2019年度予算案を閣議決定、医師働き方改革・地域医療構想・電子カルテ標準化などの経費を計上



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 来年度(2019年度)予算案が、12月21日に閣議決定されました。一般会計歳出は、通常分と臨時・特別分を合わせて101兆4564億円(通常分は99兆4285億円で、前年度当初予算と比べて1兆7157億円・1.8%増)を計上する大型予算と言えそうです。

このうち厚生労働省所管分は32兆351億円(一般会計、前年度当初予算と比べて9089億円・2.9%増)、うち社会保障関係費は31兆5930億円(同8857億円・2.9%増)となりました(厚労省のサイトはこちら(概要)こちら(主要事項)、財務省のサイトはこちら(2019年度予算のポイント))(関連記事はこちらこちら)。
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社会保障関係費、高齢化の範囲内に収めるが、充実分加味すれば「1兆円増」に

 政府全体の社会保障関係費は33兆9907億円で、前年度に比べて1兆円余りの増加となりました。ここから、消費増税に伴う「社会保障の充実」分や「幼児教育の無償化」分を除くと4786億円程度の増加となります。薬価等の実勢価格改定(引き下げ)や介護納付金の総報酬割(40-64歳の第2号被保険者の保険料負担計算において「被用者保険の加入者数」だけでなく「負担能力」も勘案する仕組み)拡大などによって、「社会保障関係費の実質的な伸びを、『⾼齢化による増加分』に収めるとの『新経済・財政再⽣計画』の⽅針を達成できた」と財務省はコメントしています。

 厚労省が所管する社会保障関係費の内訳は、「年金給付費」が11兆9870億円(社会保障関係費全体の37.9%で、前年度当初予算に比べて2.5ポイント増)、「医療給付費」が11兆9974億円(同38.0%、同2.8ポイント増)、「生活扶助等社会福祉費」が4兆3321億円(同13.7%、同1.4ポイント減)、「介護給付費」が3兆2301億円(同10.2%、同0.8ポイント増)などとなりました。ついに医療費給付が「社会保障関係費に占めるシェア」トップとなっています。
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 医療技術の高度化、高齢化の進展(年金制度では「マクロ経済スライド」という給付費を抑える仕組みが導入されている)などによって医療給付費は今後も増加すると見込まれています。さらなる社会保障改革において、「医療」が今後もメインターゲットになると考えられ、2020年度に予定される次期診療報酬改定でも「厳しい」状況となりそうです。

医師の働き方改革や良質な医療・介護サービス提供などが重点事項に

 次に、2019年度厚労省予算案の主要事項を見ていきましょう。労働保険などの特別会計を除く「一般会計」の予算額は、上述のとおり32兆351億円(前年度当初予算と比べて9089億円・2.9%増)で、うち社会保障関係費は31兆5930億円(同8857億円・2.9%増)となりました。

 安倍晋三内閣では、「人生100年時代を見据えた1億総活躍社会の実現を目指して、『全世代型社会保障の基盤強化』を行う」としており、厚労省も(1)働き方改革・人づくり革命・生産性革命(2)質の高い効率的な保健・医療・介護の提供(3)すべての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の推進—の3分野を重点事項に位置付けています(2018年度と大枠としては同じ形)。
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 このうち(1)の働き方改革に関しては、注目される「医療従事者の働き方改革」を進めるために、今年度(2018年度)に比べて8億1000万円増の15億円が計上されています(概算要求時点では21億円の要求)。▼タスク・シフティング(医師から他職種への業務移管)等の勤務環境改善を⾏う医療機関の⽀援▼医療勤務環境改善⽀援センターによる医療機関の訪問⽀援▼看護業務の効率化に向けた取組の推進—などが行われます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

【内訳の大枠】
▼タスク・シフティング(医師から他職種への業務移管)等の勤務環境改善を⾏う医療機関の⽀援:3億9000万円(新規)
▼医師の働き方改革に向けた地域リーダー育成・病院長研修の実施:4800万円(新規)
▼医療勤務環境改善⽀援センターによる医療機関の訪問⽀援:6億円
▼「医療機関への適切なかかり方」等の国民への周知啓発(webサイト作成など):2億2000万円(新規)
▼女性医療職等のキャリア支援(キャリア支援に向けて中核的な役割を担う拠点医療機関の構築):5200万円(新規)
▼地域医療介護総合確保基金による病院内保育所への支援:下記「689億円」の内数
▼看護業務の効率化に向けた取組の推進:2700万円(新規)

 
また、働き方改革では「生産性の向上」が重視され、医療分野では15億円(概算要求では24億円を要求、▼保健医療情報ネットワーク稼働に情報共有に係る課題の検討・実証▼中心的ICUで複数のICU入室患者をモニタリングするTeleーICU体制整備—など)、介護等分野では44億円(同74億円を要求、▼介護ロボットの開発・活用⽀援▼ICTの活用⽀援—など)が計上されています。

さらに、経験・技能のある介護職員を中心とした「新たな処遇改善加算」を創設(213億円を計上)し、介護人材の確保・定着を目指します。

【内訳の大枠】
▼保健医療情報ネットワーク稼働に情報共有に係る課題の検討・実証:1億2000万円
▼中心的ICUで複数のICU入室患者をモニタリングするTeleーICU体制整備:5億円(新規)
▼介護ロボットの開発・活用⽀援:4億8000万円
▼介護分野におけるICTの活用⽀援:6500万円

「データヘルス改革」に722億円超を計上、NDB・介護DBの連結環境等整備

また、(2)の良質な保健・医療・介護提供に関しては、次のような項目が特に目を引きます。

▽地域医療構想をはじめとする「地域医療確保対策の推進」:706億円(前年度に比べ71億円増、概算要求時点では645億円要求、▼地域医療介護総合確保基⾦による⽀援(689億円、後述)▼都道府県の医療⾏政人材の育成—などを実施)(関連記事はこちらこちら

 
▽医師偏在対策の推進:119億円(前年度比6億円増、概算要求では120億円要求、▼「医師少数区域」等で勤務した医師の認定制度開始に向けた調査(5300万円)▼新専門医制度研修に関する⽇本専門医機構への⽀援(3億6000万円)—などを実施)(関連記事はこちら

 
▽災害医療体制、健康危機管理体制の推進:94億円(前年度比89.8億円増、概算要求では55億円を要求、▼DMAT体制の強化▼災害拠点病院等の耐震化等「災害医療体制の充実」—などを実施)(関連記事はこちら

 
▽健康寿命の延伸に向けた予防・健康づくり:31億円(前年度比1億円増、概算要求では63億円を要求、▼市町村による「⾼齢者の保健事業」と「介護予防」の一体的実施の先⾏事例への支援▼生活習慣病の重症化予防▼重複多剤投薬対策等—などを実施)(関連記事はこちら

 
▽がんゲノム医療等の推進:56億円(前年度比11億円増、概算要求では58億円を要求、▼がんゲノム情報管理センター、がんゲノム医療提供体制の充実(がんゲノム医療中核拠点病院の機能強化や、がんゲノム医療拠点病院の新設など)▼治療と仕事の両⽴⽀援—などを実施)(関連記事はこちらこちらこちら

 
▽難病対策の推進:12億円(前年度比5.8億円増、概算要求では11億円を要求、▼難病等の医療費助成におけるマイナンバー利活用による申請⼿続の負担軽減—などを実施)(関連記事はこちらこちらこちら

 
▽データヘルス改革の推進:722億円(前年度比550億円増、概算要求では443億円を要求、▼National Data Base(NDB:医療レセプト・特定健診等情報を格納)と介護保険総合データベース(介護DB:介護レセプト・要介護認定情報を格納)の連結解析に向けた環境整備▼全国的な保健医療情報ネットワークの整備に向けた実証▼医療保険のオンライン資格確認等システムの開発—などを実施)(関連記事はこちらこちら

電子カルテの「データ連結」システム導入等を補助する、300億円のICT化基金

 2019年度中(2019年10月)には消費税率の引き上げが予定されています。この一部(2兆円強)を原資に「社会保障の充実」も行われ、そこでは「地域医療介護総合確保基金の増額」(国費ベースで医療分689億円、介護分549億円)と並んで、「医療ICT化促進基金(仮称)の創設」(同300億円)がひと際、目を引きます。
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この「医療ICT化促進基金(仮称)」の対象事業は、▼オンライン資格確認の導入に向けた医療機関・薬局のシステム整備費(マイナンバーカード等によるオンライン資格確認を円滑に導入するため、医療機関等での初期導入経費(システム整備・改修等)を補助する)▼電子カルテ標準化に向けた医療機関の電子カルテシステム等導入費(国の指定する標準規格を用いて相互に連携可能な電子カルテシステム等を導入する医療機関での初期導入経費を補助する)―の2つです。後者について、厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は、メディ・ウォッチに「電子カルテデータのコンバータシステムの導入などを考えている」とコメントしており、今後示される具体的な「どういった規格に準拠したシステムが補助対象なのか」に注目が集まります(関連記事はこちら)。

 電子カルテについては、仕様がベンダー(メーカー)によって区々であることから、例えば▼地域でICTを活用した連携を行おうとしても、ベンダーが異なるとデータ連結ができず、連携の障壁となっている▼異なるベンダーの電子カルテに切り替えたいが、従前のデータが移行できず、切り替えを躊躇してしまう(ベンダーによるクライアントの囲い込みが生じている)―などの問題点があると指摘されています。このため、「国が最低限の標準仕様を定めるべき」との要望が日本医師会や日本病院団体協議会などから出されており、社会保障審議会・医療部会でも真正面から議論されています。完璧な「標準仕様」の策定には時間もコストもかかりますが、今回のICT化基金がどういった効果を生むのか(コンバータシステムによってデータ連結等の課題は解決するのか、やはり「標準仕様」の策定が求められるのか)、医療現場の動きを注視する必要があるでしょう(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 
 

 

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