019年10月に引き上げ予定、以下同)
・要支援2:10万4730円
・要介護1:16万6920円
・要介護2:19万6160円
・要介護3:26万9310円
・要介護4:30万8060円
・要介護5:36万650円

 このうち30%を通所リハビリテーションに充てるとすれば、▼要支援1:1万5000円▼要支援2:3万1400円▼要介護1:5万円▼要介護2:5万9000円▼要介護3:8万1000円―程度となります。

通所リハビリの基本単位数は次のように設定されています。
▼要支援1:1712単位(1か月当たり)
▼要支援2:3615単位(1か月当たり)
▼要介護1:329単位(1時間以上2時間未満、通常規模、以下同)
▼要介護2:358単位
▼要介護3:388単位

 ここに「リハビリテーションマネジメント加算」(加算IIIでは6か月まで1か月当たり1120単位、6か月以降は1か月当たり800単位)、「生活行為向上リハビリテーション実施加算」(3か月までは1か月当たり2000単位、6か月までは1か月当たり2000単位)などが上乗せされるので、要支援1・2では「すでに基本報酬だけで区分支給限度基準額の30%を超過している」ことが分かり、要介護1・2では1時間以上2時間未満を「5-6回」程度利用すると区分支給限度基準額の30%に到達する計算です(実際の利用状況も同様)。ただし、介護保険の通所リハビリは「集団」で行われ、その内容は医療保険のリハビリ(個別リハビリ)と相当程度異なります。

こうした点を踏まえ、武久会長・橋本副会長は「患者視点では医療保険リハビリのほうが手厚くなる」と見通した上で、「要介護度の低い高齢者では、区分支給限度基準額も低く設定されるため、手厚いリハビリを求めて、医療保険給付に戻ってくる可能性がある」と指摘します。要介護・要支援認定を辞退(更新申請をしなければ自動的に要介護等でなくなる)すれば、介護保険給付は利用できず、正面から「医療保険のリハビリ」を受ける資格を入手できるのです。

現行制度の隙間をつくもので、「好ましい」ものとは言えないように思えます。武久会長・橋本副会長は「要介護等の認定を辞退することが可能なのか、国として明確にすべきではないか」と問いかけていく考えを示しています。

完全自費のリハビリサービス、認可条件などを明確にすべきではないか

 さらに、より手厚いリハビリを求める人は、「自費のリハビリ」も選択することになるでしょう。

維持期のリハビリについて、保険診療(1か月当たり13単位まで)を超過した部分について「選定療養」として実費を徴収することが可能です。保険と自費を組み合わせた手厚いリハビリを患者自身が選択する環境が一部整えられています。

さらに、一部の民間企業や医療機関では「完全自費のリハビリテーション」の提供が始まっています。厚労省が2013年11月27日に発出した通知「理学療法士の名称の使用等について」では、理学療法士等が、介護予防事業などにおいて、医師の指示なく「診療の補助に該当しない」業務を行ってもよい旨が示されています。この点、「完全自費のリハビリテーション」サービスの中には「脳梗塞・脳出血の後遺症リハビリ」をうたい文句としているところもあり、やや「グレー」な印象も受けます。

 この点について武久会長・橋本副会長は、「完全自費のリハビリテーションを排除する考えはない。ただ、リハビリには事故等が伴うケースも多く、安全性・有効性を確保するために、サービスの認可条件などを明確にする必要があるのではないか」との考えも示しています。

 完全自費のリハビリが正面から認められれば、「維持期リハビリ+選定療養」の先を行く「混合リハビリ」にもつながってくる可能性があり武久会長は「リハビリが急速な勢いで変化していく」と見通しています。

急性期リハビリ充実に向け、急性期病院への「派遣リハビリ」を認めよ

なお、武久会長・橋本副会長ともに、機能回復のためには「傷病の発生直後からの急性期リハビリが重要であり、急性期リハビリの評価充実のほうが理に適っている」との考えも強調。例えば、リハビリスタッフ(理学療法士など)が十分にいる病院から、急性期病院への「派遣リハビリ」を認めるよう提言していく考えも示しています(関連記事はこちら)。

 
 

 

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