2018年度改定後、病院の収益は増加したが、コストがそれを上回って増加し、赤字幅は拡大―日病・全日病・医法協



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 2018年度診療報酬改定前後における病院経営の動向を、1111病院を対象に調査したところ、収益や患者単価は改定後にアップしているが、コストはこれを上回って増加しており、100床当たりの赤字幅は改定前には「経常利益ベースでマイナス684万円、医業利益ベースでマイナス1265万円」であったが、改定後には「経常利益ベースでマイナス731万円、医業利益ベースでマイナス1380万円」に悪化している―。

 日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の3団体が合同で実施した2018年度の「病院経営定期調査」の集計結果が、1月23日に公表され、こうした状況が明らかになりました。

日病・全日病・医法協の3団体が合同で調査、有効回答数は1111病院に

 3団体では、これまで別個に病院経営実態に関する調査を実施してきましたが、2018年度調査から「合同」での実施を決定。調査対象が拡大することで、より的確に病院経営の実態を把握することが可能になりました。有効回答数は1111病院と、1000病院の大台に乗っています。

 回答病院の規模を見ると、▼100床未満:12.8%▼100-199床:29.3%▼200-299床:14.8%▼300-399床:15.2%▼400-499床:10.9%▼500床以上:17.2%―となっており、「小規模施設が多い」という我が国の病院の状況に近づいています。

 また開設主体を見ると、▼国:5.3%▼自治体:23.5%▼その他公的:14.9%▼医療法人:42.4%▼その他私的:13.9%―となりました。

入院の収益・単価は増加、外来では単価は増加したが収益は低下

 2018年度診療報酬改定が病院経営に及ぼした影響を見るために、改定前(2017年6月)と改定後(2018年6月)の状況を比較すると、次のような状況にあることが分かりました。

【診療収益】▽全体:0.90%増 ▽入院:1.51%増 ▽外来:0.48%減

【単価】▽入院:2.38%増 ▽外来:2.51%増

【延べ患者数】▽入院:0.44%減 ▽外来:3.21%減

 入院については、在院日数の短縮により延べ患者数が減る一方で、診療単価の向上により収益が増加しています。一方、外来では、機能分化(大病院は専門・紹介外来を、一般外来は診療所・中小病院が担う)の進展により、患者数が減少し、収益も減少しました。しかし、より重篤な外来患者に特化している状況が伺え、単価は向上しています。経営的な視点で見てれば、「軽症患者が増え、時間をはじめとするコストを大量に投下しなければならない」ことは好ましくなく(同じコストを投下するのであれば、より単価の高い重篤な症例や、入院症例に集中すべき)、「外来患者数が減少し、単価が向上している」こと自体は悲観すべきではありません。詳細な分析が待たれますが、好ましい方向にシフトしている可能性があります。

収益増を上回るコスト増(給与費、委託費等)で、赤字幅は拡大

 ただし、100床当たりの経常利益は「731万円の赤字」(前年同月は684万円の赤字で、赤字幅が47万円拡大)、同じく100床当たりの医業利益は「1380万円の赤字」(同1265万円の赤字で、赤字幅が115万円拡大)のとなりました。また、赤字病院の割合は、前年同月から0.3ポイント減少し、53.8%となりましたが、半数超が赤字という状況に変化はありません。

 なお、減益となった病院の割合は、経常利益ベースでは52.3%、医業利益ベースでは52.9%にのぼっています。収益は上がっても(100床当たりの医業収益は0.9%増)、それを上回るコスト増(100床当たりの医業費用は1.4%増)があるため、経営状況が好転していないと考えられます。

 コストの中身を知るために、「100床当たりの医業費用」について、項目別に改定前後(2017年6月→2018年6月)で比較すると、▼給与費:1.8%増▼材料費:0.8%増(医薬品:1.6%増、診療材料:0.3%増)▼委託費:2.5%増▼控除対象外消費税負担:0.7%増―などとなっています。人件費と業務の外部委託費の高騰が、病院経営を大きく圧迫していると考えられますが、単純な人件費等の縮小(極論すれば賃下げなど)は「人材の流出」や「医療の質低下」にもつながりかねず、容易に選択できる術ではありません。不必要な残業等が発生していないか、手術室の稼働状況や業務フローなどを確認する必要があります(関連記事はこちら)。

 また、医療の質を確保しながら、コストをコントロールすることが重要になってくるため、例えば、診療科別の使用医薬品銘柄の確認(診療科によって、同じ薬効でありながら異なる銘柄を採用し、コスト増につながっている可能性もある)、病棟別の使用材料銘柄の確認(病棟によって消耗品となる材料について、異なる製品を使用している可能性もある)などを検討していくことも重要です。

大規模病院において、単価増・収益増病院の割合が高い

次に、収益について少し詳しく見てみましょう。

病床規模別に、診療収益を改定前後(2017年6月→2018年6月)で比較すると、次のように「規模な大きな病院で収益が増加した施設の割合が多い」と言えそうです。

▽100床未満:全体で増収が48.6%、入院増収が50.7%、外来増収が44.2%
▽100-199床:全体で増収が54.7%、入院増収が56.5%、外来増収が42.5%
▽200-299床:全体で増収が51.2%、入院増収が51.2%、外来増収が43.9%
▽300-399床:全体で増収が54.2%、入院増収が54.2%、外来増収が48.8%
▽400-499床:全体で増収が56.7%、入院増収が63.3%、外来増収が41.7%
▽500床以上:全体で増収が65.4%、入院増収が67.0%、外来増収が54.3%

 
 診療単価(患者1人1日当たりの請求点数)を改定前後で比較しても、やはり「規模の大きな病院で単価がアップした施設の割合が多い」と言えるでしょう。なお、DPC・非DPCでの大きな差は見られません。

▽100床未満:入院単価増が61.6%、外来単価増が53.6%
▽100-199床:入院単価増が69.6%、外来単価増が62.4%
▽200-299床:入院単価増が62.8%、外来単価増が56.7%
▽300-399床:入院単価増が64.9%、外来単価増が76.2%
▽400-499床:入院単価増が70.0%、外来単価増が75.8%
▽500床以上:入院単価増が75.0%、外来単価増が86.7%

 さらに、一般入院基本料別に、入院診療単価が増加した病院の割合を見ると、▼急性期一般1(旧7対1):68.4%▼急性期一般2(旧7対1と旧10対1の中間):72.7%▼急性期一般4(旧10対1+加算):64.6%▼急性期一般5(旧10対1+加算):62.5%▼急性期一般6(旧10対1+加算):70.3%▼急性期一般7(旧10対1):45.5%―などとなっています。ただし2018年6月は、経過措置期間中(旧7対1は看護必要度要件を満たさずとも、急性期一般1の届け出が可能)であったため、もう少し長期的な調査・分析が必要でしょう。

 
 また、診療行為別の単価(患者1人1日当たりの請求点数)を改定前後で比較すると、入院では、▼医学管理等:6.00%増▼DPC包括部分:5.50%増▼手術・麻酔:5.08%増―などは増加していますが、▼投薬:7.32%減▼注射:6.85%減▼入院料等:1.80%減―などでは減少しています。全体として「手術等が必要な重症患者が増加している」ことや、出来高病院(非DPC)でも「在院日数が短縮(入院料等の減少)している」ことなどが伺えそうです。

新設された「急性期一般2・3」への移行は低調

 ところで、2018年度の診療報酬改定では、入院基本料等体系の大幅見直し(看護配置等を評価する基本部分と、重症患者受け入れ状況などの実績評価部分を組み合わせる)などが行われています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。こうした見直しに、病院がどのように対応しているのかを調べたところ、次のような状況が分かってきました。

▽新設された急性期一般2・3への移行を考えている病院はわずか(2018年10月の経過措置修了時点でも急性期一般2へ16病院、急性期一般3へ3病院のみが移行予定)

7対1・10対1を再編統合し、7種類の急性期一般入院料(仮称)とする案を厚労省は提示した
7対1・10対1を再編統合し、7種類の急性期一般入院料(仮称)とする案を厚労省は提示した
 
▽新たな「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)を満たす患者の割合は、200床以上病院では▼30%以上:89.0%▼27%以上:3.7%▼26%以上:1.4%▼21%以上:4.4%▼15%以上:1.2%▼15%未満:0.4%―、200床未満病院では▼30%以上:57.9%▼27%以上:10.9%▼26%以上:3.5%▼21%以上:14.0%▼15%以上:9.5%▼15%未満:4.2%―となっており、急性期一般1(旧7対1)の基準値「30%以上」を満たす病院が多い

▽看護必要度I(従前から用いられている評価票を活用する)から看護必要度II(DPCのEF統合ファイルを活用する)への変更を考えている病院は21.2%(うち52.6%が2018年中に、36.2%が2019年上半期への変更予定)で、その理由として「IIの基準値を満たす」「看護師の業務負担軽減」「システム対応ができた」などがあがっている
2018年度診療報酬改定(入退院支援)3 180305
 
▽地域包括ケア病棟入院料については、▼入院料1(200床未満で、地域患者受け入れ割合等も、在宅復帰率等も高い):一般病棟13.3%・療養病棟21.1%▼入院料2(在宅復帰率等の高い入院料1以外):一般%63.1・療養47.4%▼入院料3(200床未満で、地域患者受け入れ割合等は高いが、在宅復帰率等が低い):一般%0.5・療養2.6%▼入院料4(在宅復帰率等の低い入院料3以外):一般0.5%・療養5.3%—という状況
2018年度診療報酬改定(地域包括ケア病棟)1 180305
 
▽回復期リハビリ病棟入院料については、リハビリ実績指数の高い入院料1(13対1看護、PT・OT・ST・SW配置など)・入院料3(15対1看護、PT・OT配置など)・入院料5(重症患者が少ない)の割合が圧倒的に多い
2018年度診療報酬改定(回復期リハ1) 180305
 
▽400床以上の病院における「紹介状なし患者」に対する特別負担の金額としては、▼初診では5300円以上5400円未満が79.9%、5000円以上5100円未満が15.7%、5500円以上が3.9%▼再診では2700円以上2800円未満が76.8%、2500円以上2600円未満が15.7%、3000円以上が5.6%―という状況で、外来患者数の減少した病院は全体の29.6%(44.8%は変化なし)

▽DPC特定病院群(旧II群)の要件のうち、クリアが困難なものは▼「3c 手術実施症例件数」:標準病院群(旧III群)の未クリア率は92.4%▼「3a 手術実施症例1件当たり外保連手術指数」:同80.0%▼「1 診療密度」:同79.6%▼「3C 特定内科診療の対象症例件数」:73.6%▼「3b DPC算定病床当たり外保連手術指数」:71.6%―などで、特定病院群昇格には「難易度の高い手術」症例の確保が重要なカギとなっている

 
 

 

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