地域医療支援病院、「在宅医療支援」「医師派遣」等の機能をどう要件化すべきか―特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会



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 改正医療法に定められた「医師少数区域等を支援する機能」を持つ地域医療支援病院の要件をどのように設定するか、また地域医療支援病院全般について「在宅医療を支援する機能」などをどのように考えるか―。

 こういった議論が11月16日に開催された「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」で、本格的にスタートしました。

 厚生労働省は「来年(2019年)夏頃に要件の見直し内容を取りまとめたい」と考えていますが、構成員からは「地域医療支援病院制度のあり方(つまり制度の廃止)も含めて抜本的な議論が必要」との声も出ており、議論の行方は不透明です。

11月16日に開催された、「第15回 特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」
11月16日に開催された、「第15回 特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」
 

要件設定にとどまらず、「地域医療支援病院のあり方」そのものを議論すべきとの意見も

 地域医療支援病院は、1997年の第3次医療法改正において「かかりつけ医を支援する病院」として創設されました。例えば、▼診療所等で対応できない重症の患者を地域医療支援病院に紹介し、一定の治療を終えた後にはかかりつけの診療所に逆紹介してもらう▼すべての診療所で高額な医療機器を整備することは難しいため、地域医療支援病院に機器を整備し、地域の診療所医師も共同利用可能とする―ことなどが期待されました。

 現在、(1)紹介患者への医療提供(かかりつけ医への逆紹介も含む)(2)医療機器の共同利用(3)救急医療の提供(4)地域の医療従事者への研修の実施―という4つの役割・機能が求められ、それぞれが「承認要件」に落とし込まれています(すべての要件を満たさなければ地域医療支援病院として承認されない)。
特定機能病院・地域医療支援病院あり方検討会 181116の図表
 
 ただし、各機能への取り組み状況には「差がある」と指摘されるとともに、地域医療構想の実現に向けた「機能の変化」が生じている可能性があります。

地域医療構想に関しては、地域の病床(一般・療養)の機能が▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―のいずれに該当する(最も近い)のかを明確にし、ニーズ(患者の状況)とのミスマッチをなくすことが最も重要です(慢性期医療が必要な患者の多い地域で、多数の急性期病床しかなければ、それは患者にも医療機関にも不幸である)。また地域医療支援病院は、公立病院や公的病院等(日赤や済生会など)、特定機能病院などと並んで、その機能を「当該病院でなければ担えない分野」に重点化していくことが求められており(関連記事はこちらこちらこちら)、従前とは異なる機能へのシフトを検討・実施している可能性があるのです。

さらに、地域医療支援病院には「在宅医療を行う医療機関の支援」も期待されています。超高齢社会では「要介護度が高くなっても、地域での生活継続を可能とする」という地域包括ケアシステムの構築が急がれていますが、「急変時には連携先の病院に入院し、適切な医療が受けられる」という安心感が、患者の在宅療養維持にとって極めて重要なためです。しかし、「在宅医療支援」は承認要件となっていないこともあり、「十分にはなされていない可能性がある」との指摘があります。例えば、2014年度の診療報酬改定で創設された【在宅療養後方支援病院】の届け出状況を見ると、586(2018年9月時点)の地域医療支援病院中96病院・16.4%にとどまっています(ただし、「在宅医療の支援」=「在宅療養後方支援病院の取得」という構図にはないことを相澤孝夫構成員・日本病院会会長は強く強調)。

このように、「地域医療構想の実現」「地域包括ケアシステムの構築」が急がれる中では「地域医療支援病院の機能」について改めて考える必要があり、厚生労働省は11月16日の検討会に、次の2つの論点を提示しました。

▼在宅医療を提供する「かかりつけ医」を後方から支援する機能(緊急入院を受け入れる体制の確保など)を明確化してはどうか

▼地域で異なる「かかりつけ医のニーズ」に応えられるように、地域医療構想調整会議の協議を踏まえて、「独自の機能要件」を追加できるようにしてはどうか(上記の4要件+α)

 11月16日の会合では、この2点への反論こそ出ないものの、構成員から「より抜本的に、地域医療支援病院のあり方そのものを議論する必要がある」との指摘が相次ぎました。

 例えば島崎謙二構成員(政策研究大学院大学教授)は、「これまでにも検討会では、地域医療支援病院制度を廃止し、個別の機能(上記4機能など)を診療報酬で評価すればよい、という意見も出ていた。そうした視点での議論も継続すべき」と指摘(関連記事はこちら)。

 また中川俊男構成員(日本医師会副会長)も、「地域医療支援病院は一定の役割を終えたと感じている。診療報酬ともリンクさせた議論をしていく必要がある」と提案しました。地域医療支援病院には、入院基本料等加算として【A204 地域医療支援病院入院診療加算】(入院初日に1000点)が設けられ、上記の4機能等が経済的に評価されています。一方、4要件すべては満たさないものの、「一定の役割を果たしている病院」も少なくありません。「地域医療支援病院という枠組みを維持するのか」「その枠組みに特化した評価を継続するのか」など、地域医療支援病院の機能が変化していく中では、今後の重要な検討テーマとなる可能性があります。

一方、相澤構成員は、「地域では、従前は『病診連携』(病院とかかりつけ医との連携)が重要な課題であたことから、地域医療支援病院は比較的『大規模』なものと考えられた。しかし、病院の機能分化・連携が進む中では、地域医療の課題は『病病連携』(急性期病院と回復期・慢性期病院との連携)や『高齢者への医療提供』にシフトしてきている。ここを踏まえて、抜本的に『地域医療支援病院のあり方』を検討する必要がある」と強調しました。

厚労省もこうした意見を重視し、上記の2論点を含めた「地域医療支援病院のあり方」を議論してく考えを示しています。

なお、吉川久美子構成員(日本看護協会常任理事)は、地域医療支援病院に求められる機能には、「地域医療機関や訪問看護ステーションなどへの看護師派遣」などもあるのではないか、と指摘。実際に、茨城県立中央病院(水戸市)から地域の医療機関・訪問看護ステーションに看護師派遣がなされている実態があるといいます。吉川構成員は「要件化に向けた議論」を要請しましたが、中川構成員は「大病院への看護職員集中が問題となっている。拙速な検討は難しい」と難色を示しています。

 
ところで、議論にあたっては、地域医療支援病院の実態(実際にどういった機能を果たしているのか)を把握する必要があります。前述のように「地域医療構想の実現」に向けた議論が急ピッチで進む中では、「現時点での地域医療支援病院の姿」を見える化する必要性はさらに高まっていると言えるでしょう。

厚労省研究班(地域医療支援病院等の医療提供体制上の位置づけに関する研究班)(代表研究者:東京医科歯科大学伏見清秀教授)では、▼地域医療支援病院の偏在▼自治体の考え▼医療提供に状況―などを詳しく調査(近く調査票発出)。来年(2019年)3月には調査結果が示される見込みです。

医師少数区域等へ医師派遣を行う地域医療支援病院を「新たな類型」として評価

 医療提供体制に関しては、機能分化や連携強化などとならび「偏在の是正」が重要テーマの1つとなっています。是正策の1つとして、改正医療法では、「医師少数区域等で一定期間勤務することで地域医療への知見を持った医師」を厚生労働大臣が認定し(認定医師)、一定の病院では「認定医師であることを管理者・院長の要件」とするといった仕組みが設けられました。
医師需給分科会 180928の図表
 
この仕組みを議論してきた「医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会」では、対象病院として「地域医療支援病院」を想定し、▼医師派遣▼プライマリケアの研修・指導—などの機能を要件としてはどうか、との具体的な考えを提示していました(関連記事はこちらこちら)。

厚労省はこれらを踏まえ、例えば▼医師少数区域等の医療機関へ医師を派遣する(代診医の派遣を含む)▼地域の医療機関へ24時間の技術的助言を行う▼プライマリケアの研修・指導を行う―などの機能を持つ地域医療支援病院を、「地域医療支援病院」の1類型としてはどうかと提案しました。例えば、「特別地域医療支援病院」や「地域医療支援病院A」などに位置づけ、一般の地域医療支援病院とは異なる評価を行うイメージです。医師少数区域の医療機関にとっては、非常に「頼もしい」存在となることでしょう。

この点、沖縄県の県立中部病院では、琉球大学医学部等と連携して、2010-18年の累計で76名の医師を離島に派遣していますが、併せて▼離島で働くことを目指す医師の養成(島医者養成プログラム)▼離島医師からの相談に365日・24時間応じるなどの診療支援▼働きやすく住みやすい環境の整備―を実施しています。上記の要件を「先取りして実施している」と見ることもできますが、後述するように「沖縄県立中部病院などの取り組みを参考に、国が要件を考えていく」というのが正しい理解でしょう。

例えば、相談体制としては、「治療方針やヘリ搬送の判断について、県立中部病院の救急室に24時間相談できる」仕組みや、「ウェブシステムを活用したミーティングの実施」「指導医による離島訪問」などが、環境整備としては、「代診医を確保し、離島医師が学会等に参加、休暇を取得できる仕組み」「基本的に2年間で終了するローテーション」(ハードルが下がり離島に行きやすくなる)などが目立ちます。

新たな要件を考える上で、沖縄県立病院の取り組みは、極めて重要な「参考事例」となります。今後の要件設定論議に注目する必要があります。

 
医療提供体制や診療報酬などで設けられる要件は、机上で創設されるのではなく、実際の「先進事例」を参考に設定されます。沖縄県立中部病院のように、「要件を追いかける」のではなく、「制度や報酬の基準から追いかけられる、参考に位置付けられる」存在となれば、「制度改正や診療報酬改定の都度に慌てる」という事態を避けることができます(もちろん、すべての基準等から追いかけられるパーフェクトな存在はあり得ないが)。

 
 

 

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