新たな【特定処遇改善加算】の加算率、訪問介護では6.3%・4.2%、介護療養では1.5%・1.1%など―介護給付費分科会(1)



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 新たな処遇改善加算【特定処遇改善加算】の加算率について、訪問介護や定期巡回・随時対応型介護看護では6.3%・4.2%(加算I・加算II、以下同)、通所介護等では1.2%・1.0%、小規模多機能型居宅介護等では1.5%・1.2%、特別養護老人ホーム等では2.7%・2.3%、介護老人保健施設等では2.1%・1.7%、介護療養や介護医療院では1.5%・1.1%、などとする。また、消費税率引き上げに合わせて基本単位数の引き上げも行う―。

 社会保障審議会・介護給付費分科会は2月13日に、根本匠厚生労働大臣の諮問を受け、こういった内容の答申を行いました(正確には、こうした内容を親組織である社会保障審議会に行い、社会保障審議会から根本厚労省に答申)(関連記事はこちらこちらこちらととこちらこちらこちらこちら)。

本稿では、新たな処遇改善加算【特定処遇改善加算】に焦点を合わせて、その内容を見てみましょう。消費税対応改定等については別稿でお伝えします。

2月13日に開催された、「第168回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
2月13日に開催された、「第168回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
 

事業所等の関心の高さ踏まえ、今年度中(2019年3月まで)に新点数等を告示

今年(2019年)10月に予定される消費税率引き上げ(8%→10%)に合わせ、消費税収を財源とした(同時に保険料も財源に充てる)、▼介護人材の確保▼介護人材の定着—を主目的とする新たな処遇改善加算【特定処遇改善加算】が創設されます。

まず【特定処遇改善加算】の創設にあたり、「満年度ベースで2000億円」の財源が定められました(公費1000億円、保険料1000億円)。およそ20万人いる「勤続10年以上の介護福祉士」の賃金水準を、全産業平均程度にまで引き上げる(月額8万円程度の引き上げ)ことを算定根拠としたものです。

この2000億円を、(1)各サービス種類にどう分配するか → (2)各サービスの中で、事業所にどのように分配するか → (3)事業所の中で、スタッフにどう配分するか―という3段階で、【特定処遇改善加算】の内容が固められていきました。お浚いにもなりますが、各段階を追ってみましょう。

(1)サービス種類への分配

 ここでは、【特定処遇改善加算】の主目的である「勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善」を重視し、介護保険のサービスごとに、「職員に占める、勤続10年以上の介護福祉士の割合」に応じて2000億円を分配することになりました。

 2017年介護サービス施設・事業所調査と2015年度社会福祉士・介護福祉士就労状況調査から、この割合は▼訪問介護:17.3%▼老人保健施設:12.5%▼特別養護老人ホーム:12.3%▼地域密着型特養ホーム:11.1%▼夜間対応型訪問介護:9.1%―などで高くなっており、これらサービスに多くの財源が配分される格好です。逆に、勤続10年以上の介護福祉士が勤務していない訪問看護などには、財源は配分されず【特定処遇改善加算】の取得はできません。
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 このように分配されたサービス毎の財源を、「各サービスの費用額」(サービス毎の総請求額から処遇改善加算などを除外したもの)で割り戻すことによって、「各サービスの加算率」が決まります(Xとする)。【特定処遇改善加算】は、介護サービス事業所・施設(以下、介護サービス事業所等)が「利用者に提供したサービスに係る介護報酬」に一定の加算率を乗じることで、介護職員等の処遇改善に向けた原資を提供するものであるためです。

 ただし、(2)で見るように、同じサービス種類であっても、「勤続10年以上の介護福祉士」が多いと見込まれる事業所では高い加算(加算I)を、そうでない事業所では低めの加算(加算II)を取得することになります。

このため、上述「X」のサービス毎の加算率をベースに、▼Xの90%を加算IIの加算率とする▼残りの財源を上乗せして加算Iの加算率を設定する―こととなりました。ただし、加算Iと加算IIの差があまりに大きくなれば(この場合、加算IIの加算率は低くなる)、「勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善」という主目的が果たせなくなるため、「両者の差が1.5倍を超える場合には、90%を95%読み替えて加算率を設定する」こととしています。

例えば、▼訪問介護や定期巡回・随時対応型介護看護では6.3%・4.2%(加算I・加算II、以下同)▼通所介護等では1.2%・1.0%▼小規模多機能型居宅介護等では1.5%・1.2%▼特別養護老人ホーム等では2.7%・2.3%▼介護老人保健施設等では2.1%・1.7%▼介護療養や介護医療院では1.5%・1.1%—などと設定されています。
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(2)事業所への分配

 「サービス毎の財源」を事業所へ配分する段階では、「どのような事業所が【特定処遇改善加算】を取得できるか」(つまり取得要件)を考えることになります。

これまでの議論を踏まえ、▼現⾏の介護職員処遇改善加算(I)から(III)までを取得していること(加算IV・加算Vの取得事業所等、加算を取得していない事業所等は、【特定処遇改善加算】も取得できない)▼介護職員処遇改善加算の職場環境等要件について「複数の取り組み」を⾏っていること▼介護職員処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページへの掲載等を通じた⾒える化を⾏っていること―という要件が設定されています。逆に言えば、これらの要件を満たさなければ【特定処遇改善加算】は取得できません。

【特定処遇改善加算】が、真に「介護人材の確保・定着」につながるよう、複数の職場環境等要件(例えば▼働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援▼新人介護職員の早期離職のためのエルダー・メンター(新人指導担当者)制度等導入▼中途採用者に特化した人事制度の確立―など)の実施を義務付けるべき、という強い意見を踏まえたものですが、詳細については解釈通知で規定されることとなり、厚労省老健局老人保健課の眞鍋馨課長は「通知原案を次回会合(3月開催予定)に示し、そこで議論してほしい」との考えを示しています。通知内容を正面から介護給付費分科会で議論することは異例とも言え、厚労省がこの点を重視していることが分かります。
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また、上述のように(1)で各サービスの加算率が設定されましたが、介護給付費分科会では「同じサービス種類の中でも、勤続10年以上の介護福祉士をより多く配置している事業所では、処遇改善のために多くの原資が必要であり、そうでない事業所に比べてより多くの財源を配分すべき」との意見が数多く出され、これが、前述した▼加算I▼加算II―の設定につながりました。

高い加算率となる「加算I」を取得するためには、▼サービス提供体制強化加算(最も⾼い区分)▼特定事業所加算(従事者要件のある区分)▼⽇常⽣活継続⽀援加算▼⼊居継続⽀援加算―を取得していることが求められ、これらを取得していない事業所では、低めの加算率となる「加算II」を取得することになります。
介護給付費分科会(1)の2 190213
 

(3)スタッフへの分配

 さらに(2)で事業所に配分された財源(事業所が算定する介護報酬総額に、加算率を乗じた部分が財源となる)を、各スタッフに配分することになります。

 スタッフへの配分に当たっては、事業所の裁量が相当程度認められますが、「勤続10年以上の介護福祉士の処遇改善」という本来の趣旨を損なわないよう、次のようなルールが設定されました。

【経験・技能のある介護職員(リーダー級介護職員)】(下図の橙色部分)
▽対象:勤続年数10年以上の介護福祉士を基本とする。介護福祉士を要件とするが、「勤続10年」の考え方は事業所の裁量で設定可能とする

▽最低限のルール:次の2項目を満たすように賃金を引き上げる
▼事業所等の中で「月額8万円の処遇改善となる者」または「改善後の賃金が年収440万円(役職者を除く全産業平均賃金)以上となる者」が1人以上
▼平均の引き上げ幅は、「【その他の介護職員】の引き上げ幅の2倍」以上とする

 
【その他の介護職員】(下図の青色部分)
▽対象:「経験・技能のある介護職員」以外の介護職員

▽最低限のルール:平均の引き上げ幅が「【その他の職員】の引き上げ幅の2倍」以上となるように、賃金を引き上げる

 
【その他の職種】(下図の緑色部分)
▽「経験・技能のある介護職員」「その他の介護職員」以外の全職員

▽最低限のルール:改善後の賃金額が「役職者を除く全産業平均賃金(年収440万円)」を超えない場合に、処遇改善を可能とする(全産業平均よりも給与の高いスタッフの賃金を、新加算でさらに引き上げることは、新加算の趣旨に反するため)
介護給付費分科会(1)の1 190213
 
 こうした「スタッフへの配分」の詳細についても「次回会合で通知原案を基に議論すべき」(伊藤彰久委員:日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)という指摘があります。ただし、あまりに詳細に通知等で定めれば、それは「事業所の裁量」を狭めることにもなり、どうバランスをとるのかが注目されます。

 
 なお、【特定処遇改善加算】については、事業所等の関心も極めて高いことから、厚労省では、消費税対応改定分も含めて、「2018年度中に告示・解釈通知等を示す」考えです。2019年10月までの半年間で、各事業所等において【特定処遇改善加算】の取得要件等クリアに向けた検討・準備を進めることが期待されます。

 
 

 

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