2019年度に医学部入学定員を特例増員し「不適切な不合格者」救済、2020年度以降の減員で調整―厚労省・文科省



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 今年度(2018年度)入学分の大学医学部入試において不適切な事例があった。不適切な不合格者を救済するため、2019年度に特例的に「医学部入学定員を拡大(増員)」する。ただし、将来の医師需給に影響が出ないよう、2020年度入学分から最長5年間をかけて「医学部入学定員を調整(減員)」する―。

 根本匠厚生労働大臣と柴山昌彦文部科学大臣は、12月25日にこういった方針を固めました。詳細は、各大学において決定されます。

 なお、12月26日に開催された医師需給分科会(「医療従事者の需給に関する検討会」の下部組織)では、この方針に関連して「これまで充足してこなかった地域枠分も、特例的な拡大(増員)を認めるべきではないか」との指摘が構成員から出されています。

医師需給分科会では「地域枠の充足」に向けた臨時特例増員を求める声も

 一部の大学医学部において、入学生の選考にあたり「女学生や浪人生を不利に扱う」という不適切な事例が明らかになりました。この不適切な取り扱いで不合格となった学生については、2019年度に「追加合格」として救済することになります。

ところで医学部の入学定員については、「将来の医師供給数」にダイレクトに影響します。入学定員が少なすぎれば「医師不足」となり、医療提供体制の確保ができず、逆に多すぎれば「医師過剰」となり、「医療機関等経営への影響」や「医療費の増加」などの問題が生じます(医療に置いては供給が需要を喚起する側面がある)。そこで、医師需給分科会で、▼医師偏在対策▼地域医療構想(将来の患者数や疾病構造がどのように変化していくのかを見る)▼医師の人口ピラミッド(医師の年齢構成がどう変化するのかを見る)▼医師の性別・年齢別人口(性・年齢により仕事の量が変わってくる)▼医師の働き方改革―などの要素を加味して、「医師の需給」を推計。その結果を踏まえて、厚生労働省・文部科学省で毎年度の入学定員を精緻に決めています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

このため、本来であれば「追加合格」分は2019年度の入学定員の中で確保すべきなのです。この場合、実際の「合格枠」は少なくなります(追加合格分の減少)。しかし、2019年1-2月を中心に行われる入学試験の直前に、高等学校3年生ら(もちろん浪人生なども含みます)に「直前で申し訳ありませんが、合格枠が少なくなりました」などと伝えることは余りにも酷です(各大学で入試内容などが異なるため、志望校変更なども当然、困難)。

そこで、根本厚労省と柴山文科相は、2019年度の入学分について、「通常の合格枠」に「追加合格」分を上乗せした定員とする増員措置を決定しました。ただし、「教育環境に不都合が出ない」(例えば、実習などの教育環境が適切に確保される)ことなどが条件となります。

さらに、将来の医師需給に影響が出てはいけないため、2020年度の入学分から、最長5年間をかけて「医学部入学定員」を臨時的に減少させます。
医学部入学定員特例措置 181225の図表
 
2019年度の入学分で、どの程度の増員となるかはまだ明らかになっていません。2018年度入試でA大学医学部を不適切に不合格となった学生が、2019年度に追加合格を希望するのか、あるいは別の大学を希望するのか、などの詳細は掴みきれていないためです。今後、各大学において▼2019年度に何名の増員を行うのか▼2020年度以降、何年かけて減員を行うのか―を決め、来年(2019年)1月の早い段階で、受験生等に「募集定員」を公表し、周知することになります。

 
こうした方針は12月26日の「医師需給分科会」にも報告されましたが、そこでは新井一構成員(全国医学部長病院長会議前会長)らから、「地域枠についても学生の充足がなされていないことが明らかになった。臨時特例的な増員で、この分を充足させるべきではないか」との意見が出されています。

12月26日に開催された、「第26回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」
12月26日に開催された、「第26回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」
 
大学医学部入試の地域枠は、「将来、一定期間、地域の医療機関で勤務する」ことを条件に奨学金貸与などを行う仕組みで、「医師偏在対策として、現時点で最も効果的な方法の1つ」と目されています。

この点、厚労省と文部科学省が全大学の状況を調査したところ、「地域枠と一般枠とを分けずに入試を行い、入学後に『地域枠を希望する学生』を募る」などの形で実施していると大学が一定程度、あることが分かりました。この方式では、地域枠を設定して医学部の入学定員を増加したにも関わらず「十分に学生を確保できていない」(地域枠が充足していない)ケースが少なくなく、また「奨学金を返済し、地域枠から離脱する」(地域医療への一定期間従事を放棄する)学生の割合も高く、地域枠設定の効果が薄れてしまっています(このため、今後は「地域枠選抜は、一般入試と別枠で行う」ことになりました)。

 
この「充足していない地域枠」について、臨時特例的な医学部入学定員増で対応すべき、と新井構成員らは要請しているのです。2019年度の入学試験は目前に迫っているため、今から新たな対応を行うことは困難ですが、2020年度以降の入学試験に向け、こうした議論が本格的になされる可能性も否定できません。

 
 

 

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