看護師の平均年収1千万円、全米屈指の病院が重視する13の指標



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 平均年収1000万円と全米で2番目に看護師の給与水準が高いハワイ州のクイーンズメディカルセンター。好待遇を支える背景には、「医療の質」向上を徹するために設けられた13項目の経営指標と、院内全体で徹底的に取り組んでいる生産性向上活動があります。

本文と写真は関係ありません(credit: jdlasica via FindCC)
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患者数に応じた看護師配置

 クイーンズメディカルセンターの研修に2月に参加したGHCコンサルタントの簗取萌は、「日本では病院の看護配置が固定されていることもあって人件費は固定費ととらえることが普通だが、クイーンズメディカルセンターでは患者数に応じた看護配置が行われているのが、日本とは大いに異なるユニークな所」と解説します(関連記事『優れた医療を日本に-全米屈指のクィーンズメディカルセンターでGHCが研修(1)』)。

 簗取によると、クイーンズメディカルセンターでは、重症度など患者の状態を考慮した必要なケア提供量と患者数を掛け合わせて、看護師の配置を日ごとに変更します。症状によってどのようなケアが必要で、そのためにはどれだけの時間が必要なのかが、「FTE(Full-Time Equivalent)」と呼ばれる基準ですべて詳細に定められています。

 各病棟の看護師長は、FTEに則って看護師の配置を決め、その体制でケアした結果を看護部長にレポートすることになっています。看護部長はこのレポートを細かくチェックし、決められた時間内にケアを終えていない項目が多いと看護師長を呼び出し、改善策を促すという流れです。

産業界の常識を医療の世界に

 クイーンズメディカルセンターのFTEは、医療や看護とは全く関係のない産業エンジニアが構築しました。産業界では常識とされる労務管理の方法を医療の世界に持ち込み、効率的な労務管理を実現させることが狙いです(関連記事『医療スタッフの生産性向上は日本でも必須の課題に-全米屈指のクィーンズメディカルセンターでGHCが研修(2)』)。

 ただ、効率性を追求するあまりに医療の質を落としてしまっては本末転倒です。クイーンズメディカルセンターでは医療の質向上を第一の目標としているため、医療の質を測定する13項目を病院全職員が共有しています。指標の一覧は次の通りです。

<医療の質、パフォーマンス>
(1)傷害(転倒・転落など)、中心静脈血流感染率(ICU、内科・外科病棟)
(2)調整後入院死亡率
(3)患者満足度
(4)30日以内再入院率

<雇用関連>
(5)教育研修プログラムの実施
(6)WOWプログラムへの参加率

<マーケット関連>
(7)州内の入院患者マーケットシェア、外来患者数増加率
(8)ITシステムの構築・活用
(9)ハワイ各島の発展への寄与

<市民への責任>
(10)クイーンズヘルスシステムによる地域への貢献

<財務関連>
(11)医業利益率
(12)EBITDA利益率
(13)投資対効果

 いかがでしょうか。効率化は、病院の理念・価値観を徹底的に追求しているからこそできるものです。一見、遠回りのようですが、まずは自病院の理念や価値観を明確にし、その上で、それを反映させた効率化の具体策を決めることが、サービスの質を高めつつ収益を上げ、職員の好待遇を実現する一番の近道なのかもしれません。

解説を担当したコンサルタント 簗取 萌(やなとり・もえ)

yanatori 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルタント。看護師、経営学修士(MBA)。
国立看護大学校看護学科卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。ナショナルセンター集中治療室の勤務を経て、MBA取得後現職。DPC環境下における病院戦略、クリニカルパス、看護必要度等データに基づいた実証的分析、クリティカルケア領域の経験を踏まえた実践的な分析などを得意とする。名古屋第一赤十字病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「AERA」などの雑誌(掲載報告はこちら)、新聞への取材協力多数。「月刊ナースマネジャー」にて「一歩先を行く! 師長のための医療看護トレンドナビ」好評連載中。
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