病院間の情報連携が求められる中で「電子カルテの標準化」が必要―日病協



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多くの病院で電子カルテが導入され、多額の費用がかかっているにも関わらず、病院間で情報連携が円滑かつ効果的にはできない状態である。こうした状態を解決しなければならず、電子カルテの標準化に向けた検討をしていく必要がある―。

数多くの病院団体で構成される日本病院団体協議会の代表者会議でも、こうした議論が本格的に始まりました。

10月19日の日本病院団体協議会・代表者会議後に、記者会見に臨んだ山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同会高月病院院長、向かって左)
10月19日の日本病院団体協議会・代表者会議後に、記者会見に臨んだ山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長、向かって右)と長瀬輝諠副議長(日本精神科病院協会副会長、医療法人社団東京愛成会理事長・同会高月病院院長、向かって左)
 

医療機関同士で円滑かつ効果的に情報連携するために「電子カルテの標準化」が必要

 多くの病院で電子カルテを初めとする病院情報管理システムが導入され、医師が診療する過程で、検査などのオーダーを出したり、過去の検査データを閲覧・分析して最適な治療方針の決定に活用したり、さらに医事会計システムと連動して迅速な会計処理を可能とするなど、重要な役割を果たしています。

 しかし現在の電子カルテには、▼価格・維持費ともに極めて高額である(さらに個別病院に合わせたカスタマイズをする費用も莫大となる)▼ベンダーごとに仕様が区々で、データの連結が極めて難しい(コンバータシステムによっても十分な連結ができないと指摘されている)―といった大きな課題があると、かねてから指摘されています。

我が国の医療提供体制の在り方を検討する「社会保障審議会・医療部会」では、猪口雄二委員(全日本病院協会会長)や加納繁照委員(日本医療法人協会会長)、中川俊男委員(日本医師会副会長)といった医療者を代表する委員はもちろん、患者代表の立場で参画する山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)から「地域医療連携を進めるためには、情報の共有が不可欠であるが、これを電子カルテが阻んでいる。仕様の標準化などを進める必要がある」と主張。さらに永井良三部会長(自治医科大学学長)からも「電子カルテの標準仕様制定に向けて、国を挙げて取り組んでほしい」との強い要請が出されています。これに対し厚労省医政局研究開発振興課の伯野晴彦課長は、「まず有識者から意見をいただき、我が国の実態、海外の状況を含めて、情報を収集し、課題の整理を行うことから始めたい」との考えを示すに至っています(関連記事はこちらこちら)。

また日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成される四病院団体協議会では、「電子カルテの仕様標準化で、データの連結等が可能となれば、医療機関のコスト削減、医療費の適正化にもつながる」として、厚労省への具体的な要望も視野に入れて、標準化に向けた議論をスタートさせています(関連記事はこちら)。

さらに今般、四病協に加えて、国立大学附属病院長会議や全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、国立病院機構、日本慢性期医療協会なども参画する「日本病院団体協議会」でも「電子カルテの標準化」に向けた議論が始まりました。まだ議論が開始されたばかりで、「要望として表明していくのか」「表明するとして期日はいつ頃か」などは明らかになっていませんが、日病協には、我が国の病院のおよそ80%が加盟しているとされており、ベンダーにとっては「顧客の大多数が、標準化を求めている」ことから、大きな影響が出そうです。

地域医療構想の実現をはじめとした「病院・病床の機能分化、連携の強化」が求められる中では、「情報連携」が極めて重要となります。診療報酬でも、例えば今般の2018年度改定では▼入退院支援加算▼退院時共同指導料—が見直されるなど、情報連携の下支えが強化されています。今後、電子カルテの標準化が進めば、より効率的・効果的な情報連携が可能となり、これが地域医療構想の実現などを後押しする好循環が生まれる可能性があります。今後の日病協論議にも注目する必要があります。

救急医療管理加算、加算1は「明確化」、加算2は「現状維持」を要望する方向か

なお、日病協・代表者会議の下に設けられた「診療報酬実務者会議」(主に、診療報酬改定に向けた要望策定に向けた具体的な検討を行う組織)では、2020年度の次期診療報酬改定に向けて【救急医療管理加算】に関する議論を行っています。

【救急医療管理加算】は、「救急搬送された重篤な患者には入院当初に集中的かつ濃密な医療提供が必要となる」ことを踏まえ、入院から7日を限度として次のように経済的な評価を行うものです。

▽加算1(1日につき900点)
対象患者:▼吐血、喀血または重篤な脱水で全身状態不良の状態▼意識障害または昏睡▼呼吸不全または心不全で重篤な状態▼急性薬物中毒▼ショック▼重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)▼広範囲熱傷▼外傷、破傷風等で重篤な状態▼緊急手術、緊急カテーテル治療・検査またはt-PA療法を必要とする状態—で、医師が「緊急入院が必要」と認めた重症患者

▽加算2(1日につき300点)
対象患者:加算1に準ずる重篤な状態で、医師が「緊急入院が必要」と認めた重症患者

 このうち加算1については、患者の状態や疾患が明示されていますが、2018年度改定を議論した診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(中央社会保険医療協議会の下部組織)では「重篤でない患者でも算定しているケースがある」とのデータが示されました(関連記事はこちら)。日病協の診療報酬実務者会議でも「状態・疾患で算定にバラつきがあり、算定可能な状態等の明確化が必要」との方向で議論が進んでいると、山本修一議長が紹介しています。

一方、加算2は、「『準ずる重篤な状態』との表現が曖昧で、軽症患者にも救急医療管理加算を算定している」との批判を受けて2014年度改定で分離・新設されたものです(【救急医療管理加算】を2014年度改定で加算1と加算2に分離)。さらに2016年度改定で点数の見直し(2014年度改定まで加算1は800点、加算2は400点 → 2016年度改定から加算1は900点、加算2は300点)が行われました。今後、中医協などで算定基準のさらなる明確化などが検討されるとも思われますが、日病協の診療報酬実務者会議では「加算2は2次救急を担う医療機関の重要な収益要素であり、厳格化はすべきでない」という方向で議論が進んでいることが山本議長から紹介されました。

今後、さらに具体的に見直し要望を詰め、代表者会議での議論に供されることになります(その後、正式に「日病協要望」として取りまとめられた後に、厚生労働省に提示される)。
 
 
 

 

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