医療の消費税問題、「法人税で個別医療機関の補填過不足を調整する」仕組みは認められない―日病協



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 医療における「控除対象外消費税」問題を抜本的に解決するために、現在の「特別の診療報酬プラス改定による補填」を維持した上で、個別医療機関等ごとに「補填の過不足に対応する」仕組みの創設が必要だが、その際「法人税によって控除対象外消費税を控除する」ことは、法人税非課税となっている公立病院や社会医療法人病院などにおいて問題は解消されないため、認められない―。

 多くの病院団体で構成される日本病院団体協議会の代表者会議は、11月30日にこういった声明「控除対象外消費税問題解消に向けての考え方」を取りまとめました。近くまとまる2019年度の税制改正に向けて、自由民主党などに早急に働きかけていくことになります。

11月30日の日本病院団体協議会・代表者会議後に、記者会見に臨んだ山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同会高月病院院長、向かって左)
11月30日の日本病院団体協議会・代表者会議後に、記者会見に臨んだ山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同会高月病院院長、向かって左)
 

法人税での対応では、法人税非課税の公立病院や社会医療法人病院では補填がなされない

 保険医療については「消費税は非課税」となっているため、医療機関等が納入業者から物品等を購入する際に支払った消費税は、患者や保険者に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる「控除対象外消費税」と呼ばれる)。このため、物価や消費税率が上がれば、医療機関等の負担が大きくなるため、1989年の消費税導入時から「医療機関等の消費税負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定を行う」(以下、消費税対応改定)こととなっています(消費税導入時の1989年度、消費税率引き上げ時の1997年度、2014年度)。

 しかし、診療報酬による対応では、例え初再診料や入院基本料などの「基本料」に増点を行ったとしても、算定状況が個別医療機関で異なるために、「個別医療機関の補填の過不足」を解消することはできません。今般、2019年10月予定の消費税率引き上げ(8%→10%)に向けて、消費税対応改定の精緻化が中央社会保険医療協議会で議論され、「病院種別の補填の過不足」には相当程度対応できることが明らかになりましたが、「個別医療機関の補填の過不足」は調整のしようがないのです(関連記事はこちら)。

このため三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院会協会で構成、以下、四病協)は、「医療界が一致団結できる具体的対応」として次のような仕組みを導入することを今年(2018年)8月29日に提言しました(関連記事はこちら)。厚生労働省も同様の税制改正要望を行っています(関連記事はこちら)。

(1)特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)による補填を維持する

(2)個別の医療機関ごとに、▼診療報酬本体に含まれる消費税補填相当額▼控除対象外消費税の負担額(医薬品・特定保険医療材料を除く)—を比較し、医療機関の申告に基づいて「個別の過不足」に対応する

 このうち(2)の「個別の過不足への対応」について、一部では「法人税によって控除対象外消費税負担を控除する仕組み」が議論されているようです。しかし、法人税が「非課税」となっている公立病院や社会医療法人など、「公益性が高く、地域医療確保の中核をなす医療機関」では、この仕組みによっては対応がなされないことは火を見るよりも明らかです。

 そこで四病協に加えて、国立大学附属病院長会議や全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、国立病院機構、日本慢性期医療協会なども参画する「日本病院団体協議会」の代表者会議では、「すべての医療機関が不公平とならないような実効性のある対策が必要」との声明をとりまとめました。さらに、こうした実効性のある対策が実現しない場合には、「引き続き、控除対象外消費税問題の抜本的な解決に向けて検討する」よう求めています。

 2019年度の税制改正大綱が近く取りまとめられるため、日病協では、早急に自由民主党(12月3日に党としての税制改正大綱をまとめる予定)をはじめとする関係者に、この声明を伝達し、対応を求める考えです。

 
 なお、医師の働き方改革に向けて、厚生労働省は11月19日の「医師の働き方改革に関する検討会」において、勤務医の行う「研鑽(自己研鑽)」と「労働」とを峻別するとともに、「勤務終了後に病院内にとどまり、研鑽を行う場合には、上司の許可を得る」などといった手続きを行うことで、過重労働に歯止めをかける考え方を提示しました(関連記事はこちら)。しかし、日病協の代表者会議では「現場が混乱しかねない」という意見が相次ぎ、厚労省に「より簡便な手続きについて、具体的な案を提示してもらうよう、再考を求めていく」点で一致しました(関連記事はこちら)。

 
 

 

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