勤務医の労働と研鑽との切り分け、「あまりに非現実的」―日病・相澤会長



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 「医師の働き方改革に関する検討会」に関する検討会で、勤務医の労働と研鑽を切り分けし、研鑽を行う場合には予め申請し、上司の確認を得る、などの提案が厚生労働省からなされているが、あまりに非現実的で立腹している―。

 日本病院会の相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)は、11月20日の定例記者会見でこのような考えを示しました。

 また、仮に上記のような仕組みを導入するのであれば、「人事労務担当者を少なくとも1人雇用できるだけの財源的な裏付けをすべきである」とも訴えました。

11月20日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)
11月20日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の相澤孝夫会長(社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長)
 

研鑽・労働の切り分け等を導入する場合、「人事労務担当者」雇用の財源確保が必要

 メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、11月19日に開催された「医師の働き方改革に関する検討会」で、厚労省から、次のような「研鑽と労働」に関する考え方が提案されました(関連記事はこちら)。

▽医師は、「最新の医療技術・知識」の獲得に向けて不断の研鑽が求められる

▽勤務医が自由意志で(上司の指示によらず)、業務と関連の薄い行為を、一定の手続き(研鑽を行う旨の申請と、上司の確認)を経て行う場合には「研鑽」に該当する

▽「業務と関連する行為を行う」あるいは「上司の指示によって行為を行う」場合には、当該行為は「労働」に該当する

 
この考え方について相澤会長は、「あまりに非現実的で、腹立たしい」と強い不快感を示しました。

たとえば「研鑽」と「労働」との切り分けについては、「医療においては両者が絡まり合っており、切り分けることは事実不可能」と指摘。例えば、「手術の見学」についても、「純粋な見学は研鑽、鈎引きの手伝いなど、少しでも手を出せば労働」と切り分けることが可能かもしれませんが、相澤会長は「ほぼすべての手術見学は、労働に該当するのではないか。現実にマッチしていない」と、切り分けの難しさを説明します。

また「研鑽を行う場合の上司への確認」についても、相澤会長は「部下(研鑽を行おうと考える勤務医)も上司も書類を作成し、それを人事担当者が確認し、毎日、労働時間かどうかのカウントを行わなければならない」とし、医療従事者のみならず事務担当者も多忙な医療現場では「非現実的である」と切って捨てました。

さらに、仮にこうした仕組みを導入するとなれば、「各病院において、少なくとも1名、研鑽・労働の切り分けなどに携わる人事労務担当者を確保できるような、財源的裏付けが必要」と強調しました。
 
11月19日の「医師の働き方改革に関する検討会」でも、実行可能性に疑問を唱える構成員も少なくなく、今後の検討会論議などがどう進むのか、余談を許さない状況のようです。

100万円以上500万円未満の医療機器も、「特別償却」の対象に加えるべき

ところで、500万円以上の「高額医療機器」については、病院の安定運営等に鑑みた税制上の配慮(特別償却、取得額の12%を前倒しして減価償却に充てることで税負担を軽減できる)がなされています(2017年度の税制改正で2019年3月31日まで延長されている、関連記事はこちら)。

一方、病院に配置される医療機器等を眺めると、上記特別償却の対象とならない「100万円以上500万円未満」の機器が相当数あります。日本病院会の会長・副会長が所属する病院では、こうした「100万円以上500万円未満」の医療機器の取得総額が2000万円から、多いところでは9億円を超える状況で、「相当程度、病院経営を圧迫している」状況です(例えば、生体情報モニタ、多用途透析用監視装置、超音波診断装置、汎用人工呼吸器、血液ガス分析装置、心電計などなど)。

あわせて、医療機器の「保守管理」に係る費用も、1病院あたり1億3000万円(医療法人)から6億8200万円(国立病院機構)と高額になっている現状もあります。背景には、「機器の製品価格を低価格に抑える」ことで製品の購入を促し、「消耗品価格などを含めた保守管理料を高額に設定する」という医療機器メーカーの販売戦略もありますが、やはり「病院経営を圧迫する」要素の1つになっていると指摘されます。

相澤会長は、病院の安定経営を確保するため、来年度(2019年度)の税制改正において、▼「100万円以上500万円未満」の医療機器の購入費▼医療機器保守管理料―について、税制上の特別措置、具体的には「特別償却の対象とする」ことを国会議員に宛てて要望している(来年度(2019年度)の税制改正大綱は、12月中旬には固められるため、精力的に要望している)ことも報告しました。

 
 

 

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