地域医療構想調整会議、多数決等での機能決定は不適切―地域医療構想ワーキング



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 地域医療構想調整会議の中には、病院の機能などを考えるにあたり「多数決」を採用しているところもあると漏れ聞こえてくる。病院の機能などは、データや議論をもとに、当該病院が「自主的に」転換などを考えていくもので、「多数決」などは不適切である―。

 10月26日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった意見が構成員から相次ぎました。

10月26日に開催された、「第16回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
10月26日に開催された、「第16回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
 

2018年度中に具体的対応方針を決定する必要があるが、「多数決での合意」は不適切

 医療提供体制の再構築に向けて、地域医療構想の実現が急務とされています。2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となり、医療・介護ニーズが急速に増加していくことから、現在の医療提供体制では、こうしたニーズに効果的かつ効率的に応えることができないためです。

 地域医療構想の実現は、データをもとに、▼将来の地域の医療ニーズ等▼自院の状況▼他院の状況―などを客観的に把握し、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で議論を行った上で、各医療機関が自主的に「適切な機能」を考えていく(転換の選択肢もあれば、現状の機能を維持するという選択肢もある)ことがベースとなります。

 ただし、調整会議の議論が十分に進んでいないとの指摘もあったことから、骨太の方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性向上―)では、「個別の病院名・病床数を掲げ、機能転換に向けた具体的対応方針を速やかに策定するため、2017・18年度の2年間程度で集中的な検討を促進する」旨が指示されました。この指示を受け、ワーキングでは、例えば「都道府県における4機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期等)の定量的基準の設定」や「地域医療構想アドバイザーの選定、養成」などの「活性化」方策が議論されているのです(関連記事はこちら)。

 その一方で、2018年度の終わりまでには、あと半年ほどしかないため、調整会議では具体的方針の策定を急ぐあまり「機能転換等を多数決で決定している」事例があることが、伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)から報告されました。

 調整会議の要・本質は、「将来の地域の医療提供体制と自院の機能等を十分に検討し、納得(合意)して機能転換を進める」ところにあります。多数決は、この要・本質から大きく外れていることは明らかでしょう。厚生労働省も「実際には合意に至っていないにも拘らず、(多数決などで)合意済とすることは不適切である。適切な運営がなされるよう、地域医療構想アドバイザーなどに改めて依頼する」考えを示しました。

多数決を初めとする拙速な結論は、かえって「時間の無駄」となるばかりか、地域の医療機関の信頼を損ない、調整会議における実効性のある議論を阻害してしまいます(A病院について「自院は急性期を希望しているが、地域の医療機関が慢性期への転換を多数決で決めた」として、A病院が納得して慢性期に転換するだろうか?)。本質に立ち返った議論が望まれます。

 とはいえ、今年(2018年)9月末時点における調整会議の議論の状況を見ると、▼公立病院については、機能等に関する合意済はベッド数ベースで39%(6月末時点から25ポイント増)▼公的病院等については、機能等に関する合意済は同じく52%(同32ポイント増)▼全医療機関については、機能等に関する合意済は同じく19%(同12ポイント増)—にとどまっています(関連記事はこちら)。確実に進捗はしていますが、残り半年でどこまで本質的な議論を行い、機能等に関する合意が完了するのか、引き続き注目していく必要があります。
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既存病床数などが2025年の必要病床数を上回る場合、都道府県が増床等を拒否可能に

 ところで改正医療法・医師法では、地域医療構想の実現に向けて都道府県知事の権限が強化されました。ただし、「民間病院に機能転換を命じる権限」などを付与されたわけではなく、「将来、病床過剰になることが確実な場合には、現時点で病床過剰でなくとも、病床の増設等を許可しない」といった権限を付与するにとどまっている点には留意が必要です(前者は、憲法第22条から導かれる「営業の自由」に抵触する可能性があり、極めて慎重な議論が必要である)。

 10月24日のワーキングでは、厚労省から、▼基準病床(医療計画)▼既存病床(実際に、現時点で何床のベッドがあるのか)▼病床の必要量(地域医療構想)—の関係と、都道府県知事との関係について下図のような整理が行われました。
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 新たに付与された都道府県知事の権限が執行されるのは、第7次医療計画では「27医療圏」あることが分かります。

 この点に関連して中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「自由診療であれば、病床過剰地域であっても病院を開設してよいであろうとして、高度急性期病院を開設・増床するケースがあるようだが、大きな問題だ。厚労省は実態を把握してほしい」との注文を出しています。

 
 このほか、10月24日のワーキングでは▼介護医療院▼地域医療構想アドバイザー―の状況も報告されています。

 前者の介護医療院は、▼医療▼介護▼住まい―の3機能を持つ新たな介護保険施設です。当面は、介護療養や医療療養からの転換が見込まれています。

 昨年(2017年)の病床機能報告では、約35万床の慢性期機能を持つ療養病床・一般病床がありますが、うち介護医療院への転換を予定しているのは1万6000床あり、「医療療養のうち旧【療養病棟入院基本料2】(25対1看護)を届け出ている病棟」が多いことが分かりました。

2018年度の診療報酬改定では、医療療養の報酬体系が大きく見直され、また2018年度の介護報酬改定では、介護医療院の基本報酬や加算、構造・設備基準などが明らかになったことから、「介護医療院への転換意向」の状況が変化していく可能性があります。慢性期機能病床から介護医療院への転換は、地域医療構想実現の中でも重要な事象の一つであり、今後とも、詳細な状況が報告される見込みです。

 
なお、この点に関連して、今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は、「介護医療院への転換を希望するが、介護保険の保険者である市町村側が首を縦に振らないケースがあると聞く。地域医療構想の実現に向け、対策を考える必要がある」と指摘しています。

「介護療養→介護医療院」では問題が生じませんが、「医療療養→介護医療院」では、費用が医療保険から介護保険に移り、小規模な町村では、大幅に介護保険料が増加してしまうことが危惧され、転換に待ったをかけるケースがあると指摘されています。この点、2018年度介護報酬改定の総指揮を執った厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長(前、老健局老人保健課長)は「現在、担当課(介護保険計画課)で対応を準備していると聞いている」旨のコメントをしています。

   
 

 

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