2018年10月までに1169件の医療事故、国民の制度理解が依然「最重要課題」―日本医療安全調査機構



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 今年(2018年)10月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は40件。医療事故調査制度発足から累計1169件の医療事故が報告され、うち72.7%の851件で院内調査が完了するなど、医療機関の調査スピードがますます向上している。ただし一般国民は、本制度を必ずしも十分には理解しておらず、制度の浸透が大きな課題である―。

 日本で唯一のセンターである「日本医療安全調査機構」が11月9日に、こういった状況を公表しました(機構のサイトはこちら)。

2018年10月の医療事故報告件数、外科で8件、内科で5件

2015年10月より、すべての医療機関には、院長など管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告する義務が課せられました(医療事故調査制度)。医療事故調査制度は、事故の原因を調査・分析して「再発防止策」を構築し、医療現場に広く共有することを目的としています(関連記事はこちら)。

センターでは、これまでに重大な事故について詳細を分析し、(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析(4)気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例の分析(5)腹腔鏡下胆嚢摘出術に係る死亡事例の分析(6)栄養剤投与目的に行われた胃管挿入に係る死亡事例の分析—の6つの再発防止策を公表しています。

 医療事故調査制度の流れは、次のように整理できます(関連記事はこちら)。

▼医療事故の発生を確認した管理者は速やかに、センターに事故発生の旨を報告する

▼当該医療機関で事故原因を調査【院内調査】し、調査結果をセンターに報告する

▼当該医療機関は、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書を提示することまでは不要とされている)

▼センターが事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
 
 
 我が国唯一のセンターに指定されている日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を迅速に公表(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2018年)10月には、新たに40件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は1169件となりました。

 2018年10月に新たに報告された事故の内訳は、病院から38件、診療所から2件となりました。制度発足からの累計では、病院から1099件(事故全体の94.0%)、診療所から70件(同6.0%)となっています。

 2018年10月に新たに報告された事故を診療科別に見ると、▼外科8件▼内科5件▼整形外科4▼循環器内科4件―などで多くなっています。制度発足からの累計を見ると、▼外科201件(同17.2%)▼内科145件(同12.4%)▼消化器科100件(同8.6%)▼整形外科98件(同8.4%)―などという状況です。
医療事故の現況(2018年10月)1 181109
 

センターへの相談件数は累計5916件、依然「国民の制度への理解」が重要課題

 センターに報告しなければならない医療事故は、医療機関内で生じたすべての死亡・死産事例ではなく、そのうち「院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—もの」に限定されます。例えば、火災などに巻き込まれ瀕死の状態で救急搬送され、適切な治療を施したにも関わらず死亡してしまった場合には、一般に「死亡が予期」され、そもそも医療事故に該当しないと考えられるため、センターへ報告する必要はありません。ただし、そうした患者であっても、明らかな処置上のミスなどがあり通常の過程とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期しなかった」ものとしてセンターへの報告が必要となります。

 この点、医療現場では「患者が死亡したが、報告すべき医療事故に該当するだろうか?」という疑問が生じるケースがあります。また、初めて事故を報告する際には「センターへ、どのように報告すればよいのだろうか?」との疑問も生じることでしょう。一方、遺族側には「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。事故を隠蔽しようとしているのではないか?」との疑念がわくケースもあるでしょう。

 こうした疑問・疑念を放置することは、制度の信頼を揺るがせ、基盤を脆弱にしてしまうため、センターでは相談対応を行っています。今年(2018年)10月には、新たに167件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計では5916件にのぼっています。

 2018年10月に寄せられた新たな相談の内訳は、▼医療機関から77件▼遺族などから76件▼その他・不明14件―となっています。

 医療機関からの相談内容を見てみると、最も多いのは「報告の手続き」に関するもので49件(医療機関からの相談の63.6%)。次いで「院内調査に関するもの」が28件(同36.4%)、となりました。「報告すべき医療事故か否かの判断」は7件(同じく9.1%)にとどまり、医療現場が制度を十分に覚知していることが伺えます(関連記事はこちらこちら)。

 一方、遺族などからの相談内容に目を移すと、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」がほとんどで、72件(遺族などからの相談の94.7%)となっています。また、こうした該当性に関する相談の中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも報告対象とならないものも含まれており、一般国民には制度の内容について十分な理解が及んでいないことが伺えます。

いかに医療現場が正しく報告を行うなど、適切な制度運用がなされても、一般国民の理解・信頼がなければ制度の礎は脆くなります。改めて、一般国民に医療事故調査制度を分かりやすく周知していくことが必要です。
医療事故の現況(2018年10月)3 181109
 

センターへの調査依頼は新たに1件、全76件中9件でセンター調査が完了

 前述したように、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。このため、まず事故が発生した医療機関が、自ら原因究明に向けた調査【院内調査】を行ことが求められます。院内調査の過程で自院の体制などを点検しなおし、再発防止策を自主的に構築していくことが再発防止の近道と考えられるためです。

 今年(2018年)10月に新たに院内調査が完了した事例は34件で、制度発足からの累計では851件となりました。これまでに報告された全1169件の医療事故のうち、72.8%で院内調査が完了していることになります。院内調査のスピードはさらに増加しており、医療機関側の努力、積極的な姿勢が伺えます。
医療事故の現況(2018年10月)2 181109
 
 ところで、遺族の中には「院内調査の結果に納得できない」「院内調査が遅い。時間稼ぎをしているのではないか」と感じる人もいることでしょう。またクリニックなど小規模医療機関等では「自院で院内調査を実施することが難しい」ケースもあります(医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制もある)。

 そこで、センターでは、「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整備しています。ただし、「一から調査する」のではなく、「院内調査が時期・内容ともに適切に実施されたのか」という観点での調査が中心となります。

 今年(2018年)10月に、センターになされた調査依頼は遺族からの1件でした。制度発足からの累計調査依頼件数は76件(遺族から61件・80.3%、医療機関から15件・19.7%)です。進捗状況を見ると、▼センター調査終了が9件(前月から1件増加)▼院内調査結果報告書の検証中(院内調査が適切に行われたかどうかを確認)が66件▼院調査結果報告書の準備作業中が1件—となっています。

 
 

 

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