【ADL維持等加算】、将来を見据えて通所介護の4分の1近くが取得予定組む―福祉医療機構



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 福祉医療機構(WAM)は11月5日に、「2018年度介護報酬改定が、介護事業所や施設にどのような影響を及ぼしたのか」という点についてのアンケート結果も公表しています。(WAMのサイトはこちら(概要版)こちら(詳細版))。診療報酬改定に関するWAMの調査と同様に、▼対象が限定的(WAMの貸し付けを受けている1298法人)▼アンケート形式での調査にとどまる▼改定から間もない調査である(2018年7・8月調査)―といった限界はありますが、有用な調査結果と言えます。

結果は膨大なため、今回は2018年度介護報酬改定の中で、大きな注目を集めている、通所介護の【ADL維持等加算】に焦点を合わせてみましょう。

ADLの維持・改善を、クリームスキミング防止に配慮して介護報酬で評価

 介護保険サービスの基本報酬や、居宅サービスの区分支給限度額(利用者が1か月に利用できる保険の上限)は「要介護度に応じて高くなる」ように設定されています。要介護度の高い利用者・入所者には、一般により多くのケアが必要で、多くの介護資源を投入する必要があるためです。

しかし、この報酬設定によって、「要介護度が改善すれば報酬が低くなることから、自立・重度化防止に後ろ向きな事業所等もある」「要介護度が改善すると区分支給限度額も低くなり、利用できるサービス量が減少してしまうため、利用者や家族が要介護度改善に後ろ向きである」といった課題もあります。

そこで、従前より「要介護度改善に向けたインセンティブ」が検討されてきており、今般の2018年度の介護報酬改定で、ついに【ADL維持等加算】(通所介護、地域密着型通所介護の加算)が新設されました(いわゆるアウトカム評価)。

アウトカム評価につきもののクリームスキミング(要介護度の改善が見込まれる軽度者のみを選別する)防止に配慮したうえで、利用者のADL維持・改善実績に応じて加算を算定できます。一定の実績要件を満たした場合には【ADL維持等加算1】(月3単位)を、さらに実績要件を満たしたうえで、Barthel Index(BI)を用いて利用者のADLを測定し、結果を保険者に報告した場合には【ADL維持等加算2】(月6単位)を算定できます(前年(1-12月、評価対象期間)における利用者のADL維持・改善度合いが一定水準を超える場合に、翌年度(4月-翌年3月)のサービス提供に加算を行う)(関連記事はこちら)。

新設されたADL維持等加算の概要
新設されたADL維持等加算の概要
 
 
WAM調査に協力した820の通所介護事業所のADL維持等加算の取得(意向)状況を見ると、▼ADL維持等加算(I)の取得:0.9%▼ADL維持等加算(II)の取得:0.2%▼2018年度内の取得予定:2.6%▼2019年度から取得予定:15.4%▼2020年度以降に取得予定:5.1%―となっており、大半(75.9%)は「取得予定なし」と答えています。
WAM2018年度介護報酬改定影響調査 181105の図表
 
取得済・取得予定の通所介護事業所では、▼収益アップ:39.9%▼今後、アウトカム評価の比重が高くなるとの予想:38.9%▼ADL維持・改善がPRに活用できる:16.7%―と答えていますが、中には「従来から要介護度の改善に取り組んでいる」事業所が4.5%ありました。この4.5%の事業所は、いわば「要介護度改善のトップランナー」であり、この事業所の状況を踏まえてADL維持等加算の要件等が設定されたと見ることができます。つまり、介護報酬を追いかけるのではなく、介護報酬が事業所を追いかけている格好で、こうした事業所では「要件の変更などに怯える」ことは極めて少ないでしょう。通所介護事業所に限らず、先進的な取り組みをPRし、「トップランナー」を目指すことが期待されます。

なお、これらの事業所では、ADL維持等加算によって、▼ADLの状況を数値化し、個別機能訓練計画の作成に活用▼職員の意識向上▼職員のモチベーション向上―といった効果が現れているとも答えています。今後、時間の経過によって「利用者の機能や活動」に関する効果が定量化されることに期待が集まります。

必要ない、単位数が引くとの理由で取得しない事業所が多いが・・・

一方、大半の事業所では「ADL維持等加算の取得予定はない」と考えていますが、次のような理由によるものです。

▼コスト・手間に比べて単位数が低い:53.9%
▼「評価対象利用期間の初月に要介護3以上の利用者が15%以上」との要件が厳しい:22.0%
▼必要性を感じない:7.2%
▼「BI測定結果を厚労省に90%以上報告する」との要件が厳しい:5.5%
▼「『5時間以上の算定回数>5時間未満の算定回数』となる利用者が総数20名以上」との要件が厳しい(サービス提供時間が短いため):5.0%
▼「評価対象利用期間の初月に『初回要介護等認定から12か月以内』の利用者が15%以下」との要件が厳しい:2.7%
▼「BI利得の合計値がゼロ以上」との要件が厳しい:0.5%

取得要件は、もっぱら「クリームスキミング」(ADL改善がしやすい者を抱え込み、ADL改善が困難な者を排除する)を防止することなどを目的としたものです。「初の試み」(初のアウトカム評価導入)ゆえに、「厳しすぎる」部分や「緩やかすぎる」部分もあると思われ、今後、詳細な調査を行い、2021年度の次期介護報酬改定に向けて「緩和の必要性があるか否か」を社会保障審議会・介護給付費分科会で検討していくことになります。

このように「要件が厳しい」という声には、うなずける部分もありますが、「必要性を感じない」との声には寂しいものを感じてしまいます。介護保険の基本理念である「自立支援」においては、ADLの維持・改善は極めて重要な視点(もちろん、他にも重要な視点がある)であることに疑いはなく、その必要性はどの通所介護事業所でも非常に高いはずです。利用者や家族ときちんと向き合い、ADL維持・向上の必要性について改めて考えていただくことが重要でしょう。

さらに「コスト・手間に比べて単位数が低い」という声が大きいようですが、上述のとおり、初の試みであるため、最初から高い単位数を設定することは困難です(その場合、さらに厳格な要件設定が必要となるでしょう)。事業所の取り組み状況・成果が2021年度改定での単位数増の根拠となる点に留意が必要です。

また、「ADLの維持・向上等にかかるすべてのコスト」を賄う水準に単位数を設定する、ことも非現実的です。加算取得のためにサービスの質を上げ、それが評判(加算取得そのものがPRの好材料にもなり、利用者の満足度向上は何よりの広告効果がある)となって利用者の増加につながり、結果として収益・利益が増加につながる、と考えるべきでしょう。

さらに加算は「望ましい事業所を経済的に評価する」ものであり、将来的には「どの事業所でも取り組みを行い、基本報酬に組み込む」ことが期待されます。すると、単位数が低いので加算は取得せず、ADL維持・向上の努力もしない事業所は、競合事業所に比べてサービスの質が相対的に低くなり、利用者の減少、収益・利益の減少という悪循環を辿ることになります。より長期的な視点をもってサービスの質を向上させることが重要です。

 
 

 

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