在宅医療推進に向けて、市町村支援など「都道府県がすべき取り組み」を整理―在宅医療ワーキング



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 在宅医療の推進に向けて、都道府県は市町村支援に力を入れるとともに、第7次医療計画の改善、関連部局の連携、医療機関間連携のルール策定、住民への普及・啓発などに取り組んでほしい。また、その取り組み状況の可視化も重要である―。

 11月12日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下ワーキング)で、こういった内容を盛り込んだ「議論の整理」を行いました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

田中滋座長(埼玉県立大学理事長)と厚生労働省で、構成員の意見を踏まえた一部修正を行い、早ければ年内(2018年内)にも都道府県等に宛てて通知される予定です。

11月12日に開催された、「第7回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」
11月12日に開催された、「第7回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」
 

在宅医療推進に向けた目標など、全都道府県で確実に第7次医療計画に記載せよ

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急増していきます。こうしたニーズに効率的・効果的に対応するためには、「病院・病床の機能分化、強化および連携の強化」「地域包括ケアシステムの構築」を進める必要があり、その一環として全都道府県で「地域医療構想」が策定され、現在、その実現に向けた議論が各地域医療構想調整会議で進められています。

 地域医療構想では、地域の一般・療養病床を▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―に再編していくことに加え、在宅医療提供体制の充実も重要テーマの1つに据えられています。高齢化の進展によって在宅医療ニーズが増加することはもちろんですが、厚労省は、例えば「療養病床に入院する医療区分1患者の7割は在宅や介護施設へ移行する」という目安を示しており、さらに「追加的」な在宅医療ニーズが発生します。2025年度における在宅医療ニーズは、前者(高齢化の進行)で約100万人、後者(追加的ニーズ)で約30万人と見込まれています。こうした人の行き場がなくならない、つまり「入院もできず、在宅医療体制も整っていない」という事態が生じないように、在宅医療・介護提供体制を整備していく必要があるのです。

少子高齢化などの影響で、在宅医療のニーズは2025年までに増大する
少子高齢化などの影響で、在宅医療のニーズは2025年までに増大する
 
 2018年度からの第7次医療計画では、「在宅医療・介護提供体制の整備量」(目標および目標達成のための施策など)も記載することになっています。例えば、「▼退院支援▼急変時の対応▼看取り―に関する数値目標」「目標達成に向けた施策」「多職種による取組を確保するための▼訪問看護▼訪問歯科診療▼訪問薬剤管理指導—など主要職種についての数値目標」「達成に向けた施策」などを可能な限り記載することが求められます。

さらに厚労省は、各項目についての具体的な評価指標例も示しており、例えば「入退院支援」では、ストラクチャー評価指標として▼入退院支援を実施している診療所・病院数▼退院時共同指導を実施している診療所・病院数▼退院後訪問指導を実施している診療所・病院数—などが、プロセス評価指標として▼退院支援(退院調整)を受けた患者数▼退院時共同指導を受けた患者数▼退院後訪問指導を受けた患者数—などが例示されています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 もっとも都道府県の現状を眺めると、▼目標設定が十分でない都道府県もある▼入退院支援ルールの設定等が十分でない都道府県もある▼在宅医療が必要な患者の重症度などを把握している都道府県は少ない―といった課題もあります(関連記事はこちらこちら)。

また、医療計画は、今般の第7次より「6年を1期」とする長期計画となったことから、3年目に「中間見直し」を行うことになります。在宅医療提供体制に関する課題も、中間見直し時点で解消することが必要ですが、「それまでの間、何もしない」(中間見直しで修正等すればよい)というわけにもいきません。放置は、在宅医療提供体制の整備遅れにつながり、結果、住民が不利益を被るからです。

そこでワーキングでは、「現時点から進めるべき」点を整理して都道府県に示し、実行を促すことを決めました。今般の議論の整理では、都道府県が実行すべき取り組み内容を、次のように具体的に整理しています。9月10日の前回ワーキングで示された内容に、構成員からの指摘事項を溶け込ませたものとなっています。

(1)第7次医療計画の改善
(2)都道府県全体の体制整備
(3)在宅医療の取り組み状況の見える化(データ分析)
(4)在宅医療に関する各種ルールの整備
(5)在宅医療に関する人材の確保・育成
(6)住民への普及・啓発

 
 まず(1)の医療計画に関しては、▼「訪問診療を実施する診療所・病院数に関する数値目標」を定めていない8府県(山形、石川、福井、長野、京都、和歌山、佐賀、宮崎)▼「在宅医療の整備目、介護のサービス量の見込み」を定めていない4府県(京都、福岡、長崎、沖縄)—において、第7次医療計画の中間見直し時点で「計画の盛り込む」ことが必要です。明確な目標を定めなければ、効果的な取り組みを行えず、また取り組み内容の検証・評価がなしえないからです。

 
 また(2)の体制については、▼医療政策部局と介護保険部局との連携推進(データの共有、保健所の活用など)▼年間スケジュールの策定▼市町村支援―を行うよう求めています。

 在宅医療・介護連携は、2015年度から市町村の実施する「地域支援事業」の1つに位置付けられました。▼地域の医療・介護の資源の把握▼在宅医療・介護連携の課題抽出と対応策の検討▼切れ目ない在宅医療と介護の提供体制の構築推進▼医療・介護関係者の情報共有の支援▼在宅医療・介護関係者に関する相談支援▼医療・介護関係者の研修▼地域住民への普及啓発▼在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携—の8項目すべてを、全市町村で実施することになっているのです(今年度(2018年度)より)。しかし、とくに小規模な町村では、人材も限られており、単独でこれらの事業を確実に遂行することは困難なため、都道府県からの支援に期待が寄せられているのです。

在宅医療・介護連携推進事業の概要、2018年4月からはすべての市町村で(ア)-(ク)の全事業を実施しなければならない(委託も可能)
在宅医療・介護連携推進事業の概要、2018年4月からはすべての市町村で(ア)-(ク)の全事業を実施しなければならない(委託も可能)
 
ワーキングでは、具体的な支援策として、▼各市町村の抱える課題について都道府県と市町村が解決に向けて議論を行う▼保健所等を活用し「在宅医療の充実に係るロードマップ策定」を支援する―ことなどを例示。先進自治体の取り組みも重要な参考情報となります。

もっとも、地域によって「自治体の規模」「地域の状況(医療・介護資源や地理的状況)」「住民のニーズや意向(当然、首長の意向とも密接に関連する)などは異なるため、「他自治体の取り組み」をそのまま自地域に当てはめることはできません。地域の実情に応じて、先進事例をカスタマイズ(本質を見失わないように改変することが重要)し、実行に移していくことが重要です。「地域包括ケアシステム」構築作業と同じであり、田中座長は「地域包括ケアシステムは、自治体の数だけ存在する。全国一律の地域包括ケアシステムなどありえない」と改めて強調しています。

さらに、在宅医療提供全般に言えることですが、松本吉郎構成員(日本医師会常任理事)や織田正道構成員(全日本病院協会副会長)、新田國夫構成員(日本在宅ケアアライアンス議長)らから「かかりつけ医の役割」の重要性が強調されています。かかりつけ医は、在宅医療提供において「プレイヤー」の役割を果たすことはもちろん、地域包括ケアシステムの中では司令塔や総監督、参謀などの役割を、人材育成の場面では教育者としての役割を果たすことが期待されます。

国保データべース等を活用し、地域の在宅医療提供の現状と将来を可視化せよ

また(3)の「見える化」に関しては、まず地域住民(国保、介護保険の被保険者)の健診・医療・介護データを格納したKDB(国保データベース)のデータを活用して、地域の在宅医療提供状況の把握・分析・情報共有などを進めることが求められます。この点、国(厚労省)が技術・費用に関する支援を行う方針も示されています。

ただし、国保に加入していない会社員(健保組合や協会けんぽなどに加入)のデータなどは格納されておらず、訪問看護データは未電子化であるという制約もある点には留意が必要です。

さらに、医療機関や訪問看護ステーションへの個別調査(今後の在宅医療の提供意向など)、市町村や関係団体(地区医師会など)との連携も「見える化」に向けた重要施策となります。例えば、意向調査結果をもとに、地図上に▼2018年(在宅医療を実際に提供している医療機関等 → ▼2025年に「在宅医療を提供する」意向のある医療機関等 → ▼2035年に「在宅医療を提供する」意向のある医療機関等—をプロットし、これと人口動態を併せてみることで、「今後、どの地域で在宅医療提供体制の整備に力を入れなければならないか」が可視化でき、情報を共有しやすくなります。

都道府県内で入退院支援ルールなどを統一し、それに則った運用を推進せよ

 また(4)では、例えば次のようなルールを都道府県内で構築しておくことが求められます。

▼入退院支援ルール:入院から退院、在宅医療提供までに切れ目が生じないよう、都道府県内で、どの職種が退院までにどのような支援を行うかを決め、これをすべての医療機関で遵守する

▼後方支援病院との連携ルール:「Aクリニックから在宅医療を提供している患者の急性増悪時には、B病院へ入院する。B病院ではそのための準備を進めておく」ことなどを定め、診療所・病院間で遵守する

▼急変時の患者情報共有ルール:在宅患者の急性増悪時に適切に対応できるよう、診療情報を含めた情報共有の仕組みを設ける

福井県における退院支援ルールの概要
福井県における退院支援ルールの概要
 
こうしたルールは、診療所・病院・ケアマネ事業所などで構築・運用することが基本ですが、市町村と都道府県がこれをサポートしていくことが重要となります。例えば地域の医師会と病院会が連携し、その橋渡しを都道府県が行うことにより、「都道府県内の統一ルール策定」が円滑に進むと期待されるのです。

さらに、このルール策定に当たっては「ACP」(Advanced Care Planning)の普及も重要となります。ACPは、いわば「自分が人生の最終段階にどういった医療・ケアを受けたいかを繰り返し、医療従事者や家族・友人と話し合う」ことを意味します。在宅療養中の患者が「自分は延命治療はしないでほしい」と考えていたとしても、急性増悪時に救急搬送されたとき、その意向が医療従事者に伝わらなければ、「望まない延命治療」を受けることになりかねません。

ACPを、まず医療・介護関係者が十分に理解し、自治体の力もかりて患者に普及啓発していくことが重要です。もっともACPは、決して「新たに作られた考え方」ではなく、従前から、かかりつけ医・介護事業者が実践してきた取り組み(あるいは、その延長線上にある)であることも忘れてはいけません。

 
厚労省は、早ければ年内(2018年内)にも、これら「都道府県が今から実行すべき取り組み」について周知を行い(通知の発出)、来年(2019年)以降、順次、進捗状況を確認していくことになります。厚労省医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室の松岡輝昌室長は、「少なくとも年に1回程度(進捗状況が芳しくなければ、より高い頻度で)、進捗状況を確認し、必要な対策などをワーキングで検討してもらうことになる」との考えを示しています。

さらに第7次医療計画の中間見直しに向けて、「指標例などの見直し」「追加需要(上述の30万人)への対応」や、今般の北海道胆振東部地震を踏まえた「停電時の在宅医療機器利用患者への支援」などもワーキングで検討していくことになります。

 
 

 

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