公的医療保険に加入する外国人への医療、通訳費用を「選定療養」等として認めるべきか―規制改革推進会議ワーキング



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 観光客などの「訪日」外国人への医療提供にあたっては、社会医療法人等においてもコストに見合った医療費を請求できるようにすべきである。一方、我が国に在留している外国人への医療提供にあたっては、通訳等のコストを保険外併用療養費として請求できるようにすべきである―。

 11月8日に開催された規制改革推進会議の医療・介護ワーキング・グループ(以下、ワーキング)で、全日本病院協会からこういった要望が行われました(関連記事はこちら)。

観光客など訪日外国人への医療は自由診療、社会医療法人でも価格柔軟化を認めるべきか

 観光などの目的で我が国を訪れる外国人や、外国語の講師などで我が国に在留する外国人が増加しています。当然、傷病で医療機関を受診する外国人も増加しており、医療現場では「費用」と「外国語対応」などの面で、いくつかの課題が出ています。

 例えば、我が国に長期間滞在する外国人であっても、必ずしも日本語に堪能なわけではありません。また、高等教育を受けた医師をはじめとする医療従事者であっても、外国語が不得手な方もおられます。とくに、医療・健康に関しては▼専門用語▼微妙なニュアンス(体調や痛みなど)—という特有の問題もあります。

そこで、医療通訳などが活躍する場面が増えてきますが、そのコストを医療機関側が負担するべきか、患者側が負担すべきか、という問題が生じるのです。全日本病院協会によれば、医療通訳の費用相場は、派遣では1-2時間で2万円前後になるようです。

ワーキングでも、この問題について検討する方針が確認されており、11月8日には全日本病院協会(全日病)から意見聴取を行いました。全日病は、外国人への医療提供について、(1)観光客など、一時的に我が国に滞在する訪日外国人(2)仕事などで比較的長期間、我が国に滞在する在留外国人―に分けて考える必要があると指摘しています。

まず(1)の訪日外国人は、我が国の公的医療保険制度(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に加入していないため、「自由診療」(医療費を全額、自己負担する)として医療機関を受診することになります。

自由診療における価格は、「社会的に妥当」と思われる水準で医療機関が独自に設定できます。ただし、税制上の優遇を受けられる社会医療法人においては、▼収益の80%超が保険診療および健康増進事業でなければならない▼自費患者(自由診療の患者)への請求額は、社会保険診療報酬と同一基準で計算しなければならない―という要件が定められているのです。

この基準(とくに後者)によれば「訪日外国人の診療で、特別に必要となるコスト(通訳など)は、社会医療法人側(医療機関側)が負担しなければならない」ことになります。医師には「応召義務」が課せられているため、「当院では外国人患者はお断りしています」という姿勢をとることもできません。

そこで全日病では、「社会医療法人の認定要件を見直し、コストに見合った額を請求できるようにすべき」と要望しているのです。なお、訪日外国人が増加する中では、自費診療の外国人患者も増加するため、前者の要件(保険診療が収益の8割超)についても見直しを求める声が医療現場から出ています(関連記事はこちら)。

医療通訳コストの「選定療養費」化、医療提供における必要性も勘案した検討を

 一方、(2)の在留外国人は、期間や雇用状況などにもよりますが、我が国の公的医療保険制度に加入することが義務付けられます(企業などに雇用されていれば、当該企業の加入する健康保険組合や協会けんぽなどに、自営等であれば在留3か月以上の場合には国民健康保険に加入)。

 公的医療保険の加入者ですから、当然、被保険者証を提示することで保険診療(自己負担は年齢や収入に応じて1-3割)を受けることが可能です。その際の医療費は、こちらも当然ですが、診療報酬点数表等に則って計算されます。

 ただし在留外国人の中にも、日本語に不慣れな方もおり、その際には医療通訳が必要となるケースが出てきます。この点について全日病では、「一物一価の原則」に照らし二重価格はあり得ない(例えば通訳が必要な外国人向けの初・再診料の設定など)としたうえで、通訳等のかかるコストを「選定療養費などの保険外併用療養費」として請求することを認めてはどうかと提案しています。

保険外併用療養費には、現在▼先進医療や治験など、新たな技術の保険導入を目指す「評価療養」▼患者を起点とした、保険外技術の保険導入を目指す「患者申出療養」▼差額ベッドや予約診療など、患者の利便性向上のための「選定療養」—の3種類があります。

もっとも選定療養は、「それがなくとも、医療提供に問題はない」(個室でなければ医療が受けられないわけではない)という性質があり、日本語が不得手な患者に対する通訳が「なくとも問題ない」と言えるかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。

医療分野のデータ・ポータビリティ、阻害要因は「電子化」以外のどこにあるのか

 またワーキングでは、今期(2018年10月-2019年6月)の検討テーマの1つとして「医療等分野におけるデータ・ポータビリティの実現」も掲げています。「生涯に亘る自身の医療・介護・健康情報を必要に応じて利活用できる仕組み」(データ・ポータビリティ)の構築を目指すものです。

 この点に関して経済産業省と総務省が設置した「データポータビリティに関する調査・検討会」では、医療分野のデータ・ポータビリティに関して、「電子化自体は進んでいる」ことを確認した上で、▼「データ移転に柔軟に対応できない形式・方法でデータが収集、管理されている」など、電子化以外に課題があるのか▼データ・ポータビリティを実現しないインセンティブが存在するのか▼米国のように、「国主導でのインセンティブとディスインセンティブを組み合わせたデータ・ポータビリティ対応を促す仕組み」が有効か―という論点に沿って議論が進んでいることが紹介されています。

 医療分野などのデータについては、「患者自身によるコントロール」(勝手に開示等されない)と「社会的な有益性」(蓄積されたデータの解析による、優れた技術開発など)とを、バランスをとって活用してくことが重要です。「患者自身によるコントロール」を過度に認めれば、医療技術の進展が阻害されてしまいますが、一方で「患者自身のコントロール」をないがしろにすれば、情報の活用そのものへの反発が強くなります。

 厚生労働省も、2020年度から「過去にどのような疾病に罹患し、それに対しどのような医療提供が行われ、どのような効果があったのか。さらに介護が必要な状態となってから、どういったサービスを提供し、どのような効果が得られたのか」といったデータを一元的に集約・解析し、医療・介護等の質向上を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」を本格稼働させる予定であり、「データ・ポータビリティ」に関する議論にも注目が集まります(関連記事はこちらこちら)。

 
 

 

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