薬価・材料価格の消費税対応、中医協は「2019年10月価格改定」方向を固める―中医協・薬価専門部会、材料専門部会



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 来年(2019年)10月の消費税率引き上げに対応するため、医薬品や特定保険医療材料の償還価格(薬価、材料価格)も見直す必要がある。見直しの時期は、今年末の予算編成過程で決定することになるが、中央社会保険医療協議会としては「消費税率引き上げと同時、つまり来年(2019年)10月の見直しが自然である」との認識で薬価等の改定に向けた検討をしていく。また、あくまで「消費税率引き上げの臨時的な対応」であることから、薬価等の再算定ルールについては「実勢価格等を踏まえて行うもの」のみとすべきである―。

 11月14日に開催された中央社会保険医療協議会の薬価専門部会と保険医療材料専門部会で、こういった方向が概ね確認されました。近く、業界団体からのヒアリングなどを実施し、さらに改定内容を詰めていきます(関連記事はこちら)。

11月14日に開催された、「第147回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
11月14日に開催された、「第147回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
11月14日に開催された、「第94回 中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会」
11月14日に開催された、「第94回 中央社会保険医療協議会 保険医療材料専門部会」
 

薬価では「基礎的医薬品」「最低薬価」「新薬創出等加算」に限定して適用

 消費税率が見直される(引き上げられる)場合、薬価・材料価格(以下、薬価等)については、「消費税引き上げ分を上乗せする」という対応が採られています(消費税対応改定)。来年(2019年)10月に消費税率が8%から10%に引き上げられる予定で、薬価等についても価格見直しが必要となり、中医協では、大きく次の4つの論点に沿った検討が進められています。
(A)改定の趣旨をどう捉えるか(「通常改定」の一環と捉えるか、あくまで「臨時的」「特例的」な対応と捉えるか)
(B)改定の時期をどう考えるか(消費税率が引き上げられる2019年10月とすべきか、たがえるべきか)
(C)改定の計算式をどう設定するか
(D)薬価・材料価格の見直しルールを適用すべきか

 まず(A)の改定の趣旨については、10月31日に開催された前回会合で「あくまで消費税率引き上げに対応するための、臨時的・特例的な改定である」ことが確認されました。

 ここから、(C)(D)の「算定式」「見直しルール」についても、通常改定とは異なり、「一部に限定」して適用する方向が見出され、厚生労働省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官・古元重和企画官は、具体的な適用方針を提示しました。

【薬価の消費税対応改定方針】
▼市場実勢価格に基づく価格調整を行ったうえで、消費税率引き上げ分の上乗せを行う

▼基礎的医薬品における「改定前薬価維持」ルールを適用する(ただし、個別品目に係る乖離率の要件(全ての既収載品の平均乖離率以下)を満たさない品目は、対象から除外する)

▼最低薬価について「消費税引き上げ分」の上乗せを反映する

▼新薬創出・適応外薬解消等促進加算(以下、新薬創出等加算)について、加算は適用するが、累積控除は行わない。また企業指標は暫定的(2018年度時点のものを継続使用するなど)に適用する

【材料価格の消費税対応改定方針】
▼市場実勢価格に基づく価格調整を行ったうえで、消費税率引き上げ分の上乗せを行う

 
 また薬価・材料価格のいずれにおいても、「改定の回数」などを要件に組み込んだルールがあります。例えば、材料価格では、画期的な製品について、類似品登場による償還価格の低下(低価格の類似品が同じ機能区分となれば、機能区分全体で同一償還価格が設定されることから、画期的製品の価格も低くなってしまう)を避けるために、「新規収載から2回の改定を経るまで、(事実上)単独の機能区分を維持する」といった仕組みが設けられています(機能区分特例)。この点、今回の消費税対応改定はあくまで臨時的・特例的なものであり、これらの「改定の回数」にはカウントしない方針が厚労省から示されました。
中医協・保険医療材料専門部会 181031の図表追加
 
 こうした方針に、診療側・支払側双方の委員が賛同し、「方向は概ね固められた」と見ることができます。中医協では、近く業界団体から意見を聴取した上で、具体的な方針を確定される構えです。

 
 ただし、新薬創出等加算について、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)から、「加算は適用するが、累積控除は適用しない」という考え方は矛盾しているのではないかとの指摘も出ています。

 新薬創出等加算は、一定の要件を満たす医薬品について、「後発品が出現するまで」あるいは「上市から15年を経過する」まで、薬価を下支えするものです(通常であれば実勢価格に基づいて薬価が引き下げられるが、一定部分を加算で補填する)。ただし、後発品出現等の直後の改定において「加算がなければ、なされていたはずの価格引き下げ」の累積分が引き下げられます(累積控除)。
中医協・薬価専門部会1 181031
 
 幸野委員は「加算も、累積控除も、いずれも政策的に実施される一体的なものと理解している」とし、「加算を適用するのであれば、累積控除も行う」「累積控除を行わないのであれば、加算も適用しない」との考えが合理的なのではないか、と指摘したのです。

 この点、田宮薬剤管理官は、「今般の消費税対応改定では『実勢価格に基づく薬価引き下げ』を補正するルールを適用することにした。新薬創出等加算は、まさに補正ルールの1つであり、適用することになる。また累積控除については『2年に一度の通常改定時に実施する』考えを維持する(今般の消費税対応改定で実施しない)ことで、政策的意義が失われるものではない」と答弁し、理解を求めました。

 確かに、2018年度の前回薬価改定から、今回の消費税対応改定までに後発品が登場した新薬創出等加算の対象品目について、「2019年10月に累積控除を行う」場合と「2020年4月(通常改定)に累積控除を行う」場合とでは、財政的に一定程度の影響が出ます。しかし、製薬メーカーへの影響(本来であれば累積控除は2020年4月になされるはずであった)等も考慮し、今般の判断に至ったものと考えられます。

2019年10月に薬価等の価格を見直す方向を確認、2020年4月の通常改定への注文も

 (B)の改定時期については、「2019年10月の消費税率引き上げと同時期に行う」ことが自然です。

 しかし、その場合、「2020年4月には通常の薬価等改定が控えているが、その基礎データは『2019年9月(材料価格では5-9月)の実勢価格』となり、消費税対応改定の影響が反映できない」という課題がありました。

 この点、田宮薬剤管理官は「これまでの通常改定でも、実勢価格調査後の変動を把握・反映できていない点は同じである」との考え方を説明し、多くの中医協委員もこれに納得していました(長期的にみれば、さらに先の改定で反映される)(関連記事はこちら)。

 この場合、▼2019年10月に消費税対応改定を行う▼2019年の調査結果をもとに、2020年4月に通常改定を行う―こととなり、短期間に「2度」の薬価等見直しが行われることになります(下図の(1))。

 
 一方、幸野委員は「より精緻に価格見直しをする必要がある」とし、▼2018年の薬価等調査結果を踏まえて、2019年の4・5月に一度改定(引き下げ)を行う▼2019年10月に消費税対応改定を行う▼2019年の薬価等調査結果を踏まえて、2020年4月に通常改定を行う―という3段階の薬価等見直しを行ってはどうかと提唱したのです(下図の(2))。
薬価専門部会 181114の図表
 
 価格見直しの頻度を上げることで、「より精緻に実勢価格に合わせることができる」ようにも思えますが、田宮薬剤管理官は、必ずしもそうなるとは限らない旨を指摘しています。医薬品等の実勢価格は、改定から時間をかけて医療機関と卸業者等が交渉する中で固まっていきます。改定から時間を空けず、幸野委員の指摘するような、短期間での頻回の改定では、そもそも実勢価格が固まっておらず(調査後に大きく変動する可能性もある)、「実勢価格の精緻な把握」が難しくなり、結果、価格引き下げも十分なものとはならない可能性があるのです。

さらに頻回な薬価等の改定は、医療機関等におけるシステム更新負担にもつながります。こうした点を総合的に踏まえ、中医協では、▼2019年10月に消費税対応改定を行う▼2019年の調査結果をもとに、2020年4月に通常改定を行う―という2段階方式で意見が固まりました。

ただし、改定の時期は、年末の予算編成過程で決まるため、現時点では「中医協の考えがまとまった」にとどまります。仮に、「2019年10月とは異なる時期に薬価等を見直す」との方針が予算編成過程で決まった場合には、改めて中医協で対応を検討する必要が出てきます。

 
なお、2020年4月の通常薬価等改定では、前述したように「消費税対応改定後の実勢価格動向」を反映させることはできません。このため、とくに支払側委員は「これまでとは異なる特別のルール」を2020年度改定に向けて検討していくことを強く要請しています。

 
  
  

 

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