胸腺がん治療へ、カルボプラチン・パクリタキセルの併用投与を審査上認める―支払基金



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 保険診療において、「アミカシン硫酸塩」(販売名:アミカマイシン注射液)を「アミカシン感受性の非結核性抗酸菌症」に投与すること、「カルボプラチン、パクリタキセル」(パラプラチン、タキソール)を「胸腺がん」に併用投与することなどを、審査上認める―。

 こうした審査情報を社会保険診療報酬支払基金が2月25日に公表しました(支払基金のサイトはこちら(薬剤に関する全情報が掲載されており、今般の取扱いはページの最後部に記載)、医科のこれまでの情報はこちら、歯科のこれまでの情報はこちら)。

医療現場の要望踏まえて審査上「柔軟な取扱い」を認める

 保険診療において医療用医薬品を使用するにあたっては、薬事・食品衛生審議会(薬食審)で有効性・安全性が確認された傷病への治療、用法・用量に限定されます。医療安全を確保すると同時に、医療保険財源の適正配分を確保するためです。

もっとも医療現場においては、医学的・薬学的知見に照らし「薬食審で認められていない疾病等の治療においても一定の効果があると強く推測される」ケースがあることから、レセプト審査において一定の柔軟な取り扱いもなされています(いわゆる「55年通知」(旧厚生省保険局長による1980年発出の通知)に基づく適応外使用など)。

他方、全国一律の診療報酬ではあるものの、地方独自の審査ルール(都道府県ルール)があることも指摘されています。例えば、「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になる」ので、薬剤の1回処方量を多くすることを認めていたり、地域によっては、疾患別リハビリテーション料の算定を1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)などのルールが存在すると指摘されています。

こうした地方独自ルールを放置したままでは、「全国一律の診療報酬」に反するとともに、「審査の透明性・公正性」が確保できず、医療保険制度への信頼が揺らぎかねません(関連記事はこちらこちらこちら)。

このような背景から支払基金では、審査に関するルールを逐次明確にするとともに、その情報を医療関係者らに広く提供しています(支払基金の審査情報提供サイトはこちら)(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

 今般、薬剤に関して次の3点の審査ルールが明確にされました。厚生労働省も「妥当適切なもの」との見解を明確にしています。

(1)原則として、「アミカシン硫酸塩【注射薬】」(販売名:アミカマイシン注射液100mg、同200mg、ほか後発品多数)を、「非結核性抗酸菌症(アミカシン感受性の場合に限る)」に対して投与した場合、当該使用事例を審査上認める

(2)原則として、「ミコフェノール酸 モフェチル【内服薬】」(販売名:セルセプトカプセル250、セルセプト懸濁用散31.8%、ほか後発品あり)を「同種造血幹細胞移植時の移植片対宿主病の抑制」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める

(3)原則として、「カルボプラチン、パクリタキセル【注射薬】」(カルボプラチンの販売名:パラプラチン注射液50mg、同150mg、同450mg、ほか後発品多数、パクリタキセルの販売名:アブラキサン点滴静注用100mg、タキソール注射液30mg、同100mg、ほか後発品多数)を「胸腺がん」に対して併用投与した場合、当該使用事例を審査上認める

 
 まず(1)の「アミカシン硫酸塩」は、これまでにアミカシン感性の大腸菌や緑膿菌などによる敗血症・外傷・熱傷・肺炎などへの効能・効果が認められています。支払基金は「薬理作用(タンパク合成阻害作用)が同様」と推定し、今般の取扱いを決めました。

ただし、留意事項として、▼Mycobacterium abscessus症以外における一次治療での使用は不適当である▼投与開始1週間後から必ず定期的に血中濃度測定を行い、投与量を調節する▼高齢者、るい痩を生じた患者、腎障害のある患者、腎機能低下の患者には、投与量の減量や投与間隔を空けた使用など、慎重に投与量を調節する▼耐性菌の発現等を防ぐため、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめる▼投与開始時期、投与期間、併用薬等について国内外の各種学会ガイドラインなど、最新情報を参考にする▼遺伝的な感受性により、投与初期から聴力障害を呈する場合があるため、投与前に慎重に問診を行う▼聴力低下の防止・早期診断のため、投与開始前から投与終了1か月後まで、月に1回程度聴力検査を行う(推奨)―ことなどが求められます。

 
 また(2)の「ミコフェノール酸 モフェチル」は、現在、腎移植後の難治性拒絶反応の治療などに関する効能効果が認められています。支払基金は「薬理作用(移植免疫抑制作用)が同様」と推定し、今般の取扱いを決めました。

ただし、▼ヒトにおいて催奇形性が報告されているので、「妊娠する可能性のある婦人」に投与する際は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認した上で投与を開始する▼投与前から投与中止後6週間は、信頼できる確実な避妊法の実施を徹底させるとともに、問診、妊娠検査などにより、妊娠していないことを定期的に確認する▼免疫抑制療法および移植患者の管理に精通している医師、またはその指導のもとで行う▼診療ガイドライン等の最新の情報を参考に、本剤の投与が適切と判断される患者に投与する―などの留意事項が付されています。

 
 また(3)の「カルボプラチン」は、頭頸部がんや肺小細胞がん、非小細胞肺がん、卵巣癌、子宮頸癌、乳がんなどのほか、小児悪性固形腫瘍への他の抗悪性腫瘍剤との併用療法が認められ、「パクリタキセル」は、卵巣がん、非小細胞肺がん、乳がん、胃がんなどへの効能効果がこれまでに認められています。支払基金は「薬理作用(抗腫瘍作用)が同様」と推定し、今般の取扱いを決めました。

 ただし、投与量に関する留意事項が定められているほか、各種ガイドラインを参照することが求められます。

   
 

 

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