不適切なオンライン診療が頻発、まずオンライン診療指針の改善等で対応―オンライン診療指針見直し検討会



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 昨年(2018年)3月に、安全かつ有効にオンライン診療を実施するためのルール(ガイドライン・指針)として「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、指針)が整備されました(関連記事はこちら)。

ただし一部に「初診時の適切な対面診療を行わずに、オンライン診療を実施するケース」や「医師どころか、医療関係資格を持たずにオンライン診療で相談を行っているケース」「痩身薬と称して糖尿病治療薬などをオンライン診療で処方するケース」など、不適切事例もあります。

厚生労働省は「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(検討会)を設置して、こうした不適切事案への対策を図る考えです。

1月23日に開催された、「平成30年度 第1回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」
1月23日に開催された、「平成30年度 第1回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」
 

2018年3月にオンライン診療指針を策定、技術進展等踏まえ年1回以上の改訂を実施

 スマートフォンなどの情報通信機器を活用したオンライン診療は、かねてより実施されていましたが、「患者情報の漏えい等防止策は十分か」「本来、対面でなすべき診療をオンラインで行っていないか」といった疑問点も指摘されていました。

 また2018年度の診療報酬改定では、【オンライン診療料】【オンライン医学管理料】等が新設され、オンライン診療が拡大する下地が一定程度整備されました(関連記事はこちら)。

 こうした状況を受け、厚労省は、安全かつ有効にオンライン診療を実施するための指針を昨年(2018年)3月末に取りまとめました。そこでは、▼指針は、保険診療はもとより、自由診療分野でも遵守しなければならない▼診療の原則は「患者と医師が対面して行う」ものであり、原則としてオンライン診療を初診で行うことは認められない(緊急の場合等の例外あり)▼オンライン診療は対面診療と組み合わせ、計画的に実施されなければならない▼患者にオンライン診療の限界を十分に説明し、同意を得なければならない―ことなどが規定されています(関連記事はこちらこちら)。

 ただし、医療を取り巻く環境等は日々変化し、また情報通信技術は目まぐるしく進化するため、指針については「定期的な見直し」を行うこととされ、政府の規制改革推進会議からも「少なくとも1年に1回以上更新せよ」との指示がありました。検討会では、各種データを収集し、「1年に1回の指針見直し」に向けて、精力的に議論を行っていきます。
オンライン診療指針見直し検討会5 190123
 
もっとも、保険診療におけるオンライン診療の規定は2018年度診療報酬改定で整備されたばかりです。実態は現在調査中(中央社会保険医療協議会が2018年度および2019年度結果検証調査として実施中)で、その結果が示されるまでには時間がかかります(最終の2019年度調査結果が示されるのは今年(2019年)10月頃)。そこで、2019年の指針改訂(Q&A等の見直しも含む、以下、同)では、前述した「不適切事案への対応」や「内容の明確化」にとどめ、「オンライン診療の実態を踏まえた本格的な見直し」は2020年以降の指針改訂でなされます。

 また、情報セキュリティ等について規定している「医療情報安全管理関連ガイドラン」(いわゆる3省4ガイドライン:▼医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚労省)▼ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン(総務省)▼ASP・SaaS事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン(同)▼医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン(経済産業省)―)が今年(2019年)3月に改訂される見込みであり、2019年の指針改訂でも、これを踏まえる必要があり、改訂時期は「2019年5月頃」となります。

遠隔健康医療相談、医師法・医療法等に違反しないよう医師がマニュアル整備を

1月23日に開催された検討会の初会合では、2019年改訂においては次の4項目を見直すことを確認し、まず(1)の「指針の対象」について詳しく検討しました。

【2019年改訂での見直し項目】
(1)指針の対象(オンライン受診勧奨・遠隔健康医療相談等の整理)
(2)オンライン診療における診療行為(「対面診療との組み合わせ」「初診対面診療原則」の見直し、予測された症状への対応、「同一医師による診療原則」の見直し)
(3)オンライン診療の提供体制(セキュリティの観点に基づく適切な通信環境の明確化、「D to P with N」(看護師による「医師が提供するオンライン診療」の補助)の明示)
(4)その他(オンライン診療を提供する場合の「研修」必修化など)
オンライン診療指針見直し検討会4 190123
 
 情報通信機器を用いた医療行為・健康増進行為について、指針では(A)オンライン診療(B)オンライン受診勧奨(C)遠隔健康医療相談―の3種類に分類しています。

(A)のオンライン診療は、医師が患者の診察・診断を行い、診断結果の伝達、初歩等をリアルタイムで行うものです。例えば、比較的状態の安定した慢性疾患患者に対し、継続した対面診療を補完するために、オンラインで状態確認・指導等を行うケースが考えられます。

また(B)のオンライン受診勧奨は、医師が患者の状態確認(診察)を行い、医療機関への受診を促すものです。患者の症状を聞き、想定される疾患を判断して「○○科を受診してください」などと促すにとどまるものです。

一方(C)の遠隔健康医療相談は、一般的な医学・医療情報の提供や受診勧奨にとどまると定義され、医師だけでなく、医師以外の相談者が実施するケースもあります。個別患者の症状に応じた判断等は、もはや(B)のオンライン受診勧奨に含まれます。

このうち(A)オンライン診療と(B)オンライン受診勧奨は「指針」の対象となります(指針を遵守しなければならない)が、(C)の遠隔健康医療相談は、そもそも医行為とはならず(医療法・医師法の適用を受けない)、「指針」の対象外とされています。

 
しかし、こうした現在の定義にはやや不明瞭な点があると指摘されます。例えば、(B)のオンライン受診勧奨や(C)の遠隔健康医療相談では、「一般用薬の使用に関する助言」(例えば、軽度の下痢で脱水の不安がある患者に「経口補水液を摂取してはどうか」とアドバイスするなど)はできませんが、薬局等では、こうした助言が一般に行われています(もちろん同時に医療機関への受診勧奨もなされなければいけません)。

また、夜間・休日に患者から電話での問い合わせがあった場合、一定の助言(例えば、夜間に子供が熱発した場合に、症状を聞いて判断し、「緊急の受診は必要ないでしょう。翌朝、外来を受診してください」といった助言を行うなど)も行われています。「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」でも注目された#8000(子ども医療電話相談事業)・#7119(救急相談センター)は、(C)の遠隔健康医療相談に該当すると考えられますが、そこでも、こうした助言・アドバイスは行われています。しかし、現在の定義では(B)のオンライン受診勧奨では、こうした助言を実施してよいか否かが必ずしも明確になっていません。

こうした状況を踏まえ厚労省は、次のように定義の見直し・明確化を行ってはどうかと提案しました。構成員からいくつか注文が付いており、最終的な改訂内容(本年(2019年)5月予定)においては若干の修正がなされる可能性もあります。

【(B)オンライン受診勧奨について】
 ▼「受診が不要である」との指示・助言を行うことを含める▼患者個人の状態に対し、罹患可能性のある疾患名を挙げることを含める▼一般用医薬品等の使用についての助言を含める―
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【(C)遠隔健康医療相談について】
▽医師が実施する場合:▼一般用医薬品等の使用についての助言を含める▼患者個人の指針状態に応じた医学的助言を含める―

▽医師以外が実施する場合:▼一般用医薬品等の使用についての助言を含める―
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全体像は、下表のように整理されます(薄緑部分が今回の改訂案)。 
オンライン診療指針見直し検討会1 190123

 
 
 (B)のオンライン受診勧奨については、「指針の対象」となる行為をより明確化する内容と言え、例えば「患者の状態を聞き、想定される疾患名を列挙する」場合には、セキュリティ確保など指針の規定を遵守することが求められます(もっとも(B)オンライン受診勧奨では対面診療等を前提としていないので、「対面での初診を実施した患者にのみ実施可能」などの規定は適用されない点に留意が必要)。

 また(C)の遠隔健康医療相談については、医師法・医療法違反とならない行為をより明確にする内容と言え、#8000や#7119の普及・拡大等にも資するものと考えられるでしょう。

ただし、今村聡構成員(日本医師会副会長)は、一般用薬とは言え、無資格者が助言等を行う場合のリスクも考慮し、「#8000などのように医師がマニュアル等を作成し、それに沿って助言が行われることが必要である」と強調しており、この点、指針にも「マニュアル整備が望ましい」旨が明記されています。

例えば民間事業者などが、「遠隔健康医療相談で可能な範疇」を超えた助言等を行った場合、医師法・医療法等違反に問われる可能性があります。逆に言えば、医師法・医療法等に違反しないような、指針の定義を踏まえて、「実施可能な行為」等に関するマニュアルを整備し、その範囲の中で遠隔健康医療相談を実施しなければなりません。厚労省も改めて「マニュアルを整備する」よう求めています。

 
次回以降、上記(2)から(4)に関する議論を行い、そこでは「緊急避妊薬をオンライン診療のみで処方可能とすべきか(初診対面を不要とすべきか)」といった点も議題にあがると考えられます。ただしこの点、実際にオンライン診療を提供している黒木春郎構成員(医療法人社団嗣業の会理事長、日本オンライン診療研究会会長)は、「初診対面の原則から外しすことの検討は時期尚早ではないか。まず『初診対面の原則』を明確化する観点に立って慎重に議論する必要がある」との見解を示しています。

黒木構成員は、オンライン診療について「僻地等はもとより、都市部でも夜間や休日における患者の医療機関へのアクセシビリティを確保する有用な診療形態である」とした上で、「得られる情報には限界があり、その特性を活かした普及が求められる」とも指摘しています。そうした適切な普及が求められる中で、前述したような不適切事案が頻発することは、普及に向けた大きな足枷となりかねず、十分な対策が必要となります。

 
 
 

 

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