2019年度の与党税制改正大綱まとまる、「医療の消費税問題」解決に向けた言及せず



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 自由民主党、公明党は12月14日に2019年度の税制改正大綱をまとめ、公表しました。医療に係る消費税問題については、「診療報酬による補填の精緻化」に言及するにとどめています(自民党のサイトはこちら)。

 ここでは、医療に関連の深い部分をピックアップしてみましょう。

消費税問題の抜本的解決に向けた言及はせず

 まず、なんといっても「医療に係る消費税」問題が注目されます。メディ・ウォッチでも繰り返しお伝えしていますが、医療(保険診療)に係る消費税は非課税となっているため、医療機関等には「最終消費者(患者や保険者)に転嫁できない消費税負担」(いわゆる控除対象外消費税)が発生します。これに対し国は「特別の診療報酬プラス改定」(消費税対応改定)で補填を行うとしていますが、個別医療機関等で診療報酬の算定状況は異なることなどから、「全医療機関等に対し、過不足なく補填を行う」ことは事実上、不可能です。

 このため三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院会協会で構成、以下、四病協)は、「医療界が一致団結できる具体的対応」として次のような仕組みを導入することを今年(2018年)8月29日に提言(関連記事はこちら)。厚生労働省も同様の税制改正要望を行っています(関連記事はこちら)。

(1)特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)による補填を維持する

(2)個別の医療機関ごとに、▼診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額▼控除対象外消費税の負担額(医薬品・特定保険医療材料を除く)—を比較し、医療機関の申告に基づいて「個別の過不足」に対応する

 
 しかし、今般の与党税制改正大綱では、「診療報酬の配点を精緻化することで、医療機関種別の補填のバラつきは是正されるが、実際の補填状況を継続的に調査し、必要に応じて診療報酬の配点方法を見直すことが望まれる」旨を記載するにとどめ、医療界の要望については言及を避けています。今後の医療関係者の動きが注目されますが、抜本解決にはまだ時間がかかりそうです。

 
なお、消費税に関連して、▼医師の勤務時間短縮のために必要な器具・備品・ソフトウェア▼地域医療構想で合意された病床再編等の建物・付属施設▼効率的配置の推進に向けた高額医療機器―について、特別償却制度の拡充・見直しが行われます(下記参照)。

医療スタッフの勤務時間短縮に資する機器やソフトの購入費、一部特別償却の対象に

医療にかかる税制改正ついては、次のような項目が掲げられました。

▽社会医療法人の「診療報酬等収入80%超」要件について、診療報酬等の範囲に「障害福祉サービスに係る収入金額」が加えられた後も、見直し後の社会医療法人について「公共法人の取扱い」、「認定医療法人における、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」、「固定資産税等の特例措置」、「不動産取得税の特例措置」を継続する

 
▽医療機器の特別償却制度(所得税も同様)について、次の見直しを行う。

○共同利用を図るべきCT・MRIについて、▼更新投資では「既存機器の有効利用率が一定以上である」と都道府県が確認する▼新設では「他医療機関との協働利用」を都道府県が確認する▼前2項目の確認なき場合は、「地域医療構想調整会議で配置が適当と認められた」ことを都道府県が確認する―こととし、対象機器の見直しと、2年間の期限延長(2021年3月31日までに)を行う

○青色申告書を提出する医療保健事業を営む法人が、2019年4月1日-2021年3月31日の間に、一定規模以上の「勤務時間短縮用設備」(医療勤務環境改善支援センターの助言を受け、勤務時間短縮の効果ありと確認された「医師勤務時間短縮計画」に基づいて取得した器具やソフトウェアで、1台・1基が30万円以上のもの)を取得し、その医療保健事業に供した場合、取得価額の15%について特別償却を認める

○青色申告書を提出する医療保健事業を営む法人が、2019年4月1日-2021年3月31日の間に、地域医療構想に適合する病院用建物等(▼既存の病院等用建物・附属施設について、その用途を廃止し、これに代わるものとして新設される▼改修により「ある病床機能区分(回復期など)に応じた病床数」が増加する―のいずれかに該当し、地域医療構想調整会議の「機能区分に応じた病床数の増減」方針に合致することが確認されることが必要)を取得などし、その医療保健事業に供した場合、取得価額の8%について特別償却を認める

 
▽特定医療法人(医療の向上や社会福祉への貢献に資するとして、税制上の優遇を認められた医療法人)の法人税特例(通常23.2%が19%に軽減される)の要件となる「診療報酬等収入80%超」について、診療報酬等の範囲に「障害福祉サービスに係る収入金額」を加える

 
▽保険診療に係る事業税非課税措置などについては、▼税負担の公平性▼地域医療の確保―の観点から、その在り方を今後も検討していく

 
 
 
 
 

 

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