医療・介護等データの一元的管理・活用を目指し、標準化など検討―規制改革推進会議ワーキング



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 医療・介護分野の規制改革に関し、今期(2018年10月-2019年6月)は、(1)医療等分野におけるデータ・ポータビリティの実現(2)地域医療の担い手の確保(3)外国人観光客に係る診療価格の見直し(4)医薬情報の提供に係る規制の見直し(5)AMED(日本医療研究開発機構)の行政手続コストカット―について審議していくとともに、「オンライン医療の普及促進」や「社会保険診療報酬支払基金における審査の効率化・合理化」などについてフォローしていく—。

 10月29日に開催された規制改革推進会議の医療・介護ワーキング・グループ(以下、ワーキング)で、林いずみ座長(桜坂法律事務所、パートナー弁護士)から、こういった方針が示されました。

外国人患者の増加を踏まえ、社会医療法人における「自由診療の単価」の在り方を検討

 医療・介護をめぐる諸制度(医療保険制度、介護保険制度、診療報酬、医療計画、介護保険事業(支援)計画などなど)は、安全かつ有効な医療・介護を、効果的かつ効率的に国民に提供することを目指して構築されています。

 例えば、医療行為は原則として「医師」しか提供できません(緊急時などは除く)し、手術の実施は、一定の基準(構造、設備や人員配置など)を満たした医療機関でしか提供できないなど、さまざまな制度(つまり規制)が設けられています。これらは、「医療・介護は国民の健康・生命に直結する」ため、安全性等を重視したものと言えます。

 また、高齢化、医療の高度化が進む中では医療費が大きく膨らみ、国家の財政を強く圧迫しています。このため、地域における「病院の病床数」は都道府県の医療計画で定められており(基準病床数)、それを超過する部分については都道府県が保険指定を行わないことが可能となっています。これは、医療保険制度の維持を目指す、いわば経済的な養成に基づく制度(規制)と言えるでしょう。

 このように、医療・介護をめぐる制度(規制)はさまざまありますが、別の視点から眺めると「制度(規制)によって弊害が生じている」と見ることが可能な部分もあります。例えば、病院経営者の視点からは、「病院の病床数上限が定められれば、新規の病院参入ができず、新陳代謝を阻害してしまう」という主張ができそうです。

 規制改革推進会議では、さまざま制度(規制)について、「当該規制は本当に必要か」「別のより緩やかな規制の在り方はないのか」などをさまざまな視点で探っているのです。

ワーキングでは、今期(2018年10月-2019年6月)の検討テーマとして、(1)医療等分野におけるデータ・ポータビリティの実現(2)地域医療の担い手の確保(3)外国人観光客に係る診療価格の見直し(4)医薬情報の提供に係る規制の見直し(5)AMEDの行政手続コストカット―の5項目が提示されました。

このうち(1)では、国民・患者が、「生涯に亘る自身の医療・介護・健康情報を必要に応じて利活用できる仕組み」(データ・ポータビリティ)を視野に入れながら、▼医療情報の流通性向上のために、厚生労働省の支援による標準規格の拡充・普及促進▼民間PHR(personal health record、患者が自分自身で医療等データを一元的に管理できる仕組み)推進のために、「健診機関等からの健診情報入手」「本人開示」の容易化▼地域医療連携ネットワーク等における第三者提供時の本人同意の在り方の検討▼医療ビッグデータ活用のために、行政機関保有の匿名化医療情報の民間(企業・研究機関)への提供条件の緩和▼データ・ポータビリティの実現に向けた、健康・医療・介護の分野横断的なヘルスケア情報基盤にかかる法規制の研究・検討—を行うことになります。

この点、厚労省では、ある人が「過去にどのような疾病に罹患し、それに対しどのような医療提供が行われ、どのような効果があったのか。さらに介護が必要な状態となってから、どういったサービスを提供し、どのような効果が得られたのか」といったデータを一元的に集約・解析し、医療・介護等の質向上を目指す「全国保健医療情報ネットワーク」の2020年度からの本格稼働方針を示しており、来年(2019年)の国会にNDB(national data base、特定健康診査や医療レセプトデータを格納)・介護DB(介護保険総合データベース、要介護認定情報や介護レセプトデータを格納)の連結等に向けた改正法案(高齢者医療確保法、介護保険法)を提出する考えも示しています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

規制改革推進会議の議論が追い風となるのか、あるいは横風となるのか、今後の動きに注目する必要がありそうです。

 
また、(2)では「看護師による死亡確認を認める看取りガイドラインの要件見直し」を、(3)では「社会医療法人における税制優遇条件の1つである『自由診療の単価を診療報酬と同一にする』件の見直し」を検討することになります。後者は、外国人観光客等が増加する中で、「言語対応」などの病院負担を考慮して、単価の引き上げを一定程度、医療機関に委ねる方向が検討されることになりそうです。

 
また、すでに検討され、「実施」を規制改革推進会議側が求めている▼オンライン医療の普及促進(関連記事はこちらこちらこちら)▼社会保険診療報酬支払基金における審査の効率化・合理化▼医薬品医療機器総合機構(PMDA)の行政手続コストカット▼患者申出療養制度の普及▼機能性表示食品制度等の見直し―について、フォローアップを行う方針も示されています。

このうち社会保険診療報酬支払基金に関して、医療現場では「支部間の審査基準の差異」が気になるところでしょう(例えば、診療報酬点数表上は9単位までの算定が可能な疾患別リハビリテーション料を、一部地域では6単位までしか認めないなど)。この点について厚労省は、今年度(2018年度)前半に、例えば「各支部におけるコンピュータチェックルールの見直し」(最終的(2020年度のシステム刷新)に本部ルールへの移行、支部ルールの廃止を目指し、2019年9月までに約5万件の支部ルールを廃止)などを行っていることを報告しています。
医療・介護ワーキング(規制改革推進) 181029の図表
 
さらに、大きな争点となっている「支部の集約・統合」についても、今後も熱い議論が行われることになりそうです(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちら)。

 
 

 

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