2019年度消費税対応改定の内容固まる、迅速かつ継続的な「補填状況の検証」が必要―中医協総会(2)



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 お伝えしているとおり、今年(2019年)10月の消費税対応改定(診療報酬プラス改定)の概要が2月6日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で明らかになりました。

 支払側委員から決定プロセスに関する批判が出ましたが、改定内容についての異論は出ておらず、近く開催される中医協総会で答申がなされる見込みです。

2月6日に開催された、「第407回 中央社会保険医療協議会 総会」
2月6日に開催された、「第407回 中央社会保険医療協議会 総会」
 

急性期一般1では5.36%、初診料は6.67%、再診料は5.80%の引き上げ

来年(2019年)10月に消費税率が現在の8%から10%に引き上げられる予定です。保険医療に関しては消費税非課税とされていることから、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担をしています(いわゆる「控除対象外消費税」と呼ばれる)。このため、消費税率が引き上げられれば、医療機関等の負担も大きくなってしまうため、この負担増を補填するための特別の診療報酬プラス改定(以下、消費税対応改定)が行われます。

2019年度の消費税対応改定では、▼医療機関等種類別の補填の過不足を可能な限り小さく抑えるため、精緻な配点等を行う▼2014年度の前回消費税対応改定(消費税率5%→8%)では、医療機関等の補填状況に大きな過不足があったため、これをリセットし「5%→10%」への対応を改めて行う―方針が固められ、2月6日の中医協総会に具体的な改定案(配点案)が提示されました。

例えば、▼初診料:288点(現在から6点、2014年度改定前から18点アップ)▼再診料:73点(現在から1点、2014年度改定前から4点アップ)▼外来診療料:74点(現在から1点、2014年度改定前から4点アップ)▼急性期一般入院料1(旧7対1):1650点(現在から59点、2014年度改定前から84点アップ)▼療養病棟入院基本料1のA:1813点(現在から3点、2014年度改定前から44点アップ)▼7対1特定機能病院入院基本料:1718点(現在から119点、2014年度改定前から152点アップ)▼7対1専門病院入院基本料:1667点(現在から76点、2014年度改定前から101点アップ)―などとなっています(関連記事はこちら)。

◆消費税対応改定後点数の詳細はこちら(厚労省サイト(中医協資料))

19年度医療費踏まえた調整に支払側は難色、診療側は「当然、理解不足」と指摘

これらの引き上げ率を見ると、▼急性期一般1:5.36%▼7対1特定機能:9.71%▼7対1専門:6.45%▼初診料:6.67%▼再診料:5.80%—などで、1月9日の「医療機関等における消費税担に関する分科会」(消費税分科会)で示された数字(▼急性期一般入院料1(旧7対1)は4.8%▼7対1特定機能病院は8.8%▼7対1専門病院は5.9%▼初診料・再診料は5.5%―など)と異なっています。

この差について厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の樋口俊宏室長は、「1月9日の消費税分科会で示した引き上げ率は『2016年度医療費』などをベースに試算したもの。2016年度から2019年度にかけて医療費(2019年度予算での見込み)が9%強伸びると想定されるため、これを上乗せて引き上げ率を最終設定している」と説明しました。例えば、急性期一般入院料1では、「4.8%」に9%を上乗せすると、「5.2%」程度となり、これに基づいて「1650点」を導く形です(診療報酬点数は整数で設定されるため、その点に関する調整等がなされる)。
中医協総会(2) 190206の図表
 
今回の消費税改定対応でも、「医療機関等が負担する消費税負担」を、限られた診療報酬項目(初診料や再診料、入院基本料など)で補填することとなっています。消費税負担[医療機関等種類ごとの課税経費率(どの費用項目で消費税負担が生じているか)]に見合うように、「収益全体に占める個別診療報酬収益の割合」(病院であれば入院基本料や特定入院料などが収益の何%なのか)を勘案して引き上げ率を決めます。

無床診療所において、消費税税率引き上げによる負担増(橙色部分)を計算し、それを過不足なく補えるように初診料等の引き上げを行う(青色部分)
無床診療所において、消費税税率引き上げによる負担増(橙色部分)を計算し、それを過不足なく補えるように初診料等の引き上げを行う(青色部分)
 
1月9日の消費税分科会で示された引き上げ率(初・再診料5.5%アップなど)は、2016年度の課税経費率等データ(これ以上に新しいデータはまだ存在しない)をもとにしています。このため、その後の医療費動向などを勘案しなければ、やはり「補填の過不足」が生じてしまうのです。例えば、平均在院日数は短縮が続いていますが、これは「延患者数が減少し、収益に占める入院料シェアが低下する」ことを意味します(入院料は1日単位で設定されているため)。実際に、2014年度改定の補填状況を検証する中で、「延患者数減少が病院における補填不足の要因の1つとなっている」ことも分かっており、こうした部分の補正・調整が必要となるのです。

 
この点について支払側委員は、「2016年度から19年度にかけての医療費増加分の調整をすることは聞いていなかった。入院・外来の区分などせず、一律に『2016→19年度の医療費伸び率』(約9%)を乗じているが、例えば、外来と入院に分けて医療費の伸び率を考えるなどの議論をするべきではなかったか」(幸野庄司委員:健康保険組合連合会理事)と指摘。さらに「これまで消費税分科会等で、補填の過不足を解消するために『精緻な配点』を目指した議論をしてきたが、最終段階で不透明となっている」と厚労省を批判しました。

しかし診療側委員は、「樋口室長から『2019年度予算案を踏まえた最終調整を行う』旨の説明がなされ、消費税分科会の数値は『確定値ではない』との前提で議論を行ってきた。直近の医療費データ(見込み)を用いた調整がなされることは中医協委員として『当然のこと』と認識しているはずであるが、その点を理解されていないのではないか」(城守国斗委員:日本医師会常任理事)などと、逆に支払側委員を批判しています。

幸野委員らは「改めて消費税分科会を開き、最終調整の手法なども議論しなおすべき」と求めていましたが、樋口室長や厚労省保険局医療課の森光敬子課長の「文書等で明示的な説明が不足していたようだ。今後、改善していきたい」との説明を受け入れた格好です。

 
また「平均在院日数短縮等による延患者数の減少傾向」などを考えれば、前述のとおり、徐々に「補填不足」が生じやすい状況になってきます。診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)らは、こうした点も踏まえ「改定後に迅速かつ継続的に補填状況の検証を行い、必要な対応を検討していく」ことの重要性を強調しています。

 
なお、1月30日の公聴会では、「保険医療は消費税非課税であるが、診療報酬プラス改定によって、結果、消費税の一部を患者が負担している。こうした点はほとんどの国民・患者が理解していない」といった意見が多数出されました。森光医療課長は、「より分かりやすい説明・広報に力を入れる」考えを強調しています(関連記事はこちら)。

 
 

 

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