費用対効果評価、企業と公的機関の分析に齟齬が出ないよう、適宜「協議」を行う―中医協・費用対効果評価合同部会



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 費用対効果評価の制度化に向けて、「企業側の分析結果」と「公的分析チームの分析結果」との間に齟齬が出ないよう、適宜、両者が協議を行うこととし、協議内容は費用対効果評価専門組織で決定する。また、こうした枠組みが構築された場合、公的分析チームは「企業側分析の検証」を主に行い、企業側分析に問題がある場合に、独自の分析(再分析)を行うこととしてはどうか―。

 11月21日に開催された中央社会保険医療協議会の「費用対効果評価専門部会」「薬価専門部会」「保険医療材料専門部会」の合同部会(以下、合同部会)で、こういった点が議論されました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

11月21日に開催された、「第12回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会 合同部会」
11月21日に開催された、「第12回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会 合同部会」
 

企業側と公的分析チームとの「分析結果の齟齬」解消が制度化に向けた重要ポイント

 医薬品・医療機器をはじめとする医療技術の値決めにあたり、費用対効果評価結果を活用する―。こういった議論が行われています。「医療保険財政が厳しくなる中で、『有効性・安全性が確認された医薬品・医療技術をすべて保険収載する』という現在の仕組みを維持することは難しくなってくる可能性がある。今後は、『費用対効果も勘案した保険収載の仕組み』を検討する必要があるのではないか」と、2012年度診療報酬改定に関する中医協論議において、当時の森田朗会長(津田塾大学総合政策学部教授)がこう発言したことに端を発したものです。現在は「医療費適正化効果」の観点から骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)などでも強く指摘されています。

費用対効果評価に関しては、これまでに、(1)既収載品13品目等を対象に費用対効果評価を試行導入し、2018年度の薬価・材料価格改定時に再算定を行う(暫定的に実施済)(2)2018年度中に制度化(本格導入)に向けた検討結果を取りまとめる—ことが決まっています。

11月21日の合同部会では、(2)の制度化に向けて▼対象品目選定のタイミング等▼分析前の事前協議▼費用対効果評価専門組織の関与▼価格調整のタイミング―などを議論しました。

費用対効果評価の仕組みは非常に複雑ですが、そのポイントは「ある医療技術(β)の費用と効果を、類似の医療技術(α)と比較し、▼優れていればβの価格を維持または引き上げる▼劣っていればβの価格を引き下げる―」というところにあります。

この「費用」と「効果」については、(1)の試行の中で▼企業(製薬メーカー、医療機器メーカーなど)による独自の分析結果▼公的な組織(再分析チーム)による分析結果―に大きな齟齬の出るケースがあることが分かりました(関連記事はこちら)。費用対効果評価では、ガイドライン等が定められていますが、データの取り方の違いなどで齟齬が出てしまうのです。例えば、(1)の試行対象となった「オプジーボ」(ニボルマブ製剤)については、企業側が投与期間について「最大24か月」と設定して分析を行ったのに対し、公的分析チーム(再分析チーム)では一律の投与期間上限を設けずに分析を行ったため、結果に齟齬が出てしまいました(齟齬を埋め、今後、薬価や材料価格の見直しが検討される)。
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こうした齟齬を解消するためには、企業と公的分析チームとで事前に協議を行い「分析の枠組みなどに関する認識を揃えておく」こと、また分析を進める中で「当初予定との違い」が出た場合に「速やかに協議を行う」こと、などが重要となるため、厚生労働省保険局医療課の古元重和企画官は、これらを仕組み化する考えを提示しました。中医協委員も、同様の考えですが、「協議が『交渉』になってはいけない」ため、一定の工夫(例えば企業側と公的分析チームの直接の協議を避ける)を行うことを強く求めています。

また、協議には「臨床の専門家」等が入り、臨床的・科学的妥当性、中立性などを確保することになります。「臨床の専門家」は予め分野ごとに選定されますが、外部からの干渉などの恐れもあるため、メンバーは公表されません。

さらに、事前協議等の内容は「決定する」必要があります。企業側と公的分析チームで見解が異なった場合には、すり合わせを行うのみでなく、「こうした枠組みとする」と明確に決めておかなければ、上記の齟齬は解消しないからです。古元企画官はこの点、「費用対効果評価専門組織」が▼事前協議の内容確認、分析の枠組み等の決定▼企業分析の内容の確認(決定された分析の枠組みに基づいて分析が行われているかなど)▼企業分析ならびに再分析チームによる公的分析の結果に基づく総合的評価(アプレイザル)—のそれぞれに関与することを提案し、了承されました。企業側と公的分析チームとで見解が異なるなどの場合には、費用対効果評価専門組織が公正・中立な視点で、いわば「裁定」することになります。
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公的分析チームは、「企業側分析の科学的妥当性」などの検証を行う

このように事前協議などが十分に行われた場合、「企業側の分析結果」と「公的分析チームによる分析結果」との間に、大きな齟齬はなくなると考えられます。このため古元企画官は、後者の公的分析チームについて、「企業分析の結果について科学的妥当性を検証」し、▼一定の質が担保されている場合には再分析は行わない▼企業分析に課題があり、科学的妥当性に疑義がある場合などは、新たに独立した分析(再分析)を行う―よう役割を見直す考えを示しました。いわば、公的分析チームは「企業分析の検証」に特化する形になります。

 
なお、企業側が「データ集積などが難しく分析できない」と判断した場合、費用対効果評価の手続きを中止することになります(費用対効果評価結果に基づく価格調整は行われない)。ただし、企業側に「価格調整(引き下げ)は困る。分析不能と回答して、価格調整を阻止しよう」というモラルハザードが生じてはいけません。古元企画官は、「企業側で分析不能と回答しても、公的分析チームで『いや、こうしたデータを用いれば分析が可能である』と認めた場合には、公的分析チームの分析結果を用いて費用対効果評価を行う」考えを示しました。

さらに古元企画官は、こうした分析や協議の「標準的期間」も提示しました。試行の経験を踏まえたもので、▼企業分析:9か月程(分析の枠組み等を決定する事前協議:6か月程度、枠組みに基づく企業分析:3か月程度、公的分析:3か月程度(ただし再分析を行う場合は6か月))▼総合的評価(アプレイザル)および価格決定:3か月程度—とされています。今後、費用対効果評価の仕組みが浸透する中で、企業側および公的分析チームの分析スキルが向上していけば、標準的期間も徐々に短くなっていくことでしょう。

 
こうした費用対効果評価結果は、最終的には「価格調整」に用いられます。医療保険財政に鑑みれば「評価結果は迅速に薬価や材料価格に反映させるべき」と考えられますが、一方で、頻繁な公定価格の見直しは「メーカーや卸業者、さらには医療機関のシステム改修負担等を増大させる」ことにもなってしまいます。このため、診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)らは「多くても、年4回(2018年度の薬価制度抜本改革により、市場拡大再算定などは最大で年4回行われることになった)にとどめるべき」と求めています。

 
なお、費用対効果評価の対象について、▼新規収載品については保険収載を機に選定する(年4回)▼既収載品については新規収載品の状況を踏まえつつ、選定基準(補正加算の付与など)を満たす品目から優先的に「評価が必要な品目」を選定する―との考えも固められました。

 
 

 

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