高齢者の保健・介護予防の一体的実施の「要」として期待される自治体保健師は増員傾向―2017年度地域保健・健康増進



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地域保健事業に従事する自治体保健師は、前年度に比べて増員が目立つが、都道府県間の格差は広がってしまった。また市町村の実施する「がん検診」の受診率は前年度に比べて低下しており、受診勧奨の強化に向けた取り組みの強化が必要である―。

 こうした状況が、厚生労働省が3月13日に公表した2017年度の「地域保健・健康増進事業報告の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら、前々年度の記事はこちら)。

地域保健事業に従事する自治体保健師、前年度からの増員目立つが、地域格差は拡大

 この「地域保健・健康増進事業報告」は、保健所・市区町村ごとに保健政策がどのように展開しているのか、その実態を調べるものです。

今後の少子高齢化(2025年にはすべての団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、その後、少子化の影響から2040年にかけて現役世代が急速に減少していく)に向けて、我が国では「健康寿命の延伸」が極めて重要な政策課題となっており、保健所・市区町村の保健政策もクローズアップされていくと考えられます(関連記事はこちら)。

また、2025年の超高齢化を控え、地域ごとに▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―の各サービスを総合的・一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築も重要な政策課題となります。その中では、健康維持や疾病・介護予防といった分野で大きな役割を果たす保健師への期待がますます高まってきており、こうした面からも本報告の重要性を伺うことができます。

 2017年度の事業報告を見ると、保健所・市区町村の地域保健事業に携わる保健師は2万5933名で、前年度に比べて369名増員されたことが分かりました、内訳を見ると、▼都道府県保健所:3659名(前年度から2名減員)▼政令市・特別区:7107名(同179名増員)▼政令市・特別区以外の市町村:1万5227名(同192名増員)―となっています。

 2019年の通常国会に提出されている健康保険法等改正案では、健康寿命の延伸を目指し「高齢者の保健事業と介護予防事業を、市町村が一体的に行う」ことを可能とする内容が盛り込まれています。保健事業・介護予防一体的実施の要として「自治体の保健師」(市町村保健師)に期待が集まっており、今般の増員結果からは期待が持てるでしょう(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 
 また都道府県別に人口10万人当たりの配置状況を見てみると、全国平均は20.4名で前年度より0.4人の増員となりました。最多は島根県の42.4名(前年度に比べ0.8名増員)で、高知県39.3名(同1.6名増員)、山梨県33.9(同0.4名減員)と続きます。逆に最も少ないのは、神奈川県の11.4名(同0.7名原因)で、ほか東京都11.8名(同0.3名増員)、埼玉県14.2名(同0.3名増員)などという状況です。都市部では人口が多いため、どうしても「人口10万人当たり保健師数」は低くなりますが、東京都や埼玉県では「人口増のペースを上回る形で、保健師の増員がなされている」と考えられそうです。
2017年度地域保健・健康増進事業報告2 190313
 
 最多(島根県)と最少(神奈川県)との格差は、3.72倍となり、前年度に比べて0.1ポイント拡大してしまいました。地域包括ケアシステムは「地域ごとの医療資源」(施設や設備、人員など)に応じて、柔軟に構築するものですが、人口10万人当たりで4倍近い格差は大きすぎると考えるべきでしょう。バラつきを埋めるための方策を具体的に検討し、実行に移す努力が各自治体に求められます。

 
 このほか、保健所・市区町村の地域保健事業に携わる常勤の医療専門職の配置状況を見てみると、▼医師:891名(前年度に比べて8名増員)▼歯科医師:125名(同6名原因)▼薬剤師:3077名(同6名増員)▼理学療法士:145名(同4名減員)▼作業療法士:103名(同5名増員)▼管理栄養士:3440名(同134名増員)▼助産師:151名(同8名増員)▼看護師:757名(同14名増員)▼准看護師:94名(同22名減員)―などとなっています。必要な配置数を各自治体が検討し、戦略的・計画的に人員確保策を練る必要があるでしょう。
2017年度地域保健・健康増進事業報告1 190313
 

市町村による「がん検診」の受診率は低い、特に胃・肺・大腸で遅れ目立つ

 市区町村が実施したがん検診の受診率に目を移すと、▼胃がん:8.4%(前年度に比べて0.2ポイント低下)▼肺がん:7.4%(同0.3ポイント低下)▼大腸がん:8.4%(同0.4ポイント低下)▼子宮頸がん:16.3%(同0.1ポイント低下)▼乳がん:17.4%(同0.8ポイント低下)―となっています。5大がんすべてで受診率が低下傾向にあり、要因分析の上で対策を練る必要があります。

 また市区町村別・がん種別に、検診受診率の状況を見ると、▼胃がん▼肺がん▼大腸がん▼子宮がん―では、受診率「50%以上」の市町村は1桁にすぎません(肺がんでは1自治体のみ)。とくに▼胃がん▼肺がん▼大腸がん―では受診率の低い自治体が目立ち、受診率向上に向けた、一層の努力が強く求められます。
2017年度地域保健・健康増進事業報告3 190313
 
 なお、2016年度に市区町村が実施したがん検診における要精密検査者のうち、「がんであった者」の「がん検診受診者」に対する割合は、▼胃がん:0.10%(前年度から0.01ポイント上昇)▼肺がん:0.03%(同0.01ポイント低下)▼大腸がん:0.17%(同0.02ポイント低下)▼子宮頸がん:0.04%(同増減なし)▼乳がん:0.28%(同0.05ポイント低下)―という状況です。精度向上に向けた一層の取り組みが期待されます。

 
 

 

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